パリのマダムの・・・ volume26

『薬か毒か』

唐突だが、生きている間に、一度も、drug薬物の世話にならない人がいるだろうか。

ヘロインやコカインに限らず、嗜好品のアルコール、チョコレート、コーヒー等、身体や精神に明らかな変化をもたらすものは全てdrugであり、食物、毒物、薬物に区別なし。

しかも、法律で許されたdrugが、法律で禁止されたdrugより安全だとは限らない。
タバコは大麻より毒性が強いし、紙巻きタバコの喫煙が制限されている中、”オシャレな”加熱式タバコが、どんどん普及しているが、ニコチン毒性や依存性は非常に高い。

処方箋のあるなしにかかわらず、出回っている医薬品が全て安全だとも限らない。そして残念ながら、医者や薬剤師であっても、薬物全ての知識に通じているとは限らない。

TVを見ていたら、アメリカの医療・製薬業界の問題点を浮き彫りにしたドキュメンタリーで、副作用による死亡事故、常習性について取り上げていた。その中で、オピオイドの過剰摂取による死亡事故は、交通事故を遥かに上回るという話だった。

オピオイドは、ケシの実から生成される麻薬性の鎮痛剤や同様の作用を示す”合成”鎮痛剤の総称である。ケシの実から採取したアヘンから生成される”モルヒネ”は知っている人もいると思うが、モルヒネを原料とするヘロインは、非合法の麻薬とされている。
ご参考:https://wired.jp/2016/04/23/americans-addicted-prescription-opiates/

折しも夫が、この”オピオイドを体験”した。買い物の帰りに、路上の段差に足を引っ掛け転んでしまい、肋骨を強く打った。若い頃、極真空手を習って肋骨を一度骨折している。大したことないと高をくくって1週間後、耐えられない痛みが出て、往診を依頼した。

処方箋をもらって、レントゲンを撮ったが、幸い異常なし。処方箋に記載された通りの鎮痛剤と抗炎症剤を薬局で購入して服用。その晩は熟睡できたものの、翌朝、ボーッとしてめまい、吐き気、嘔吐……Tramadolという鎮痛剤の副作用だった。
ご参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/トラマドール

それなのにアメリカでは、これが、製薬会社の販売促進と医療機関による過剰な処方で、病理的に深刻な社会現象となっている、というのだから驚きだ。

アメリカ人と麻薬との関わりには歴史がある。
南北戦争ではモルヒネ、第一次大戦ではコカイン、第二次大戦ではアンフェタミン、ベト
ナム戦争では俗名“スピード”と呼ばれたデキストロアンフェタミン、マリファナ、LSD。さらにイラク、アフガニスタンなどの戦場ではOxiContineに代表される”オピオイド”が 兵士たちに処方されてきた、という。

時節柄、製薬会社の動向が気になったので調べたら、2019年医薬品世界市場の売上は、1兆2504億ドル(日本円で約138兆円)。以下は2020年の製薬会社の世界ランキング。
ご参考:https://answers.ten-navi.com/pharmanews/18365/

トップのロッシュ社は80年代にバイオ医薬の開発に乗り出し、有力な抗体医薬がずらりと並ぶが、抗がん剤のトップメーカーとなっている。世界の医薬品販売額トップ10のうち7つまでが、「抗体医薬」をはじめとするバイオ医薬が占める。

バイオ医療は、大きな設備投資を必要とするため、薬価が極めて高くなる。培養細胞によって生産し精製を行わねばならないため、旧来の合成医療に比べて製造コストが高くな
り、遺伝子技術に特許が取得され、そのロイヤリティも製造原価に上乗せされる。

医薬品の特許は、最長25年。その期間が過ぎると、ジェネリックメーカーが同じ成分の薬を販売できる。特許が切れると収益が一挙に落ち込むので、次々に新薬を開発しなければならない。こうした事情の中で、大手製薬会社がジェネリック薬品メーカーを傘下におさめるということも起きる。

増大する新薬の開発費を賄うため、製薬企業各社は互いに合併を繰り返してきた。中でも、大型製品を持つ企業買収で利益を上げたのが、2位にランクされる米ファイザー社、20年間で規模を16倍に拡大したという。

総合13位の米ギリアド・サイエンスは、研究開発費のランクでは4位に浮上、売上高に対する研究開発費の比率は40,6%、前年度比は何と80,5%増となっている。
ギリアド社と聞いてもピンとこないかもしれないが、抗インフルエンザ薬タミフルを開発
した会社。タミフルは、日本では中外製薬が販売したが、親会社はロッシュ社で、日本市場のシェアは何と90%、世界の処方全処方件数の約75%を占める、という。

Covid-19の抗ウィルス剤やワクチンの開発に関して、聞き慣れない多くのバイオ企業の名前が挙がったが、その裏には、ジャックポットを狙う投資会社も絡んでいる。
売れなければマイナスも大きい。投資とはそういうことだが、どうすれば市場を広げられるかという点で、綺麗事では済まされない謀略が起こされたとしても不思議はない。

パンデミックが起きると、抗ウィルス薬やワクチンの争奪戦が起き、各国政府は、実用化
できるかわからない段階で製薬会社と供給契約を結ぶ国も多い。認可に例外措置が下さ
れ、健康被害が起きた場合の「免責権」もつくという、特例の法整備もなされる。

独BionNTechと共同開発した米ファイザーのワクチンの予防効果は90%、米モデルナ社のワクチンは94,5%の有効性だという。(Mode”rna”の社名に注目)いずれもmRNAを利用してタンパク質を合成する方法で、他の疾患にも応用され有望視されている。

これらの業界は、ロビー活動も盛んで、政府の補助金が多額に支払われる。因みにモデルナ社は、米政府から1000億円の補助を受け、Covid-19のワクチンを10億回分(世界シェア3割)を作ろうとしているらしい。これにマスコミが動員される事は言うまでもない。
ご参考:https://www.excite.co.jp/news/article/NewsWeekJapan_E239304/

考えてみると、医療・製薬産業と軍需産業には類似点を思わなくもない。いずれの業界も利益率の非常に高い商品を扱う。テクノロジーを駆使た研究開発費は莫大だが、商品は、危機管理上、”有事”に備えて、各国の必須な備蓄品となる巨大市場を持つ。

どうにも気になって仕方がない特殊用語がある。”Blockbusterブロックバスター”
元は大型爆弾を指したが、製薬業界の用語にもなり、巨大な売上を出した製品を呼ぶ。
もう一つは”パイプライン”?! 石油や天然ガスの輸送管ではなく、基礎研究から臨床試験を乗り越えて申請・承認されるまで、10年以上もかかる新薬開発の事を指す。

製薬会社の投資回収期間は極めて長く、不透明。株価を大きく動かすのも短期業績ではな
く、”パイプライン” の試験データになる。開発中の新薬の競争力が、数年から10年先の製薬会社の業績や世界シェアを決定づける。

食料品や化粧品と同じように、弾薬や爆弾などの武器も、薬剤も、使用期限や消費期限があり、定期的に在庫処分をしなければならない。例えば、先に触れたタミフルだが、日本政府はこの薬を大量に購入して備蓄したが、結局捨て続けている。
ご参考:https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/eye/201911/563183.html

ところで、十分な臨床試験の結果を待たない、拙速なワクチン使用には懸念要素が多く、安心安全とは言えない。市場に出回ってからも治験が続くようなものだと思うが、それが義務化されるとしたら……

薬剤のチョイスは、性善説を前提に、国任せ、医者任せ、患者になったら、拒否することなどできるわけがない。まして、苦痛が酷ければ酷いほど、藁をも掴む思いで”drug”を服用するに違いない。

そもそも薬か毒かは紙一重、結果は、服用する人の身体の全要素がどう反応するかに関わるはず。副作用がすぐに現れるとも限らないし、後年別の病気にかかっても、原因は特定できないかもしれない、という条件付きであることを認識しておくべきだろう。

フランスで、”Hold Up” というドキュメンタリー映画が2020年11月11日に公開された。
政府、製薬会社、メディアのプロパガンダによるCovid-19の嘘を暴く陰謀論になっている
らしく、SNSでも話題に上った。事実もあれば嘘もありと、フランス人たちの間で”mille-
feuille argumentatif”(ミルフィーユの如く大いに議論の余地あり)になっている。
ご参考:http://www.youtube.com/watch?v=Ax1hPfvLhtw

Believe it or not……

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