パリのマダムの・・・ volume70

『Emily in Paris にみるパリの あるあるな話』


Netflix『エミリー、パリへ行く』を親友のオススメで知った。
最初は何も考えずに仏語版を観たが
後を引く面白さがあって
オリジナル(?)英語版も観て倍々に楽しんだ。

フランス好きの親友にとっては
キュンキュンしてしまう映像満載だと大騒ぎだったが
実際、パリで暮らしている身としては
こんなパリならどんなに良いか…
と思う事しきり(苦笑)

そこかしこに大袈裟な演出はあるものの
アメリカ人の多くがそう感じているフランスがコレなのだろうな
と思える表現が画面には溢れていた。

現実離れした『あり得ないパリ』もたくさん出てくるし
パリに住む外国人にとって『そうそう、パリってこうだよね』も皮肉満載で表現されていて
大笑いしてしまう場面も多々。

内容詳細は避けようと努力はするけれど、以下、多少のネタバレありかも…。

映像で映し出されるストーリーは
いわゆる“中村江里子さんが語るところのパリ”っぽいと私は感じてて
美しく、憧れを抱かせるパリ社会の一面だけが描かれている。

大きなお世話と言われそうだが
「これを現実のパリと思わない方がイイよ」
という一言を付け加えたくなる。

登場人物たちのファッショナブルで派手な装いに目を惹かれるが
ファションウィークに街にあふれる業界関係者の雰囲気を除いて
パリの一般の人々の普段着は全般的に地味。
パリの人が、いつもみんなきらびやかにファッショナブルだというのは
ジャマイカ人はみんな走るのが早い
っていうのと同じくらいの違和感がある。

通勤のシーンが度々登場するのだが地下鉄やバスに乗る場面は出て来ない。
エレベーターもエスカレーターも充実していないパリの地下鉄は
とにかく階段で歩かされる。
お世辞にも見栄えがするという場所ではなく
清潔感にも疑問符が…。
だからだろうか
そこはあえて触れない?!
に徹している様にさえ見えた。

登場人物がピンヒールを履いてパリの街中を歩き周るのだが
実際には、あの石畳をピンヒールで闊歩は無理! 
石の隙間や排水溝の穴にヒールがハマってズルむけるという
ショック巨大な状況が毎日、起こるのは間違いなし。

それでも、ニューヨークのオフィスワーカーのように
スニーカーを履いて通勤し
オフィスでヒールに履き替えるような習慣はほとんどなく
フランス人は起きて寝るまで靴を履いたまま…が、ほぼ普通。

それ故、建物の出入り口付近や各家庭のドア前に
Paillassonパイヤッソンという
靴底にへばりついた濡れ落葉や
不幸にも踏んでしまった犬のフンなどを
”擦って”拭き取るマットが置かれている。

そのマットにはこんなコメントが書かれたものも

Emilyのアパルトマン
確かに眺めは良いが
クーラーもないパリの建物の最上階
夏は猛暑に苦しむことになるのでは?
といらぬ心配をしてしまった。

屋根裏部屋は
chambre de bonnesシャンブルドゥボンヌ
といって昔は女中部屋だったことからしても暮らしやすい訳がない…。

さらに、Emilyのアパルトマンがある建物にはエレベーターがついていない。
パリのアパルトマンはエレベーターがあっても
後付けで狭い場所に設置していることが多いので2人しか乗れない
みたいなこともある。
4人乗れたらマシな方。
とにかく不便なのだ。

フランスでは、ヨーロッパの多くの国同様
1階はRez de chausseレッドショッセと言って地上階(英語で言うところのGround floor)
2階は最初の階だからPremier étageプルミエエタージュ1階と言う。
アメリカ(日本も同じく)は1階=1階、2階は2階なので
Emilyは、この文化の違いで…
これ以上はネタバレ必至なので割愛するが
因みに我が家は3階、日本で言うところの4階の位置になる。

さて、シーズン1でぜひとも話題にせねばと思ったのが、配管工事屋さんのエピソード。
フランス語でPlombierプロンビエという。
パリでは、最も重宝される職人の一つだ。

パリでは配管絡みのトラブルが頻発するから、勢い重宝される仕事になるのだが
日本でのスタンダードを当てはめたら
それってどうなの?
と、ちょっと考えられない様な事が日々、アチコチで起きているのだ。

エミリーも早々にパリの洗礼
“シャワートラブル”
に巻き込まれる…。

この内容をストーリーに入れたのは、フランスで暮らした外国人の監修があったことがうかがわれる(実際にパリで暮らした経験のあるスタッフの実体験を基にしているとのこと)。

シャワーが出ない、修理を頼むもパーツが合わず工事が延滞する。
数日か数週間か後にならないと部品が手に入らない…と普通に告げられる。

『数日か数週間って…そんな言い方、日本でしたら、二度とその配管工さんはお仕事、無くなるわよねぇ』
『修理に来てるのに、合う部品を持って来てないって…そんな工事業者、あり得ない』
との日本人ファンコメントを多く見たが
修理に来ているのに、部品を持って来ていない、しかもソレを普通に告げる…パリではよく起こる話でトラブルでもないくらい。

そしてストーリーの中では、この配管工絡みのエピソードはかなり優しく描かれていると感じた。

我が家も嫌というほど、この手のトラブルに見舞われてきた。
もちろん、水漏れを起こした側にもなったが
起こされた側での最大の悲劇は
フツーに生活している時に、上の階の水漏れのせいでお風呂場の天井が落ちてきたのだ…

そんな事ってある?!

二重天井にしたのが運の尽きだったようで、そこに少しずつ上の階から漏れた水が溜まっていたのに気づかなかった。
少し前から天井に亀裂が入っているようにも見えたが、天井や壁にヒビが入るのもパリのアパルトマンでは普通に起きることなので
乾燥によるペンキの割れ目?
くらいに思っていた。

娘がお風呂から出て、次に入ろうと下着姿でトイレに居た私。
すると、バーンと物凄い音が…
バスタブに天井が落ちた音だった。
もし、お風呂に入っている時だったら…
とゾッとした。

すぐに着替えて、上の階へ…。

後日、修理には保険がおりたのだが
フランスではこの種のトラブルで保険を利用する場合
壁か床かなど場所によって、管理組合の保険か各住民の保険かが分かれているので
なんだかんだと手間がかかる。

前にも書いたが、パリのアパルトマンは、これまで大掛かりな工事を2回行った。
1回目の工事はかなり大がかりなモノ…だったにも関わらず
不手際が重なりかなりシンドイ思いをした。
配管が通っている箇所に釘打ちをしてしまい下の階の家に水漏れトラブルを起こしたり
コンセント取り付けの時に、斜め下の階の家の暖炉の煙突に穴を開けてしまったり。

いくら業者のミスとは言え、私たち自身がだいぶ肩身の狭い思いをした。
その上、業者の保険会社がいちゃもんつけてきて、係争に発展
この工事は2010年~2012年に行ったのに、未だ弁護士の手中にある。

でも、係争に進展があったことで、2019年に2回目の大改装を決行した。
そしてまたトラブルは起きてしまった。
今度は、担当弁護士の紹介で建築士に依頼したのに。

マスタールームにウォシュレット付きトイレをつける予定だったのに、業者が上水道をひくのを忘れたせいで、計画はお流れ。
張り替えた寝室の床のフローリングに傷をつけられたり、それを直そうとしたのだろうが、結果、床に段差がついてしまったり…
備え付けの本棚やクローゼットも組み立ての段階でサイズミスがあって……
結局、すべて泣き寝入り。

ここまで読むと、普通の日本人だと
エッ?! ソレって…発注側にも問題があるのでは? 
となると思うので、念の為、書かせていただくが
決して我が家が無体に値切ったせいでも、交渉下手な訳でも、発注がきちんとできていない訳でもないので…。
このくらいのトラブルはパリでは良く起きる話なのです。

そしてパリ生活でのシャワートラブルに終わりは無い…を実感する出来事がカンヌに引っ越してしばらくして起こった。
パリの階下の隣人から水漏れがある、との連絡が入ったのだ。

結果、我が家の改装工事が原因ではなかったが、3階と2階の間の排水管から水漏れしていることがわかった。
結局、2階から4階まで、全部の水道管を取り替えることになり

改装したばかり、綺麗にタイルをはったバスルームの壁の一部と床の一部のタイルを剥がして工事をしなければならなくなった。

それでも、全ての水道管を新しくしたのだから、良かったと思うことにした矢先
夫がパリでシャワーを浴びようとしたら…
熱湯しか出ない…という。

これぞパリ、正にパリ…
でも、これはほんの一部…

パリでの生活って、裏まで見せたら結構大変なのよぉ~。

一覧へ戻る