パリのマダムの・・・ volume73

『タイタニックとタイタン』

7月18日~9月10日まで、パリのPorte de Versaillesにあるエキスポ会場で、10年ぶりにXXL展覧会というタイタニックに関するイベントが開催されている。
ご参考:https://www.titanicexpo.fr/

「人の噂も75日」というけれど、ニュース報道ほど目まぐるしく変わっていくものもなく、既に多くの人にとってタイタニックについての様々な報道は、遠い記憶になっているのではないかと思われる中、再考察して書き残しておこうと思っている。

映画『タイタニック』の25周年に合わせて発売された『3Dリマスター版』のプロモーションの為、大手広告代理店の旗振りがあり、日本では昨年末からタイタニックの話題をよく耳にするようになっていた。
2月には2週間限定ではあるが、『タイタニック 3Dリマスター版』は全国公開もされた。一大興行というわけだ。

そんな中、6月に、遭難船タイタニック号を見学するツアーの潜水艇タイタンが事故を起こした。カナダ、アメリカ、フランス合同で捜索が行われたが、乗っていた乗員乗客全5名の生存は絶望的と報道された。
民放各局は、この潜水艇ツアーと25周年に合わせて、大々的な『タイタニックプロモーション』を打っていたので、事故の後も、同じテンションでプロモーションを進めてよいのかという議論と共に、マッチポンプさながら、とにもかくにも大騒ぎをしていた印象がある。

ちなみに、タイタニックとタイタン、形容詞か名詞かの違いで、語源は同じ。
潜水艇に名前を付けた御仁も、それは相当の話題性をと考えての命名であっただろうが、“それが仇となり”とでもいうべきか、逆に様々な陰謀論を跋扈させる結果となった。

仏語では『タイタニック』は『ティタニック』と発音する。ギリシャ神話に登場する、地母神ガイアの子、または、地球最初の子に因む。非常に強くて丈夫な「大物、巨匠」の意から、巨大企業や大国を意味する時もある。
(日本語で言うところの戦艦の意…に近いかしら)

タイタニック号の事故の概要は既に語り尽くされてはいるが…一応。
タイタニック号は、1912年4月14日の深夜、Côte française de Terre-Neuveコート・フランセーズ・ド・テール・ヌーヴ(Terre-Neuveテール・ヌーブは新しい土地の意)に近づいた時に、氷山にぶつかった。ニューヨークに向けての処女航海中、4日目の出来事だった。
タイタニック号は高度な安全対策が施され、浸水しても沈まない構造になっていた(と言われていた)が、結果は、2224人中1500人以上が亡くなるという、1912年当時最大の海難事故となった。

2018年、当時、ロンドン在住だった娘と二人でリバプールに遊びに行った。
リバプールと言えば、ビートルズとタイタニック。

タイタニック号は、アイルランドのベルファストで造船されたが、1845年、イギリスの海商都市リバプールで創業した海運企業であるWSLホワイトスターライン所属だった為、今もリバプールにタイタニック関連の観光施設等が存在している。港付近に建つ慰霊碑も見たし、タイタニックの展示ブースがある海洋博物館にも行ってみた。

海洋博物館での展示は、海運業の歴史、奴隷貿易、関税のパートに分かれ、イギリス帝国の戦略的な軌跡を垣間見ることができる。
イギリスは「三角貿易」の利益のお陰で、産業革命を推進した。リバプールは、その大英帝国の絶頂期を支えた港町だった。

タイタニック号の事故が起きると、姉妹船オリンピック号とのすり替えを実しやかに語る人まで現れ、今でいうところの都市伝説の様なモノが大いに広まったという。
何度も事故を起こし保険がかけられないオリンピック号に代わって、タイタニック号で保険金詐欺を図ったのではないか、という話だが、あくまで推論、都市伝説の域は出ないまま、今日まで伝わってきている。
それでもかなり興味を引く話であり、調べれば調べるほど、深みにハマる内容であることは確かだ。

何でも事が大きければ大きいほど、出来事の裏に潜む本質は一つではない、絡みあって、とても一般の人には解けるわけのないパズルの様なイキサツであることは容易に想像ができる。

もっともらしい話の一つとして、アメリカに中央銀行となるFED連邦準備銀行制度(FRBは連邦準備理事会)設立のための謀略があった、という説がある。
1910年11月、ジョージア州の南西部、ジキル島で、ロックフェラー財閥やモルガン家など6家が集まる秘密会議が開かれていた(らしい)。
実務を取り仕切ったのは、JPモルガンとポール・ウォーバーグ。ウォーバーグはヴェニスのユダヤ人銀行家デル・バンコファミリー。
この法案を通すため、セオドア・ルーズベルトを担ぎ出して共和党の票を割らせ、FED設立に賛同することを条件にウッドロー・ウィルソンを大統領にしたという話なのだが、写真の富豪3人、『ホテル王アスター家、ジョン・ジェイコブ・アスター夫妻』『デパート王シュトラウス家、イシドール・シュトラウス夫妻』『鉱山王グッゲンハイム家、ベンジャミン・グッゲンハイム夫妻』がソレに反対していた。

余談だが潜水艦タイタンを運用するオーシャンゲート・エクスペディションの設立者であり共同経営者のストックトン・ラッシュさんの妻ウェンディさんは、メイシーデパートのシュトラウス家の玄孫だという。
同じ家の人間が、海に沈むタイタニック号とそれを探しに出かけた潜水艇タイタンと、続けて関わり命を落とすなんて、何かあるとしか思えない・・・(のは私だけ?)

この世のことは全てが点を線でつないだモノ。
タイタニック号の事故に始まり、潜水艇タイタンの事故に終わる、という経緯から、中央銀行制度の終焉か、と分析する人々もいる。
確かに、銀行の縮小化現象は世界中で起きているが、それとタイタニック号の事件が、まして況や潜水艇タイタンの事故がどうつながるのか、論理的な話ができる人はそういまい。
世界中の中央銀行制度の終焉ということもありえる…とも思えるが、結局、ドル崩壊の話すらも“ オオカミ少年 ”さながら、何度も何度も語られ、話し継がれた上に無かったことに…。
もう、何がホントか嘘なのかも、全ての点を知っている人も、それを繋いだ直線の全工程を理解している人も存在しないのかもしれない。

何やら事件が起きて、報道が繰り返されると、人々の記憶に刷り込みが起こるのは間違いない。
それが、何を目的としているのか、というのは別次元で謀略されるのだと思うが、タイタニック、タイタンの場合は、ネーミングも併せて、巨大な何かの印象を増幅させている気がしてならない。

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