Ton Chin Kan シングルマザー奮闘記(その25)

『わんちゃん』

数年前まで生活していた家では
持ち家でしたので
自由にペットを飼うことができました。

まだ子どもが産まれる前の話までさかのぼります。
元結婚相手は
仕事で忙しくほとんど家にいませんでした。
今考えると、いなかった時期のほうが幸せでした(笑)

いないのですが、携帯電話という監視可能な文明の利器により
私は行動を事細かに連絡しなければなりませんでした。
友人と遊びに行くこともにも、買物にも気を遣いながら
(帰ったらどんな文句やケチをつけられるのだろう。いやだな)

という考えばかりが頭をよぎりながら外出していました。
頭の隅にはいつも奴のことが。
そんなことばかり考えていると
遊んでいても上の空になり
いつしかその状態も苦しくなり
なかなか自分からは誘えなってきて
外の環境とは疎遠に。

自らが外部とのコミュニケーションを遮断していくという形が
見事に作られていくのですよね。

その環境にいるときは気付くことはできません。
だって、彼が全てという考えが根本にあり
彼を変えてあげたい、助けてあげたい
と謎の感情が生まれてくるのです。

今考えると、本当に『おばかちゃん』な自分。
なぜあんな相手に自分を、
そして自分の大切な時間を犠牲にしてきたのか。
本当に悔やんでも悔やみくれませんが、過去には戻れないので
あの過去があるからこその現在の自分があると強く思うことにしています。
そう、外部と連絡がなくなるというのは
社会から取り残された気持ちになり
とても寂しく、
心にぽっかりと隙間ができていくものでした。
「私は一体なんなんだろう」
「どうして一人なのだろう」
「あんなに楽しく暮らしていたのは夢だったのかな」
「私にはもう何もなくなって、旦那だけなのかな」

これこそ負の世界に入っていく入り口でした。

それでも、私には彼がいるから大丈夫。
何も根拠がない薄っぺらい自信と、
負けたくないという「いらないプライド」
この気持ち2つでその場を乗り切っていました。

でも、家で日中ずっと一人で過ごすことは私には苦手でした。

賑やかな街で生まれ育ち
海外もちょこちょこまわり
外にでることが大好きな私には、
家に一人でずっといるという状況が
苦しみ
にしか感じられませんでした。

家にいたくないのに、元結婚相手の監視のせいで自由がない。
なのに、
「お前は家にずっといるんだから、家事くらい完璧にこなすのが当たり前」
といわれる日々。
家事だってたぶん人並みにはこなしていたはずでした。
キッチンのカウンターを指で埃をみる人間を旦那にしてしまったからには
家事は頑張っていたはずです。
でも、認めてもらえない。
寂しい。
一人は嫌。
何を頑張っても認めてもらえないつらさ、寂しさから
ペットを飼いたいと意を決してお願いしました。

そして我が家にやってきたのが黒くて、お目々がまんまるの美人なわんちゃんでした。
彼女からしたら、私はママ。
一緒にいる時間も長いので、彼よりも私にすぐになつきました。
そんななつく、なつかないなんてどうでもいいことでも、張り合ってくる人。
「お前より俺になついている。お前はずっと一緒にいるのに駄目だな」
どうでもいいわ、そんなこと。
私と姫(わんちゃん)が幸せなら、外野の戯言なんてどうでもいいことでした。

まだまだ子犬で小さな姫にも容赦の無いしつけがはじまりました。
理由は簡単。
彼よりも、私になついているという事実が許せなかったから。
そんなことで?!
と読みながら驚いている方もいらっしゃるでしょう。
そんなことで、ああいうタイプの人間は狂うのです。
あのときに家をすぐに出ていればよかったのですが、
なんせ負けん気の強い私は、
「私ならば変えてあげられる」
「今家をでて戻ったらかっこわるい。負けたとおもわれるし恥ずかしい」

という感情だけで、彼の妻をしていました。

姫はというと、彼が帰ってくる物音がするとゲージの中にダッシュで入り息をひそめる。
「まるで私はいませんよ」
といっているかのように。
太らすのは虐待だと餌は最小限。
おやつは歯に悪いとあげない。
姫のためを思ってこうしているのが正しいと思い込んでいる彼。

しかしながら予防接種のために動物病院に私が連れて行ったとき、
「痩せすぎですね…ちゃんとご飯をあげていますか?」
の一言。

これを仕事帰りの彼にどう伝えたらいいのだろうか。
私が発した言葉で無いが、言い方次第では確実に火の粉がこちらに飛んでくる
とわかっていたので優しく、頭をフルに使いながら説明。

彼から一言。
「やぶ医者だから病院を変えろ」

過去の話だから今はもう笑えますがあのときの私には従うしかありませんでした。
思考回路は壊されていたのでしょうね。
哀れな自分です。

そして、それから数年後。
家をでて保護されることになったときに一緒に姫も連れてでました。
正直なところ、経済力もないし、家もなくなる私達にはペットどころではありませんでした。
しかし、助けてくれたご近所の皆さん、ママ友の皆から説得されて一緒に出ることにしました。

そして、あれから数年。
姫は私の実家で、毛並みもつやつやのまるまるとしたわんちゃんに大変身!
今のこれでもかの幸せな様子をみて、
私が飼ってしまって申し訳なかった気持ちと、
幸せになれてよかった、私のもとにきてくれてありがとうの気持ちが入り交じります。

Ton Chin Kanも実家に遊びにいくたびに元気になっていく姫をみて嬉しそう。
「姫とまた一緒に暮らしたい!」
と言っています。

環境で良くも悪くもなるのは人間だけではなくペットも一緒。
愛するということを勘違いしてはいけない
彼にはそれを誰かが教えてあげて欲しいなとおもいます
これ以上の犠牲をださないためにも

次回は「学校がお休みという状況」です。
皆様実りのある一週間を!

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