パリのマダムの・・・ volume7

『フランスのエンブレム』 - その1

フランス国旗は、ご存知のように、青白赤のトリコロール。

左は、政府公認のロゴで、白色で「マリアンヌ」の横顔が刻まれ、その下に、自由、平等、博愛と書かれている。

軍人貴族で英雄となったラファイエットが、パリ市民軍の標章「青・赤」に、ブルボン朝の象徴であるFleurs de Lys「白百合」を由来として、この三色国旗が発案されたというのが通説だが、別の解釈をする歴史家もいる。

アメリカ独立戦争に参加したフランスだが、数年後にまさに革命が起きた。
そのため、解放のシンボルとしてアメリカ国旗に着想を得たというものだ。

「マリアンヌ」は、政治改革の象徴、共和国を象徴する女性像を擬人化したもので、
ユーロ硬貨や郵便切手にも用いられている。
「マリアンヌ」については、膨らむ話がたくさんあるので、別途に後述したい。

さて、三色の中でも、フランスは特にブルーが国を代表する色になっている。
フランスナショナルチームを象徴するのは、「青色」であり、les bleus レ・ブル
(lesは複数を表す定冠詞で)は、色を表すと同時に、ニックネームにもなっている。

国際試合になると、”Allez, les Bleus ! ” アレー、レ、ブル !
「フランスチーム、さあ、頑張れ」との雄叫びがあちこちから聞こえてくる。

フランス人は基本的に青色が好きなようだ。2人に1人は青が好き、とも聞く。
特に、ゲイの人たちに人気があるが、なぜかよく分からない。

蛇足ながら、ヨーロッパで『青い血』というと、高貴な生まれ、貴族や名門であることを意味する。静脈の青が透けて見えるほど肌が白い、ということらしい。

さて一方、フランスのエンブレムになっているわけではないが、シンボルとして馴染深いのは、Le Coq ル・コック(雄鶏)ではないか、と思う。

日本人には、Le Coq Sportifというスポーツブランドでお馴染みと思うが、Le Coqは、
フランスでも、フランス国家やその歴史に関わるものとしてより、スポーツのエンブレム
としての方が一般的になっている。サッカーやラグビー、オリンピックの選手のユニフォームなど、いろいろなところで見かける。

歴史的には、フランスの祖先民族の一つとされるGauloisゴーロワ(ガリア人)による。
フランス人は、自分たちのルーツを古代ガリア人に求めるが、ローマ帝国時代、ローマ人の侵入に際し、ガリア人は戦闘的で抵抗力も強かったことから、執念深い雄鶏に喩えた。

実は、ラテン語では、gallusは、un gaulois(ガリア人)でありun coq(雄鶏)も
意味したのである。

そこで、中世も終わる12世紀には、ゲルマン人、イタリア人、ブリタニック人らは、当時西ヨーロッパの共通語だったラテン語で、フランス王らをからかってそう呼んだらしい。

多くの国が、鷲やライオンがエンブレムになっている中、鶏は家禽という点でも一線を
画している。ルネッサンス期に、まずはフランス王のシンボルになり、その後に王国の
シンボルとなったが、ナポレオンだけは、むしろローマ帝国の象徴でもあるl’aigle鷲を
好んだが、続かなかった。

“なぜフランス人は雄鶏をエンブレムに選んだのか?」という質問に対して、

C’est le seul animal capable de chanter dans la merde.”それは、雄鶏は、糞をしながらでも鳴くことができる唯一の動物だからだよ。
という、俗説としての笑い話がある。
 
 
ところで、Le Coqは、そもそもは、ケルト語のkoqが由来で「赤」を意味した。
赤は、ヴィーナス、夜明けの金星の色で、闇に打ち勝つ光の象徴である、という。

ということから調べを進めると、宗教と鶏の関係に、世界共通のものがある。

雄鶏の雄叫びで太陽が昇る、つまり光が復活、というわけで、キリストのシンボルにもなっているが、教会の尖塔の上に、多く掲げられている。

復活のシンボルであるからして、戦争で亡くなった死者を記念する墓碑のところにも雄鶏の像が飾られたりする。

日本でも、ニワトリはすでに『古事記』『日本書紀』に登場し、暁に時を告げる鳥として、
神聖視された。

神道において、神様の使者を神使(しんし)といい、神の真意を示すために人と接触する
動物のことだが、神社にいる鶏は神使とされる。

神社の鳥居の語源も鶏にあると言われる。天照大神の岩戸隠れの際、鶏をとまり木に
止まらせて鳴かせたことから「鶏居」と呼ばれ、これが鳥居に変化したという説、
または、「通り入る」が転化した、という説もある。

家族で、熱田純宮に行ったことがあるが、「神鶏」とされる
「名古屋コーチン」が放し飼いになっていて、出くわした。

私たちが訪れたのは、2016年年末、年明けには「酉年」を迎えるという時だったのだが、
何を隠そう、私も娘も「酉年」。

ちなみに、日本では「ニワトリは三歩歩くと忘れる」と言われるが、よく物忘れをする私は母に「ニワトリ」と言われたが、私もよく物忘れをする娘をそうからかった。

「ニワトリ」は、脳の容量からも知能はそれほど高くないと思われているが、実際には、非常に頭が良く、記憶力も優れている鳥らしい。(気分いい〜)

ところで、フランス語では、Coqコック(雄鶏)に対し、Pouleプゥル(雌鶏)というがPapa pouleという表現があって、

この意味するところは、まるで雌鶏のように、子供の面倒見がいい父親を指すのだが、
行き過ぎて過保護になっているケースも、そう呼ばれる。

夫も、その典型で、娘が小さい時は、「危ない、危ない」と自転車にも乗らせなかったし、7歳 ! の誕生日には、男の子を誕生会に招くのを嫌がった……

娘に彼氏が出来た時には、卒倒しそうだったが、素直に受け入れ、二人がPhDに進んで
金銭的にも独立を果たしてからは、同棲も認めている。
しかし、結婚ともなれば、確実に号泣するのは目に見えている。

トリを飾って、
左は、夫が、水墨画で家族の干支を描いたもの。

なぜか私が一番大きく強調されているのが気になるが、
何れにしても、イメージ通りで、我が家は、騒がしい。
 
 
 

【ご参考】
https://www.elysee.fr/la-presidence/les-symboles-de-la-republique-francaise
https://jp.ambafrance.org/article4053

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