「アラカン」~お楽しみはこれから volume29

【音楽編②】『映画音楽の巨匠:John Williams』

先日、エンニオ・モリコーネ氏の訃報記事を目にしました。彼は「イタリア映画音楽、黄金時代の最大のスター」(記事より引用)とされているそうです。
彼が手掛けた作品で私が好きなのは『ニュー・シネマ・パラダイス』。
全体のストーリーはうろ覚えなのですが、映画のテーマ曲を聴くと、ラストシーン(映画リールがカタカタと音を立てて回っている)だけは脳裏に浮かびあがり、今でも自動的に涙腺が崩壊してしまいます。
映画音楽の効果は絶大ですよね。
ここで改めて思うのは、映画音楽は映画の世界観を形成する重大な要素である、という当たり前の事実。
最近では、『君の名は』のためにRadwimpsが手掛けた音楽の数々は、その最高峰かもしれません。

では私にとっての「映画音楽の巨匠」は誰だろう、とつらつら考えてみたところ、月並みですが、ジョン・ウィリアムズ氏(以後JW氏)の名前が真っ先に挙がりました。
彼は特にスピルバーグ監督とタグを組んで数多くの映画音楽を手掛けているので、誰でも一度は観たこと(聴いたこと)があるのでは。
『未知との遭遇』、『スターウォーズ』シリーズ、『ET』、『インディ・ジョーンズ』シリーズ、『ハリーポッター』シリーズなどなど。

「JW氏の音楽ではなく、単に映画に惹かれているのでは?」
と突っ込む方もいらっしゃるでしょう。
確かにその一面もあります。
でも、例えば『スターウォーズ』のオープニングシーン。
フルオーケストラで「ジャーンジャジャジャーン」と管楽器の音楽が鳴り響き、独特な字幕が画面の下から上へと三次元的に流れ始めると、一気にスターウォーズの世界観へと引き込まれる気がしませんか。
壮大な宇宙空間、正義の味方の活躍、これから展開される心躍るスペースアドベンチャー。
そして、字幕が消えかかると同時に音楽も転調して、「これから話が始まるけど、一筋縄ではいかないよ」という予感を醸し出してくれる、少し宙に浮いた感じの残響でのシーンの転換。
たまりませんわ~

BBCによると、映画音楽に期待されている効果は下記の要素が重要なようです。
・映画の世界観・雰囲気・空間や時間の設定
・話を前に進める、場面転換
・登場人物の紹介や説明
・効果音
・シリーズものの世界観や話の継続性を維持
うーん、なるほど。
ダースベーダーのテーマ曲を聴いて、善良な民が出てくることを想像する人なんてほぼいませんよね。
それから『ジョーズ』のサメが襲ってくる予兆の音楽。
2音の繰り返し(オスティナートという音楽技法)でこれから迫りくる危険を表現したことは高く評価されたそうで、アカデミー賞の音楽映画賞を受賞しました。
今でもサメが登場する映画では、オスティナートを多用するようになったとか。
まあ、私は『ジョーズ』以降、サメのパニック映画を見られなくなったので確かめようがありませんが…

JW氏が映画音楽の巨匠であることは、皆が認めるところであり、彼の受賞歴も華々しいものです。
グラミー賞受賞25回、英国アカデミー賞7回、アカデミー賞5回等。
一説によると、アカデミー賞候補に52回選出されたのはウォルト・ディズニー氏に次ぐ多さだとか(Wikipediaから。公式サイトでは未確認)

でもJW氏のすごさは数々の成功した映画音楽を作曲したことだけではなく、長年Boston Pops Orchestra(以後BPO)の常任指揮者を務めたことでもある、と私は思っています。
BPOは日本ではあまり知られていませんが、地元ボストンでは、小澤征爾氏が音楽監督を務めていた名門ボストン交響楽団と人気互角の交響楽団です。
「オーケストラを聞きに来る人の門戸を広げる」との目的から、その名前の通り、堅苦しくないポピュラー音楽を奏でるオーケストラとして1885年に設立されました。メンバーの多くはボストン交響楽団との兼務。なので、演奏者の実力を疑う余地はないでしょう。
JW氏の直前まで約50年間主任指揮者を務めたアーサー・フィードラー氏がすごい人で、この頃は「オーケストラとしてのレコード売り上げ枚数世界一」の記録を樹立していました。
このような偉大な人の後を継いだJW氏はどうなるのだろう、と地元では噂されていましたが、彼は立派にBPOの精神を継承しさらに高めていき、結局1980年から93年までBPOで人気を博し、今でも名誉指揮者として登場するそうです。
ここからもわかるように、彼の音楽性のすごいところは「オーケストラの魅力を曲にしっかり反映できる」ことにあるのだと思います。
そこが映画音楽とのタイアップで、スピルバーグ作品と一緒に開花したのではないでしょうか。

これからもたくさんの映画を観て、数多くの映画音楽を楽しもうと思います。
新しいタイプの映画音楽も出てくるでしょう。
個人的には、前出の『君の名は』のRadwimpsの曲は、映画音楽でありながら映画の世界観を超える音楽のような気がして、注目しているのですが。

一覧へ戻る