「アラカン」~お楽しみはこれから volume40

【音楽編⑥】『カブトムシ/ aiko x 井口理』

鋭い方はすでにお気付きの通り、このタイトルは正式な楽曲名ではありません。
ただ、こう命名したくなるような歌に出会いました。
 … なんて書くと、「何を今頃騒いでいるの?」と、熱烈なaikoファンや井口ファンに叱られそう。だってこれはちょうど一年ほど前に話題になったミクチャで、当時は結構バズりましたものね。
でも、アラカンおばさんの特権の一つは「開き直っていい」こと(⁉)
今さらですが紹介してしまいます。お許しあれ!

この素敵なコラボレーションは、King Gnuのボーカル・キーボード担当・井口理(さとる)さんがパーソナリティを務めていた『King Gnu井口理のオールナイトニッポン0』のラジオ番組にaikoさんがゲスト出演をした時のことでした。
そもそも、井口さんのaikoさん好きは以前の番組でも紹介されており、この日も冒頭から “aiko LOVE”が炸裂。
バレンタインデーに合わせて手作りシュークリームを渡したり、喜んで食べているaikoさんの姿を見て感涙したり。当時27歳だった井口さんが年上のaikoさんに尽くす様子には、リスナーもキュンキュン。
一方、40歳台とは思えないほど可愛らしいけど実はデビュー歴20年以上のベテランaikoさんが、深夜ラジオだから許される妄想・暴走トークをあの関西弁で軽妙にいなしながら、思いっきり楽しんでいるのも手を取るように分かります。
今を時めく(一説ではイケメンな)年下男性アーティストが、演技半分かもしれないけど、「好きだ―!」って公共放送で叫んでくれたら、そりゃあルンルンしますよね。
いいな~

 … あっ、すみません。音楽の話でした …

こんな熱々な雰囲気の中、井口さんが満を持して、aikoさんのために『カブトムシ』を歌いました。それも、カラオケやアカペラではなく、aikoさんの音源に合わせたデュエットを。
もう有名な話ですが、井口さんは芸大の声楽科(テノール)出身。King Gnu『白日』の「時には~♬」のシルキーハイトーンボイスですから、aikoさんの曲も変調せずに女性の源キーのまま歌います。
あくまでも寄り添うように、優しく、やわらかく。
これだけでも素敵なのに、聴いていたaikoさんまでがハンドマイクを持って一緒に歌い出します。
つまり、「aiko(生)x井口(生)xaiko(音源)」の贅沢な『カブトムシ』に変身!

そして極めつけは、サビで奏でられた井口さんのオリジナルなハモリ。
単純な「上3度」などではなく、aikoさんの特徴ある音がぶつかる和音や息遣いを活かした超絶おしゃれなハモリは、最高に心地よい『カブトムシ』に!
後に本人が「メチャメチャ考えた」と言っていましたが、いかに井口さんがこの曲を聴きこんで、かつ歌い込んで作ったかがわかる「絶品」に仕上がっているのです。
こんな状況ですから、最初は少々照れながら歌っていたaikoさんも、井口さんの本気を感じ取ったのか、大サビの時点ではエンターテイナーとしての炎が爆発。ツアーの最中で「生歌は控えろ」と言われていたかもしれないけど、そんなのお構いなしに彼女らしく全身全力で歌い上げます。
おまけにラジオブースの外では、担当以外の人たちも集まり、スタンディングオベーション状態に。
およそ深夜3時台の即興イベントとは思えない、完成度の高いミニライブがここに実現したのでした。
周囲の人も巻き込んでのこの熱量、たまらんな~

私はこのYouTube動画を昨年のコロナ自粛期間中に見つけ、何度も繰り返し再生してしまいました。
歌の出来栄えや二人の歌唱力の高さに感嘆したのは言うまでもありません。
でもそれだけでは無く、ライブでしか味わえない特別な音楽に改めて感激したのです。(ありきたりな表現でごめんなさい)
King Gnuの井口さんは「いかれたキャラ」で知られていますが、この一曲のために周到に準備してきたことは明白。そこには、シンガーソングライターとしてのaikoさんに対するリスペクトがあふれ出ていました。
一方のaikoさんも、最初は番組のノリだったかもしれないけど、途中から明らかにギアが変わる。ライブでしかありえない化学反応が起きて、あの奇跡を生んだのでしょう。
「アフターコロナ」の時代は、生活様式がいろいろ変化すると言われています。
でも、観客も巻き込むことで新しいものが生まれる音楽や舞台演劇やスポーツなどのライブ・エンターテインメントは廃れてはいけない。人間をより豊かに、よりクリエイティブにするためには必要なもののはず。
『ライブに気持ちよく行かれる世の中に早く戻って欲しい!!』との、切なる願いを改めて引き出してくれた一曲でした。

あれから1年以上たったのに、コロナの状況に劇的な改善は見られず。
日本は、7月のオリンピックまでに普通の生活に戻れるのかしら、とあらためて心配になってしまいます。
自粛するしか手は無いのでしょうか。

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