Ton Chin Kan シングルマザー奮闘記(その18)

『発表会』

「ChinとKanはね、ねずみさんの役をするんだよー」
と1月の中旬くらいから急に言い出したChinとKan。
一体全体なんのこっちゃと気にもとめなかったズボラで脳天気な母さんは
「ふーん。ねずみか-」
で終わっていました。 そしてリュックサックの中にはいっていた保育園からのお手紙を読み
そこで初めて気がつきました!
発表会だわ!と。
発表会という存在のこと自体、すっぽりと頭からぬけていた母さん。
我ながら適当にもほどがあります。

さかのぼること3年前。
これはTonがまだ幼稚園児だった頃のお話。
近所にある大きめなホールをわざわざ貸し切って大々的に行われていた幼稚園の発表会には
大きなステージがあり、観客席は二階まである所でした。
まず学年ごとに演奏の発表。
半年間がんばってきた練習の成果がでます。
我が家のTonは、演奏が大の苦手なのです。
練習期間中にしょっちゅう先生方から
「Ton君、今日は頑張って立っていましたよ!偉かったですよ!」
と三年間言われ続けていました。
・・・??
立っていました?
疑問に思いますよね。
そうなのです。
我が家のTonは協調性をどこかに忘れてきてしまっているのです。
年少さんのときから、Tonの練習の様子を聞くと
それは悲惨なものでした。
楽器演奏の先生は担任の先生ではなく、皆から怖がられている年配の先生。
なので、園児の皆はその先生が怖くて恐縮しながら練習をしていた中
我が家のTonは、良い意味でも悪い意味でも誰にでも屈することなくそのままの自分をさらけ出すタイプでありまして…
「Tonは疲れたからもう無理―」
と演奏中にいきなりやめて座りだしたとおもったら
「皆がんばれー」
と応援。
そして、あるときは怖い先生に叱られて園児たち皆が泣いている中、Tonだけが真顔で
「休んでもいい? お話終わった?」
と言ってしまい、怖い先生を呆れさせていたエピソードも多々ありました。
しかしながら最終的にはその怖い先生からTonは面白がられたみたいで
とても可愛がって頂きよかったのですが、普通なら駄目な子認定ですよね。
素晴らしい先生でよかったです。
しかも、まわりの園児達もTonはこんな子だから、と理解をしていれくれていたおかげで
特に注意をすることなく暖かく見守るスタイルだったそうです。
大人な対応をしてくれていた周りの皆にも感謝。
もしも、私のクラスにTonみたいな子がいたら大嫌いになっているな。笑
そして、演奏の練習とは対照的にダンスの練習ではとてもはつらつと頑張っていた・・・
と思いたいのだが、やはりそこはTon。
疲れ始めたら
「足痛いから」
と座りだし、皆がぽかん。
どんだけ協調性が無い奴なのだ。
恥ずかしいわー。
でも、どんだけ先生達にきつくいわれても唯一、一人だけ泣かずに最後まで食らいついていたらしく
3年間センターをさせていただいていました。
本番での演奏は観るに耐えなかった・・・
楽器に触るな~
と念をおくっていたものです。
が、ダンスは親の色眼鏡でみているせいもありますが
言わせてください。
Tonは完璧でした。
堂々たる表現力、怖じ気づくことも一切なくステージ上で輝いていたあの姿。
終わってからたくさんの保護者の方々、ママ友、先生方にTonが褒めちぎられていました。
年長の最後の発表会のときには先生方に
「あんなに練習のときに適当だったTonが、一番完璧にダンスをしているのをみて先生達泣いちゃったよ~」
と言われて、母さんは平謝りしながらもTonを誇りに思ったものであります。
二年前くらいのことなのに既に懐かい。。。

Ton Chin Kan、三兄弟を比べてみると Tonは普段から踊ったり、唄ったりはあまりするタイプではなくて、本番だけ力を発揮するタイプ。
ChinとKanは、普段から踊るは唄うは、アレンジして楽しむタイプ。
そして今回、2人が同じ保育園での初めての発表会。
この日のために何十回、送迎中や家の中で練習している姿をみたことか。
2人とも相当気合いがはいっていたのであります。
そして発表会の日の朝。
まさかの寝坊!!
はい。犯人は私です。
母さん。やらかしました。
ごめんなさい。
目が覚めたのが、集合時間の20分前。
我が家から保育園までは少し離れているので15分はかかります。
車もないため、なんとなくもう間に合わない。
「おーまいがっ」
ふざけたわけではないのですが、時計をみた瞬間にこの言葉が思わずもれました。
Ton Chin Kanはというと、とっくに目が覚めてのんびりとソファに腰掛け、テレビをみていました。
私は慌てて
「ごめんなさい!!!発表会がもうはじまっちゃう!!急いで!!」

この私が発した一言で、チンとカンのやる気がすべて失われてしまったのです。
「もう行きたくない」
「いやだ、行かない」

やってしまった。
最初で最後の2人が一緒にでる発表会。
保育園に行くことすら嫌がり泣く2人を
Tonと一緒になんとか外にだし、10分遅れで保育園に到着。
もちろんのごとく、2人のやる気はゼロ~。
嫌すぎて玄関で泣き出す始末。
もうぐちゃぐちゃ。
そして、この事件をおこした張本人の私は
自分が一番悪いのに段々とこの状況にイライラしてしまい怒りだしてしまった。。。
もう、悪循環。
先生方の必死の説得でとりあえず裏側へ。
Tonと私は用意されている席へ。
5人でてくるはずのねずみが、3人しかでてこない。
しかも普段からChinとKanがメインで唄っていたらしく、3人から歌声すら聞こえず、ぐだぐだにしてしまった。
少人数だから一瞬で終わってしまった発表会の最後まで2人は出てこず。
何度もいいますが
こうなったのは母さんである私の寝坊のせいです。
なのに舞台に出てこず逃げたことに腹が立ってしまった私は、
思わず低い声(元々低いがもっと低くなりました)で
どうしてきちんとやらなかったのかを、問いただしてしまいました。
その現場に一緒にいてくださった先生までもが、
私のあまりの空気と言葉にChinと共に号泣。
やばい。。。先生が泣いてしまった。。。
と焦りながらも
一度ねじが外れてしまった私も止められず。
そこに
「お母様!ChinとKanが一生懸命がんばっているリハーサルの風景を録画していますので、どうぞ別室でみてあげてください!!とても頑張っていましたよ、2人とも!」
と園長先生登場。
また言わせていただきます。
寝坊して遅刻したのは私です。
私が犯人です。
なのに収拾が付かなくなり、ワガママをいうモンスターに成り下がってしまいました。
恥ずかしすぎてその場からすぐに立ち去りたかったのですが
どうしても2人が輝いている姿がみたくて観させていただくことに。
画面の中の2人は、皆の先頭に立ち、皆を引っ張って誰よりも頑張って唄ったり、踊ったり。
私は、日頃の疲れを理由に寝坊。
それなのに苛ついて、子ども達に当たりちらし、2人を傷つけてしまったことに涙がとまらなくなりました。
私は一人で3人を育てているから、疲れて寝坊はしょうがない・・・ ・・・
そんなわけがなかったのです。
ChinとKanは皆と必死に練習してママのためにと皆の先頭にたち、ママに喜んでもらうんだと頑張っていてくれていました。
涙がとまらなくなりました。
私のその姿をみた先生方が
「ママは一人で大変だもんね」
と声をかけてくださり…
その言葉がよけいに身にしみて、泣き続けてしまいました。
そんなこんなでChinにとっては保育園最後の発表会が終わってしまい
心残りがすごいです。

「私は疲れているから」
「だって一人で大変だから」
の恥ずかしい言い訳はやめよう

と心に誓った出来事になりました。

次回は「○○不足」です。
皆様実りのある一週間を。

一覧へ戻る