「アラカン」~お楽しみはこれから volume56

『夏休みの終わりに思ったこと』

とある8月下旬の通勤電車の中。隣にいた女子高生の会話に気になりました。

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A子:「もうすぐ夏休み終わっちゃうね。宿題が終わっていないよ~」
B子:「えっ、A子も!私も全然よ。数学の計算シートなんて白紙同然!!」
A子:「後回しにした難しい問題がまだいくつか残っているわ。」
B子:「それにあの読書感想文は面倒くさいよね。3冊読むなんて無理だよ。」
A子:「あっ、それは終わっている。私、読書好きだから。」
B子:「ふうん…じゃあ、あれは?郷土の歴史を調べろ、っていうヤツ。無理やり時間かかる宿題にしなくたっていいと思わない?」
A子:「それも一応書いた。7月にお祖母ちゃんのうちに行ったんで、そこで片づけた…」
B子:「えっ…かなり終わっているじゃないの。(小声で)裏切り者!」(涙目)
A子:「そっ、そんな…」(狼狽)
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さて、皆さんはどちらのタイプ?

私は、圧倒的にB子さん型。
B子さんの気持ちが手に取るようにわかります。
B子さんは、A子さんを「裏切り者」なんて本気で思っていないはず。単に、自分よりもはるかに宿題が終わっているA子さんが羨ましいやら妬ましいやら。おまけに自分に対する「今年もまたギリギリまで引き延ばしてしまった」という嫌悪感に苛まされているのに違いありません。
思えば、私も幼い頃より、後悔先立たずのニガイ体験は数知れず。小学生の夏休みの宿題に始まり、中高生の中間・期末テスト、大学生になると論文の締め切りなど。いつも「あと一週間あれば…」と恨み節ばかり。
真剣にドラえもんの登場を念じながら(⁉)夜中、机に向かっていたものです。
社会人になったら試験から解放される、と思ったのも束の間、今度は定期試験よりも頻繁にもっと厳しいデッドラインが課される環境となりました。
当たり前ですよね。私が甘かっただけです。
(実はこのエッセイについても、期日遅刻常習犯で、ウェブの運営者にいつもご迷惑おかけしています。ごめんなさい!! )
『立派なものにしようと張り切る→ 遅々として進まず、時間ばかりかかる→ まだ時間的な余裕がある、と気持ちを落ち着けようとする→ でも、いつの間にか締め切り間際に→ 慌てて馬力だけで仕上げる→ 結果(質・量)に満足できず・もしくは期限に間に合わず、後悔しまくる→ 次こそは早めに始めて立派なものをと誓う→ でもいつもの繰り返し』
この「負の連鎖」との戦いは私の永遠のテーマかもしれません。

なぜこんな「負の歴史」をいきなり語り出したかというと、この『直前バタバタ型』は必ずしも主流派ではないことに改めて気付かされたからです。
「今頃!?」と驚かれるかもしれませんが、今さらなのです。
事の発端は、今年の8月最後の日曜日のこと。
うちの近所の小学生が友達数人とにぎやかに家の前でサッカーに明け暮れていました。
多分、夏休みの間なかなか遊べなかったのでしょう。いつもに増して熱戦が繰り広げられたようで、うちのベランダに何度かボールを蹴り入れてしまい、そのたびに「すみませーん!」と呼び出されていました。あまりにも楽しそうなので、私は暫くベランダから彼らに茶々を入れながらの観戦モード。
その時に気が付いたのです。『この子たち、宿題終わったのかしら?』
よそ様のお子様のことだから心配しなくてもいいのに、気になって、気になって。辞めておけばいいのに、ついつい聞いてしまいました。
「ねえ、2学期って9月1日からだよね。夏休みの宿題って終わっているの?」

…ああ、人の楽しみに水を差す、なんて意地悪な近所のおばさんなのだろう…

でも罪悪感に駆られたのは一瞬だけ。子供達からの返事は、
「終わったよ~~~」
「すごいだろ!」
「大変だったんだから。」
「終わっていななければ、ここにいるはずないじゃん。」
「大人って、すぐその質問するよな~」
との突っ込みの嵐が。
もう私はびっくり!
「ええーー!まだ夏休み、数日残っているのに宿題終わっているの?
凄いね~。立派だね。感心するわ!」
何だか、情けないコメントを連発してそのトピックを終了させました。

後日、その子のお母様に話を聞くと、リーダー格のお友達が「宿題終わっていなければサッカー大会には参加してはいけない」というルールを決めたらしく、みんなで協力しあって必死に終わらせたそうです。
「うちの子が最後の週末を遊べたなんて、初めてのことだったんですよ。」とお母様は謙遜していらっしゃいましたが、何だか良い話を聞いたな~、と嬉しくなってしまいました。
私の『直前バタバタ病』を治すのは多分もう無理だろうけど、前途ある若者たちが強力なリーダーシップの元、正しい生活習慣を身に着けているなんて、素晴らしいことではないですか。
日本の将来は明るいわ!
・・・ はい。自分の欠点を棚に上げて、日本の将来に夢を馳せた夏休みの終わりのことでした。

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