Ton Chin Kan シングルマザー奮闘記(その38)

『幸せになるために…』

「ママなんていつも怒ってるから大嫌い!」
いつも怒りすぎているときにTonに言われるセリフです。

こう言われると余計に腹が立ってしまい
(なんなのよ!!)となり余計に白熱してしまいます。

そしてつい先日、いつも通り言い合いをしていて最後に一言言われました。

「幸せになるためにあいつ(戸籍の上で父親)のお家から出たんだよね?」
9歳の子が
『幸せになるために』
と考えているとも知らず
自分の意見を持っていたことも知らず
ただただ驚きを隠せませんでした。

そして私は何も言い返すことができませんでした。
その日はもう何も感情がわかず、考えることも嫌になり
ひたすらボーッとしていたと思います。
言葉に出したことがないセリフをまさかTonに言われるなんて。

『幸せになるために』

この言葉に無縁の方もたくさんいると思います。
『幸せになろうね』
『幸せだね』

などはよく聞かれるセリフ。
でも
『幸せになるために』
はパッとなんて思いつかないし
様々な経験をした上で出てくるセリフだと思っています。

それをまだ9年(されど9年?)しか生きていないTonの口から発せられる衝撃っていったら。

まだ地元に戻ってくる前のお話です。
外面だけは、そこだけはとても良い旦那の元で暮らしていました。
表面上はとても仲良く見える家族。
他者が誰もいないところでは地獄でした。
いないところでは私とTon Chin Kanの全員が元旦那に気を使って生きていました。
まだ2歳になったばかりのKanまでも顔色を見て生きていました。

少しでも奴の逆鱗に触れた時、
まだ首が座っていなかったKanでも強めに頬にビンタを受け
驚きと痛さで大泣きしてしまうと怒鳴れていました。

でも奴はその様な暴力という日常の行為を
「それは愛情の裏返しであり、しつけだった」
と言い切っています。
ある意味すごいと思いませんか?

周りが「それはおかしい」と彼を注意しても
彼の中では『しつけ』だと本気で思っていて
本気で愛情をかけていたという勘違いをしているのです。
彼もそうやって父親から暴力を受け、母親は男を作り出ていってしまった。
その様な環境下で育ってきたため
彼の中で追い求める理想の家族という形は
妻と子供は旦那、父親に死ぬまで絶対的に服従
というものだと思います。

私たちは意見を持ってはいけませんでした。
「働いてもいない(働くなと言われていたため)私が、意見を持つなんてあり得ない」
「俺が働いて養ってやっている。お前らが俺の意見に従うのは当たり前だ」
「毎日毎日お前は家にいるだけでいいな。なんもしてないくせに食べさせて頂いてることを感謝しろ」

彼が実際に口にした言葉のほんの一部です。
まだまだ数え切れないくらいの暴言を彼は日常的に発していました。
ちなみにこのセリフたちを
目を見開き発狂しながら、時には腕を振りかざしながら
叫んでいました。
人は普通の言葉でも大声で叫ばれただけで萎縮してしまいますよね。
彼は暴力的な言葉たちを、さらに恐怖感を与えるために叫びます。
それが日常だと人はどうなるか想像つきますでしょうか。

思考回路がほぼ停止状態に陥り、自分は何もできない、何も思ってはいけない。
彼がいないと私たちは生きてはいけない。
と思い込む『共依存』の状態に陥ります。

『共依存』の状態に陥るとそこから抜け出すのはかなりの困難であり
抜け出せない人も出てくると文献には記載してあります。

私の場合はとても運が良いことに元旦那以外の周りの人たちに恵まれていて
その地獄の状況から助け出してもらうことができました。
周りにこの人たちがいなかったらと考えるだけで
今でもゾッとします。

多分、今ごろ生きてはいないだろうということだけはわかります。

それくらい生きていても明るい未来が見えなくて地獄だったのです。
その地獄から出られた…
私たちからしたら本当にすごいことだったのです。

Tonにしてみれば今まではその世界しか知らなかったための衝撃もあり
いきなり全く違う土地で暮らすことや
新しい環境、特に怒鳴られること威圧されることがない暮らしというのが初めてで
戸惑いが大きかったと思います。

そのため暴れ狂ったりすることもありました。
5歳の子に大きな負担を与えてしまって大変申し訳ないとは思っています。
でも、あのままあの地獄にいたら
私はTon Chin Kanをきっと道連れにしていたと思います。
毎日そればかりを考えていました。

でもあの『家』を出ることができてからどうだろう。

子供に「幸せなるために…」と言わせてしまった私。
変えていくしかない。
前をむいていくしかない。
これからの未来のことだけ考えるしかないですよね!

という事で
目の前のこと、一つ一つ乗り越えて行きましょうか!
だって幸せになるために決めたことですもんね!

もう子供たちの口からこんな言葉は言わせない様に努めていきます!

さて次回は「え!?熱?!」です。

皆様実りのある1週間を。

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