パリのマダムの・・・

『Fruit de la Passion パッション・フルーツ』

前回のエッセイで、Passionには受難の意味がある、と書いたが、むしろそっちが元祖。
これには面白い背景があるので、続きを書くことにした。

キリスト教という宗教に馴染みがなければ、まして言語体系も違えば、「受難」も「情熱」も理解が難しい言葉ではないかと思う。夫もよく、パッションという言葉を使うが、頭では理解できても、感覚的に何か、”熱いモノ”が違う、と感じることがよくある。

まず、堅い話からで恐縮だが、
ヨーロッパの言語の発達は、ギリシャ語とラテン語が元になっている。これらが共通語としての国際語になったのは、勿論キリスト教という宗教が母体になって、文字を習い文献を読むことだったから。その派生語は、ギリシャ語→ラテン語→後期ラテン語→フランス語→ドイツ語/英語と変遷して、各国語に借用・導入された。

フランス語のpassionは、後期ラテン語のpassioから来ているが、それ自体ギリシャ語のpathosをルーツにしている。従って、logos理性の反対として、感情の心的現象を現す。理性や意志が”能動”であるのに対し、感覚や感情は”受動”だが、情熱や受難の域になると感情の高まりが身体に現れ、激しくなると苦悩にさらされるようなダイナミックさが出る。

“passion play”と聞けばあらぬ事を想像するかもだが、何のことはない、受難劇のこと。
ネット検索すると真っ先にアメリカの犯罪映画が出て来てしまうのはグーグルだから?!
ご参考:https://en.wikipedia.org/wiki/Passion_Play

ヨーロッパではキリスト教の影響で受難曲というものがかなり作られてきた。新約聖書のマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの4つの福音書に基づくイエス・キリストの受難を描いた音楽作品で、聖週間における典礼と密接に結びついた長い伝統がある。
ご参考:https://ontomo-mag.com/article/playlist/ohayo-bach41-20210328/

Passionという映画(原題The Passion of the Christ)もあった。イエスが磔刑されるまでの12時間を聖書に則ってリアルに描いた。映画を観て卒倒した司祭もいたとか。メル・ギブソン監督は反ユダヤ主義、人権団体のADLが反応し、賛否両論の問題作となった。
ご参考:https://note.com/naodazo222/n/n7c3311173a3c

さて中世、イタリアのアッシジに「もう一人のキリスト」と言われるくらい信仰に篤い、フランチェスコという聖人がいた。彼の説教を聴きに小鳥が集まってきた、という逸話もある。そのフランチェスコが、ある時『キリスト教が磔になった十字架の上に咲く花』を
夢に見た、という話が、キリスト教を通じて世間一般にもに知れ渡っていた。

16世紀、コロンブスのアメリカ大陸発見から、キリスト教の宣教師たちが南米に布教に出かけた。そんな中、スペインのイエズス会の宣教師らが、その”伝説の花”に出会った。
ラテン語でflos passionisと呼んで、布教に利用されることになったのだが、ご覧のように、何これ、という印象を持つと思う。

果実は知っていても、花をじっくり見たことがある人はなかなかいないかもしれない。6〜10月頃に咲く花で、実際には、この植物は世界中に600種類以上も存在するという。果物を実らせるものが数十種類あり、それをパッションフルーツと呼んでいる。

花の子房柱が十字架、3つに分裂した雄しべが、イエスを十字架に打ち付けた釘、モニョモニョした副冠はイエスのはめられたトゲのある茨の冠、5枚の花弁と萼片を合わせて10人の使徒というわけで、Passion受難の意味を生んだのである。

なぜ十二使徒ではないのか、と思うが、どうやら、ユダとペテロ(またはトマス)を除くらしい。ユダは裏切り者ということで理解できるが、イエスから「天の国の鍵」を与えられたことになっているペテロはなぜ? というと、イエスの受難の時に逃走し、イエスを否認した人だから、とか。(トマスは、イエスの復活を信じなかったから?)
ご参考:http://www.vivonet.co.jp/rekisi/b04_christ/apostles.html

一方、日本には、江戸時代初期に渡来したそうだが、キリスト教文化がないので、これを時計草トケイソウと呼んだ。和名の由来は、雌しべが時計の針、長針、短針、秒針に見えることからそう命名されたのだった。
ご参考:https://www.pref.kyoto.jp/plant/documents/meiyoenchou202003.pdf

夫はしばらく前から、パイナップル入りのヨーグルトがお気に入り。
ところが最近、同メーカーのヨーグルトに、パイナップル単独がなくなり、パッション・フルーツも加味されるようになっていた。

一方、私がハマっているのは、別メーカーのパッションフルーツのヨーグルト。マンゴー入りで、夫のものより高級?! 2個セットで1ユーロ高い(苦笑)
酸味もある味と食感がお気に入り。

ところで、パッションフルーツは、そのまま仏語でFruit de la Passionだが、Grenadilleとも言うと知って、へえーとなったのは、その言葉が小さなザクロ(ザクロはGrenade)という意味だからである。

さて、パッションフルーツには、独特の栄養特性や効能、健康効果がある。
– ビタミンA、B、Cと、ビタミンが豊富。ビタミンB2は糖や脂質の代謝を促し、血糖値 の上昇を抑える。ビタミンCは鉄分の吸収をよくするので、貧血の予防にもなる。

– βカロテンの含有量は果物類ではトップにランクされ、体内でビタミンAに変換され、活性酸素を抑え、動脈硬化や心筋梗塞などから守り、皮膚や粘膜の細胞を正常に保つ働き、美肌効果や免疫力も高める効果が期待できる。

– クエン酸は、疲労物質である乳酸を分解し、体外に排出する効能がある。血液サラサラ効果もあり、疲労回復に役立つ。活性酸素を除去する効能もある。

– カリウムは体内の余分な塩分を排出する効能があり、むくみ予防に効果的。塩分濃度が下がるので、高血圧の予防にもなる。

– ナイアシンは、脂質や糖分をエネルギーに変える働きがある。また、二日酔いの原因であるアセトアルデヒドを分解する効能もある。

– ハルミンは抗菌作用もあり、歯周病対策の効能があるらしい。

ところで私、以前に比べて、なぜか果物をそれほど欲しなくなっている。そんな中、このパッション・フルーツやザクロは食べたいと思うのを不思議に思っていたのだが、

パッションフルーツの種には、ポリフェノールのピセアタンノールが含まれている。
コラーゲンの生成促進、メラニンの生成抑制、血流の改善、エストロゲンの活性化によって、肌や髪を綺麗に保つ美容成分である。
ご参考:https://www.morinaga.co.jp/passienol/

ザクロには、カリウム、アントシアニン、エラグ酸、タンニンなどの抗酸化作用が豊富に含まれている。むくみの解消、動脈硬化の予防改善、抗酸化・抗炎症作用、また血流が良くなって記憶力の向上にも効果があるという。

何と私には全て必要な要素の数々……なのに娘は「美味しくなくはないけど、タネが邪魔」とほざく。(スペイン在来種のMollarとか、種無しのようなザクロも無いではない)

ちょっと痛い気持ちもあるが、身体が欲求のシグナルを出すということは、ある意味、健全な証拠とポジティヴに受け止めよう……これを負け惜しみという?!

なんだか、エイジングも”受難”に思えてきた。

ならば、めざせ”復活”!

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