「アラカン」~お楽しみはこれから volume5

『東南アジアを語ってみる』

“No Durian allowed (ドリアン禁止)”
このステッカーに遭遇したのは、バンコク出張のとき。長期滞在型ホテルに泊まった際に部屋の冷蔵庫扉に貼ってありました。
ご存知の方も多いでしょうが、ドリアンは東南アジアが原産地の果物です。甘くて栄養価も高いのですが、慣れない人には匂いが独特で、「玉ねぎの腐敗臭または都市ガスのような強烈な匂い(ウィキペディアより)」がするとか。
現地の人にとっては好物でも、長期滞在している東南アジア外の人には耐えられない匂いなのかもしれませんね。

…なんて偉そうに書きましたが、私はこれまで欧米に偏った海外体験しかしておらず、東南アジアを含むアジア全般とはあまり縁がありませんでした。ただ、今年からは出張で東南アジアに行く機会が増え、新鮮な気持ちで毎回「びっくり」して帰ってきています。

まず真っ先に感じるのが、いかに自分が東南アジアに関して無知であるか、というお恥ずかしい事実。
もちろん、出張前には俄か勉強をします。でも、そもそもの地政学・歴史的な背景をわかっていないので、直近のニュースを追ったくらいでは本質的なことは理解できていません。なので、現地で説明を聞くたびに「へぇ~」が飛び出してしまい、無知をさらけ出さないようにするのに必死です。
それぞれの国が隣接諸国と複雑に絡み合った長い歴史を持つこの地域は、アジアの東側にある島国日本から見ると、同じ「アジア」という言葉では語りつくせない深みがあります。この辺りはもう少し勉強してから、またじっくり語ってみたいです。

今回はもっと軽いトピックで、『食』の話。これは、私のような食いしん坊にとっては、新しい土地へ行った時の大きな楽しみのひとつです。
本来なら、街を歩き回ってお店を見つけて飛び込んでみる、というのが旅慣れた人の楽しみ方なのでしょう。ただ、出張中だと時間的余裕が無いし、お食事も仕事の一部なので、現地の方がお店を選定してくれることが多い。そうなると、相手は気を使って現地の日本食や高い洋食を指定してくれることが多々あります。東南アジアの日本食は案外美味しいのでこれ自体には文句ないのですが、貧乏性の私は「せっかく○○国に来たのだから、地元のお食事を…!」と思ってしまいます。
そこで失礼にならないように、現地の友達・仕事仲間には事前に「“超”が付くゲテモノ・辛味・酸味以外なら、何でもOKよ」と伝えるようにしました。その甲斐あってか、「何でも食べる食いしん坊」とのレッテルを貼られてしまいましたが、現地のお食事や食材を食べる機会が増えたたような気がします。
冒頭に紹介したドリアンも、私は美味しくいただきましたよ!
(ただ、あのステッカーの本当の意味は分かっていないかも。)

と、かなり東南アジアの食に自信をもっていたのですが、今回の出張では、とうとう白旗を上げてしまう食材に遭遇してしまいました。
それは、カンボジアの毒蜘蛛(タランチュラ)の素揚げ!!

これには、ちょっとした背景があります。
カンボジア人の担当者が日本に来たときに「寿司が食べたい」と言ったので、仕事のお食事会を抜け出して、何人かで近くの回転ずしへと行きました。この際、何の悪気もなく「納豆巻き」を頼んで食べさせたのですが、どうやらこれが苦痛だったらしい。
カンボジア人の彼は「腐った匂いがする」とうめいていましたが、私たち関東人は納豆を臭いと思ったことが無いので「カンボジアには、もっと腐敗臭のきつい食べ物あるじゃん!」とあまり同情もせずに食べさせてしまったのです。

このリベンジだったのでしょうか。
今回我々がプノンペンに行ったときに連れて行かれたのが、上述した「毒蜘蛛の素揚げ」を出す店だったのです。

いや~、正直参った参った。
これまで、カエルや蛇や熊の左手は挑戦できました。
ワニの丸焼きも、鼻をつまんで目を閉じて口にすることはできました。
でも、どうしても毒蜘蛛には手を出せなかった!
だって、形そのままなんですよ!
日本ではなかなかお目にかからないくらい、デカい蜘蛛なんですよ!
足の毛がそのままついているんですよ!
カリカリに揚げてある、と言われたって、今にも動き出しそうな毒蜘蛛を口に入れるガッツは私には無い!
おまけに、毒がとってあるのかどうか、ちゃんと説明してくれないのだもの…
団長としての責任を食事会でこれまでしっかり(⁉)と果たしてきた私も、さすがにこれは涙目になりながら、勘弁してもらいました。
同時に「何でも挑戦する」看板も、しばらく降ろして静かにすることに…

もちろんこの時のエピソードは、笑い話として仲間内では語り継がれています。
また、他のカンボジア人の仲間にこの話をしたら、「蜘蛛を食べる習慣なんて、カンボジアの✕✕地方だけの話。我々だって絶対食べない“超”ゲテモノの部類だよ。心配するな」と慰められ、少し気分は晴れました。

とは言え、やはり東南アジアは侮れない。
分からないことだらけで、まだまだ楽しめそうです!
今度は、仕事を離れて行ってみたいわ~

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