パリのマダムの・・・

『“ Water Closet “』

タイトルにピンと来た人は凄い。“WC” 表記なら、ほとんどの人が解ると思うが、  ウォータークローゼットと聞いては、『ん?』となるのではないか。

日本でトイレの水洗化が進んだのは、64年の東京オリンピックと70年の大阪万博以降。WC表記は、フランスも然り、住宅の見取り図くらいでしか使わなくなって来ている。

日本語の”トイレ”は英語の”Toilet”から来ているが、本家本元では、アングロサクソン的には、 WashroomやLavatory (そう言えば、飛行機内もこれだ)、アメリカ口語的には、BathroomやRestroomを使うのが普通だろう。

一方フランス語では、”Toilettesトワレット”と、複数表記をする。単数表記だと、eau de toiletteの如くで、直訳で”トイレの水”になってしまうと思いきや、オーデコロン。因みに、eau de vieオードヴィは、直訳すれば「命の水」だが、ブランデーなどの蒸留酒を指す。

そもそもtoiletteには、洗面や化粧など『身繕い』の意味合いが含まれ、洋服そのものを指したりもする。直接的な表現を避けてcabinetや petit coinプティ・コワン(小さなコーナー)と言ったりもするが、日本語でも化粧室と言ったりするので納得できると思う。

ところで、ドアに”H”や”F”や”D”と表示されていた場合、フランス語の知識があれば、
Homme(男性)Femme又はDames(女性)と解るが、皆、異国のトイレで、あれ、どっちだ?と悩む経験は結構あるのではないだろうか。

外国で旅行したり生活したりすると、トイレの数が圧倒的に少なく、切実に困ることがある。フランスでは、下手すりゃ量販店やデパートにもないことがある。従業員用はあっても「客に使わせるトイレはない」ことが多々あるのだから驚く。

実は、浮浪者や物乞いなどが多いので、公衆トイレが無料だとその人たちまで使うから、
という事情もあるようだが、有料でも汚かったりするのでどうしようもない。

ロックダウンが解けたある日、家族で近郊の美術館巡りをしたのだが、VallaurisやAntibesにあるピカソ美術館内ではトイレが使えなかった。学芸員や監視員は配置できても、トイレにコロナ対策に適応できる手間暇はかけられないという理由だったのだろう。

さて、フランスの友人が、子供の頃、母親に「(西洋式なのに)便座に上って屈む」ように
言われた、という話を聞いてびっくりもしたが、日本人の中は「不特定多数の人が座る便
座は使いたくない」と和式を選ぶ人もいる訳だし強ち驚くことではないと納得もできる。

あまり見かけなくなったが、以前のフランスには、真ん中に穴があるだけの、日本人ならどっち向き?と迷うようなトイレもあった。しかも、水洗の鎖を引っ張ると、周りに水が溢れて、足の置き場に困るような代物だった。
ご参考:http://dai3375.blogspot.com/2011/04/blog-post_09.html

「どっち向き」の話について言えば、昔の和式トイレは、大抵「入った方向に座る」ようになっていたと思う。欧米式は、防衛上?入ったら向きを変えて座るのが当たり前だから、穴だけのトイレでも、屈む向きで悩むことはない、ということなのだ。

中国では、洋式便器に親しみのない老人を気遣って、洋式と和式対応の2way便座が開発されたが、結果としてあまり売れず殆ど流通していないらしい。日本では、和式トイレを知らない人たちのために、使用方法を様々な絵図にしたものも設置されるなどの配慮がある。
ご参考:https://jp.toto.com/en/gtjt/jp/howto/

ところで、私は、体が硬い上に足首の関節も柔らかくないようで”ヤンキー座り”?! が出来ないのだが、和式トイレがほとんどなくなって、足腰を使うことが減ってしまったのは、良いのか悪いのか、と思う時がある。

生活様式がどんどん欧米化したことで、良い面もあるが、日常的に運動になっていた動作が減ってしまったのは、生活習慣上、案外マイナス面も多いような気がしてならない。 そこで、スクワットでもしなきゃと躍起になるのは如何なものか。

さて、日本のトイレは世界一綺麗だし、トイレットペーパーがないということもない。
公共施設は元より飛行機内にもシャワートイレが設置されている環境は、外国人には相当カルチャーショックなのではないだろうか。

以前、娘の大学の若者たちに日本文化の話をする中、シャワートイレの話で大いに盛り上がった。トイレのドアを開けると、センサーで便器カバーが開き、消臭消音ができたり、便座の温度調節もできれば、マッサージやドライヤーまで付いて、テクノロジーの宝庫だと話すと、驚きと笑い、最後は憧れにも似た様相に変わった。

トイレ内に、赤ちゃん椅子があったり、着替え台まで付いている……次から次へとサービス精神旺盛な対応に変化していくのは、外国人でなくとも賞賛に値する。

英国公衆衛生庁(RSPH)は、国内の公共施設に関する報告書をまとめ、公衆トイレの数に
ついて、男女比率を1:2にすべきだ、という提言を盛り込んだ、とか。その理由は、トイ
レ利用には、着衣や生理の問題、身体構造上の差異などで使用時間をより多く有する女性
の事情を配慮、というものだが、さらに、トランスジェンダーの人々を考慮したトイレの
拡充も必要と指摘している。

最近ではロンドンのホテルなどでも、シャワートイレを設置するところが出てきているが、フランスの高級ホテルなどでもよく見かけるのが、アラブ式ピストル?!洗浄機が設置されていること。家庭用に設置できるものも売られているが、元々、紙を使わずお尻を洗うイスラム系の人々用のものだが、これには苦労する。

まず、プッシュするのに力が要るし、水の圧力が半端ないので、あちこちに吹き飛び衣類
も濡らすことになって始末が悪い。片手で軽く押せば、適量が狙ったところに出る、というような代物ではなく、正直、使い勝手が悪い。

そもそも、ヨーロッパには”bidetビデ”という代物があり、足を含めて下半身を洗浄するための器具があった。排便後の肛門洗浄というより、性器や肛門の衛生に使われた。 第二次世界大戦中、フランスの売春宿で初めてビデに遭遇したアメリカ兵は、セックス後に膣内を洗うために使用する物、という偏見を持ったそうだ。

実は、フランスでシャワートイレを設置するには、数々の難題を解決しなければならな
い。まず、日本式の製品だと電圧が違うので、そのままでは使えず、変圧器が要る。
さらに、フランスは硬水で、ミネラル分が豊富なため、日本式の繊細なシャワーの穴が 詰まってしまう可能性がある。そこで、硬水を軟水処理するフィルターが必要になる。

我が家では、昨年アパルトマンの内装工事をして、シャワートイレ用の電気のコンセントもつけてもらっていた……ところが、最終段階で、工事を請け負ったポーランド人のおじさんは、すっかり忘れて壁にタイルを貼ってしまっていた。哀しいかな、シャワートイレはまたもしばらくオアヅケになってしまったのである。

ところで、日本人は比較的トイレが近いのかもしれないが、使うトイレットペーパーの量も、半端なく世界一だとか。1日使用量は、日本人男性3,5m、女性12,5mで、年間日本で使用される長さは、何と40,000kmとか。日本の総人口1億2600万人で、トイレットペーパーの年間消費量は47万トン、毎年平均一人あたり50ロール以上を消費するという。

ちなみに、我が家で買っているトイレットペーパーは「1枚で良い」
という謳い文句の製品。通常のトイレットペーパー より高額だが、
紙の厚みがあって、切り取りの長さも長めになっている。
でも、日本人なら”2枚”は使ってしまいそう(苦笑)

74年のオイルショックでは、お母さんたちが行列を作ってトイレットペーパーを買ったの
である。実は、コロナ騒ぎで、フランスのスーパーでもトイレットペーパーの買い占めが
起きたようだが、たかがトイレ、されどトイレ、の騒動は何処も一緒。

最後に、写真は、カンヌの路上に設置されている「犬」のトイレ後始末用。上はビニール袋が入って、下が汚物を捨てるゴミ箱になっている。
こんな税金の使い方にも住民の文句は出ない。

「私たちの犬たちへの愛、綺麗な歩道への愛として」
なんていうスローガンが印字され、糞の処理をしなければ
”€450の罰金”だが、現実には、”落し物”が結構ある。

フンづけると、口から出るのは ”Merde !”メルド(文字通り「くっそーっ」)だし、
それが「左足ならラッキー」?!という、そんな屁理屈で笑える社会……まあ、いいか。

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