「アラカン」~お楽しみはこれから volume30

『詐欺電』

家で仕事をしていた平日の午後、珍しく固定電話が鳴りました。
何かのセールスかと思いながら受話器を取ると、女性の泣いている(ような?)か細い声が聞こえてきました。
私:「もしもし、どちら様ですか?」
受話器より:「(消え入るような声で)ムニャムニャです…」
私:「どなた?」
受話器より:「(消え入るような声で)ムニャムニャKです…」
私:「えっ、えっ、Kさん?」
受話器より:「(いよいよ泣きが入った声で)はい、Kです…」

今どき個人名で固定電話にかけてくるのは家族くらいしかいません。そうなるとKで思い当たるのは、私の妹の嫁ぎ先の苗字ぐらい。
妹は私に苗字なんて名乗ったかしら?と疑念を抱きながらも、相手が泣いて辛そうだったので会話を続けました。
私:「Kさんって、どちらのKさん?」
受話器より:「(消え入るような声で)Kです」
私:「そう言われても、どちらのKさん?」
受話器より:「(消え入るような声で)Kです」
さすがに私もイライラしてきました。
私:「(強い口調で)だ・か・ら・ど・ち・ら・の・K・な・の?」
受話器より:「(はっきりした声で)間違えました!<ガシャン!!>」

明らかに詐欺の電話だったな、と思いながらも、念のために姉妹のLINE に「今、私に泣きながら電話かけてきた?」と確認を。
直ぐに「旦那がいたずら電話したのかな~(笑)」とすっとぼけた返事があったので笑い話に終わりましたが、こんな詐欺電もあるのだと気になってしまいました。

なので、老人二人で生活している親の所に行った時に、「気をつけてよ!」と詐欺電の話をしたら、「あら~、そんなことしょっちゅうよ!」と逆に切り返されてしまい、これまたびっくり。
例えば母のところには、なぜか母の名前を把握している○○デパートお客様係と名乗る人から「貴方名義の○○デパート・クレジットカードが多額使われているので確認を取りたい」との電話が。
母はそのデパートのカードを持っていなかったので問題なく切り抜けましたが、もし頻繁に使っている△△デパートだったら「悩んだかもね~」。
私の時に比べ個人を確実に狙った手口に唖然とすると同時に恐ろしさを感じてしまいました。

驚いている私をしり目に父も経験談を披露。
父の所には、地元の✕✕警察署の警官と名乗る人から「大規模な詐欺グループを摘発したら、貴方名義と思われる銀行カードや通帳が出てきた。彼らの罪を証明したいので、今、貴方の手元にある銀行カードや通帳と照合したい。」というかなり手の込んだ内容の電話だったそうです。
父は咄嗟にすっとぼけて、「いや~、うちは全てのお金を妻が管理しているのでね。僕名義の銀行関係書類は全部金庫に入っているのですよ」とやり取りしたらしい。
その後、やっとの思いでその電話を切ってすぐに✕✕警察署に電話を入れたら、「残念ながら最近は大規模な詐欺グループを摘発できていません。明らかに詐欺電でしたね。ご報告ありがとうございます」とのことだったとか。
笑い話で終わらせるには、あまりにも恐ろしい話ですよね。

こんな時期に暗い話を書くのは気が引けたのですが、今朝の新聞に「✕✕警察署管内の本年の特殊詐欺被害33件、被害金額約4530万円」との記事をたまたま見つけてしまい、上記の会話を思い出したのです。
自分の親がその「1件」になっていたかもしれない、と思うと背筋が凍る思い。
コロナだの猛暑だの熱中症だの人々が苦しんでいる中で、人の弱みに漬け込む詐欺電は、本当に許せない気持ちでいっぱいです。

個人情報は個人でしっかり守らないといけない、とわかってはいるのですが、でも今の世の中、完全なサイロの中で生活するのは不可能であることも確か。
そんな中、どんどん巧妙になっていく詐欺行為に対抗する術はあるでしょうか。
今朝の記事を見ても、警察署からは、「個人個人が『詐欺被害にあわないように日ごろからの心構えを持つことが大事』」という受動的予防策ばかりが論じられているような気がして少々不甲斐なさを感じてしまいました。
例えば、現在のコロナ対策に関して、「三密を避けましょう!」と国民側の行動抑制ばかりを求めている国・行政に対する不満に似たような感覚でしょうか。
警察が本気で犯人摘発をしたいのなら、犯人特定につながるための技術に対する国の投資や、個人情報が市場で売買された場合の罰則規定をもっと厳罰化するなどの積極的な対抗措置を国に求めていくべきではないのかしら。
あっ、これもコロナ対策に関しての不満に似ている…

こんなに暑いと(普段以上に)思考能力が低下して同じところをぐるぐる回ってしまうのかも。
今日はこの辺りやめておきます。
皆様、どうぞこの暑さをご無事に乗り切ってください。

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