「アラカン」~お楽しみはこれから volume22

『海外からのお客様』

私の職場の話ですが、年末はいつも海外からの客人が何故か多い。
どうしてこの忙しい時期に集中するのでしょうか?
日本みたいに「年末の予算消化」があるのかしら、と勝手に推測ししながら昨年もバタバタ対応に追われました。

私の担当はもっぱら東南アジアの要人(『自称』要人も含む…)。
私が東南アジアに出張した際にはいつも現地の方に良くしてもらっているので、私も同じようにしなければ、と張り切りましたが、ホスピタリティとはなかなか大変なものです。
そもそも、客人の日本訪問の理由が千差万別。
例えば、事前に「あれやりたい・これ見たい・この人に会いたい」との要求が激しいタイプの人たち。
忙しい時期だけに人の手配もたいへんで少々ゲンナリしますが、この方たちは仕事として真面目に来日しているのは確か。
なので、私たちも一線級の人たちを揃えてディスカッションに臨むと学ぶものも多く、かなり深い関係を築くことができます。
もちろんこういう場合は、対応した我々側も満足度が高いです。
一方、「日本に何しに来たの?」と突っ込みを入れたくなるようなお偉いさんとそのお付きの人々、というタイプもいました。
初対面の名刺交換が済めばすっかり来日の目的を果たしたような雰囲気で、後は買い物の相談ばかり。対応慣れしているスタッフに聞いてみると、このタイプはどの国にもいらっしゃるようで、こちらが気を揉んでも仕方ないようです。

今回のお客様で一番振り回されたのが、某国の政府高官6人組。
自由なオジサマ達だったな~
スポーツ関連省庁の方で、どうしてもJリーグの試合が見たいと言う。
たまたまシーズン最後のJ1/J2入れ替えプレーオフ戦があったので、伝手を使ってどうにかチケットを入手しました。私も試合が観たかったので一緒に行くことにしたのですが、物事がスムーズに運んだのはここまで。
難題はこの後に控えていました。
例えば、遅刻されると面倒なのでホテルからスタジアムまでは私たちの方で車を手配してあげる、と伝えたのに、宿泊先の連絡が待てど暮らせど届かず。
訪日一週間前に「役所の許可がやっと下りたので、これから航空券・ホテルを手配しま~す!」とのお気楽メールが一通ペロッとくる始末。
何だか嫌な予感がしたので、「羽田空港に到着する飛行機を手配するように。Not NARITA, but HANEDA。」と3回ぐらい連絡したのですが、案の定、「試合日(土曜日)の朝8時にNARITAに到着します」と、人の話を全然聞いていない状態。
おまけに、この連絡をもらったのが試合前日の金曜日の朝!!
そこからわが社のスタッフを拝み倒してどうにか成田ピックアップのバスの手配をしてもらい、土曜日の朝を迎えました。
今年のプレーオフは湘南ベルマーレの平塚スタジアムで午後1時キックオフだったので、普通に考えれば成田空港からでも十分間に合う時間のはずでした。
しかし、バスの運転手さんによると、そもそもバスに乗り込んだのが10時過ぎで、途中でトイレ休憩(コンビニお買い物タイム?)が何度かあったらしい。
なので、到着は確実に遅刻状態でした。
『遅刻の概念が違うから東南アジアの人に怒ってはダメ』と頭ではわかっています。でも、入手困難チケットが7席も空いているのは開催者に申し訳ないな~と、小心者の私は気が気では無くて、内心イライラしてしまいました。
修行が足りませーん(猛省!)
とは言え、天気も試合内容もスタジアムの雰囲気も最高でしたし、そもそもサッカー好きの6人だったのでサッカー談義も大いに盛り上がり、試合が終わった頃は私も機嫌がすっかり直り  …のはずが、これが甘かった…
まずバスが待機している駐車場まで、6人がほぼ交代に迷子になってくれました。
徒歩10分の所に6人そろったのが1時間後と言う始末。
歩いている途中で、チームグッズの買い物や、勝利の雄叫びを上げている湘南サポーターと一緒に踊るのが忙しかったようです。
まあ楽しんでもらっているので良いのですが、「どこ消えたの?僕は全然動いていないのに、君がいなくなるからさー」、とのんびり言われてしまうと、心配して損した、と言う気持ちになってしまいますよね。
バスの運転手さんに頭を下げ下げやっと出発しようと思ったら、今度は、「ホテルを変えたよ。新横浜のを辞めて新宿にしたんだ」と、ニコニコ顔での報告あり!
はあーー!! 今頃言うか!!!
この段階で、私も一緒についてきてくれたわが社のスタッフも、怒りを通り越して疲れがドー。
でも客人を湘南に捨てて帰るわけにはいかないので、とりあえず平塚駅に着けてもらいそこでバスを帰し、湘南新宿ラインで新宿へ連れて行く計画に切り替えました。
大きな荷物を抱えた日本に慣れない海外からの集団を、週末とはいえ混んでいる湘南新宿ラインに乗せて新宿へ連れて行く。
このメンバーですから、スムーズにいくはずがありません。
道中、「トイレどうしても行きたい」事件、「Suicaどうしても欲しい」事件、「飲み物どうしても買いたいけど日本円のコイン無い」事件など細かいドタバタが続き、とどめの「電車乗り遅れてホームに取り残される」事件とつながり…あとは、ご想像にお任せします。
結論から申し上げますと、客人6人は「普段とは違うおもてなし」を受けることができ、大変喜んでくださったようで、帰国してからも頻繁に連絡をくれます。
我々も無事に日本とその当事国との『友好の懸け橋』となることができたのでしょうが、疲労も通常以上だったように思います。

ホスピタリティとは、難しいものであることを改めて感じた年末でした。

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