パリのマダムの・・・ volume58

『ブルーの影に男と女』

フランス大統領選挙は、現職のマクロン大統領(以下敬称略)が再選を果たした。
写真は、5月7日にエリゼ宮で行われた大統領叙任式の模様。
エレガントな白いスーツ姿の女性がマクロン大統領夫人のブリジットさん。
祝典が行われた広間の壁も、ブリジットさんの意向で、これまでの赤から白に模様替えされていた。

この特別な日の招待客の中には、滅多に目にすることのないご家族の姿も見られた。大統領とkissをする女性がブリジットさんの娘。その左側が彼女の夫で、両脇に立つ子供3人は、ブリジッドさんの孫にあたる。

その後ろに立つ白いワンピースの婦人が、マクロンの母親。

右の写真がマクロンの父親。
マクロンの両親は共に医者で、父親は神経科の教授も兼職。マクロンの弟妹も医者、という家系だ。

マクロンの両親にとって、この結婚、最初は大反対だった(この記事https://madamefigaro.jp/culture/220413-emmanuel-and-brigitte-macron.html にある通りなら)だろうが、結果オーライ?!
今では、姑と嫁、母や妻という立場を超えた女の無償の愛で理解し合っている様だ。

それにしても、フランスの大統領というのは、女性問題で色々話題を提供してくれる。
ミッテランもシラクも隠し子がいた。サルコジは、大統領就任後にセシリアと離婚、元モデルでシンガソングライターのカーラ・ブルーニと再婚。彼女はファビウス元首相や不動産王トランプ、ミック・ジャガーやエリック・クラプトン等著名人と浮名を流した過去がある。

次のオランドは、大統領選に立候補したこともあるセゴレン・ロワイヤルと事実婚関係を解消し、当選時、政治ジャーナリストだったヴァレリー・トリエヴァイレールと生活を共にしていた。
オランド選出の檀上で、元妻の面前でキスをせがんだ姿が印象的だった彼女。結局、オランドと女優のジュリー・ガイエとの密会が発覚して別れた。
今回の就任式では、F2局のコメンテーターに呼ばれていたが、エリゼ宮での特別な過去を楽しそうに談話していた。

さて、大統領の伴侶が見目麗しい女性であることを歓迎するのは、マッチョな世界というより、社会全体がフランスを代表する女性として誇りに思うところであるかもしれない。ただし、政財界の陰では、“女はそこまで出しゃばるな”という風潮があるのも事実(笑)
だから、大統領夫人であっても、鼻につく感じだと嫌われて、ゴシップネタになる。

仏政界のフィクサー的立場にある知人から、オフレコで聞いた話では(って暴露しているが)最終的にルペン女史が勝てないのは、そういう理由もあるという。
しかもエリック・ゼムールという過激な右派がルペン派閥を揺すぶったが、背後の謀略を感じないでもない。

フランスで男性普通選挙が実施されたのは、革命後の1792年と世界で最も早かったが、女性が参政権を得たのは、何と日本と同じ戦後1945年のことだ。
ジャンヌ・ダルクよりもナポレオン?!
なんだかんだ言って男が上位、女は補佐役という印象がぬぐえない。
「これ見よがし」とまでは言わないが(ホントは言いたい苦笑)、男性優位世界の防衛省や軍事省の大臣に女を立てる。しかしながら大統領の座は譲れないが男の本音だろう。

フランスの大統領選挙は二段階の選出制度になっていて、立候補に際しては、市町村長500名の推薦状が要る。第一回戦で50%以上の得票数が得られなければ、上位二名で第二回戦が行われる。第一回戦で5%の得票が得られなければ、選挙資金は”自費”となる。
その為、立候補者は資産申告をしなければならない。

今回、最大野党の共和党は、党として初の女性候補、ペクレス女史を公認したが、結果は得票5%以下で惨敗。穴埋めに寄付を募る有様となった。不支持に回ったサルコジ(マクロン応援)の金銭的応援を断ったのだが、エリートの彼女は、資産告示で、候補12人中トップ(970万ユーロ)だったことを見て納得。女で、まして金持ちとなれば、応援したくない人が多くなるのかも…ということだろう。

興味深いのは、この政党の歴史的経緯。底辺はド・ゴール路線だが、シラクvsジスカールデスタン、シラクvsジャン-マリー・ルペン(マリー・ルペンの父親)、サルコジvsオランド、それぞれの時代に政党の内紛もあり党名が変化。その黒幕(と言われる人々)は、アルジェリア戦争以来の人脈利権が、複雑に絡んで今に及んでいる。

一方フランスの政界に特徴的なのは、色恋は許せるが、エスタブリッシュな富裕層を嫌う左派的傾向があること。
さらに、西欧社会全体の傾向として感じるのは、有色人種の移民が多すぎるのも困る。
そこで極右と極左の台頭が大きくなっている、というわけ。
ご参考:https://graphics.reuters.com/FRANCE-ELECTION/POLLS/zjvqkomzlvx/ja/

さて、マクロン大統領、国民には一切知らせず(色調など微細な変更は大統領権限で出来る)国旗のブルーの色を変えていた。Elysee Confidentielという2021年9月15日の出版本で明らかにされたもので、舞台演出家アルノー・ジョランのアドバイスや“海軍”士官らの提案によって、ヴァレリー・ジスカールデスタン(1974年~1981年の仏大統領)が、EU旗に近づけライトブルーにしたものを、元の“ネイビー”ブルーに変更したという。

右写真は、大統領車を降りた大統領夫妻が、子供たちに囲まれながらChamp de Marsの祝典会場に徒歩で向かう場面。ブリジットさんの衣装は、例によってLVなのだが、2017年とデザインは違うものの、“Navy”ブルーでミリタリー風だった。
これも何か意図ありや否や?!

この場面では、しっかりEU支持もアピールというわけか『欧州の歌』をBGMに使った。
原曲はベートーベン『喜びの歌』だが、この曲がヨーロッパのシンボルになったのは汎ヨーロッパの元祖、リヒャルト・クーデンホーフ=カレルギーの提案。
知っている人も多いと思うが、父親は、オーストリア=ハンガリー帝国駐日特命全権大使だった方で、母親は、香水『ミツコ』のモデルとも言われる青山みつ(光子)。

東京生まれの彼は、青山栄次郎という日本名を持つ。
ナチスドイツのヒットラーとは同時代の政治家となり、フリーメーソンで、妻はユダヤ系。世界を5ブロックに構想する世界連邦運動を提唱。

映画『カサブランカ』は彼がモデルとされる。
カサブランカはスペイン語だが、英訳するとホワイトハウス!? 花なら白ユリでフランスが想起される。カサブランカは、当時、リスボンから米国へ亡命する経由地だったが、ここで連合国の談合が行われている。
ご参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/カサブランカ会談

ド・ゴールの指揮した(対ナチスの)抵抗組織“自由フランス軍”は、チャーチルの意向もあり、臨時政府が当初ロンドンに造られ、後にアルジェリアで活動した。そのロレーヌ十字は、ジャンヌ・ダルクの抵抗を想起し、愛国心の象徴となっているが、映画にあるようにメーソンとの関連もある。

さて、叙任式の翌日5月8日はフランスで戦勝記念式典が行われた。同じ戦勝記念日がロシアでは5月9日だが、EUはこの日をヨーロッパの日としている。英国では英霊記念日に”赤い”ポピーをつけるが、フランスでは戦没者追悼に“青い”矢車菊をつける。昨今、富にイメージプッシュを感じる。

これを書いていて、子供の頃見ていた「兼高かおる世界の旅」を思い出した。美しい日本語を話すエキゾチック美人の彼女、父親がインド人だったのは当時知らなかったが、“青い”シンボルマークのパンナム航空が提供で、世界を羽ばたく夢を見せてくれた番組だったのはシッカリ覚えている。案外、世界連邦/汎アメリカ思想(Pan American)とも関連があったのかもしれない。

ん? 待てよ。Tokyo J.O.の閉会式でも、“ブルー”が強調されていたような……

例によって、憶測と妄想による下衆の勘ぐりであらぬことを言い出しそうになるが、世界の権力闘争は、男の見栄と野心で政治経済を動かすゲームのようであるのは自明。
何より世界中の政治家が益々パペットになったと情けなく思う。
特にアメリカがわかりやすい。ブシュJr、オバマ…バイデンに至ってはもはや目も当てられない、がしかし、長年に亘って放置が許されるのは、余程、裏工作による利益が莫大だからに違いない。

しかしまあ、世の中、金と女で全てが決まる?!
動かす男が尊敬できないとどうしようもないけど、結局、女も可愛げがあって、賢くならなければ、世直しは夢のまた夢というところだろうか。

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