「アラカン」~お楽しみはこれから volume18

『ラグビーワールドカップ観戦』

「4年に一度じゃない。一生に一度だ。」
この広告に踊らされたわけではありませんが、9月末にラグビーワールドカップを見てきました。
場所は、釜石鵜住居 復興スタジアム。

そもそも、私はラグビーについては詳しくありません。
息子を連れて何度か家族で秩父宮ラグビー場へ行ったことがありますが、生観戦はそれぐらい。なので、今回のワールドカップ(以降W杯)もテレビ観戦で十分かな、と思っていました。
でも大会が近づき、周囲の広告がやたら目に着くようになると、「生観戦・ライブ」好きが頭を擡げてきてしまい、ウズウズ。
そうしたら、たまたま9月末にポッとスケジュールが空く、とういう天からの啓示が降ってきた!
…ということで、ほとんど思い付きで行くことに決め、勘で釜石会場にしました。

もちろん、自分の中では「後付け」で釜石行きを正当化しています。
① 釜石は母の故郷(祖父が新日鉄釜石工場勤務だったのも何かのご縁)
② ラグビー観戦と復興支援を兼ねる(お土産爆買いを正当化)
③ 日本全国12会場のうち、9会場はサッカーもやっているスタジアム。行ったことのない熊谷・花園・釜石から一番行ってみたい釜石を選択。

対戦カードは全く考慮に入れませんでしたが、ラグビー通に言わせると、私が見た「フィジー対ウルグアイ」はまずまずの選択だそうです。
ただ正直なところ、私にとっては試合レベルよりも、ライブでフィジーのWar Cry(NZオールブラックスの「ハカ」が有名)を見るのが楽しみ、というのが本音だったかな。

さて、いざ釜石へ行くことにして、無事に休みとラグビーのチケットをゲット。
ところが、すぐに次の難問が待ち構えていました。
なんと宿が無い!!
もちろん直前まで探さなかった私がいけないのですが、釜石のホテルは満杯で、かろうじて見つけた先も素泊まり一泊5万円以上!! 
流石にそれは辛いので、母のアドバイスをもとに花巻温泉に泊まることに。2時間近くかけて通うことで、宿代+旅費を少しは抑え込むことができました。
スポーツ観戦というよりも「旅」をした感じでしたが、釜石線の始発から終点まで行きも帰りも座れたし、温泉でゆっくりできたし、車中は英・豪・NZ・フィジーの方々と談笑できたし、充実した2時間x2+αでした。

そんなこんなの釜石旅行となりましたが、結論からすると、無理してでも行って本当に良かった!
こんなに心温まる、スポーツを超えるスポーツの大会は体験したことはありません!

そもそも釜石は、三陸海岸に面した漁業と鉄鋼の街。80年代に新日鉄釜石が前人未到のラグビー日本一7連覇を成し遂げたという、伝統ある「ラグビー」の街としての歴史も持っています。
ところが、東日本大震災での津波被害で街は壊滅的な被害に。ここからの復興の足取りは、ここで語り切れるものではありません。
そのような中で、「釜石を再び元気にしたい」という新日鉄釜石ラグビー部OBの人たちを中心に、W杯誘致に動くことに。
さすがに津波の爪痕がまだ色濃く残っている中での誘致活動は苦労も多かったようですが、地道な復興活動を続けながら、被災から4年後に正式な開催地に選ばれました。
昨年には、津波で全壊した小中学校の跡地に「釜石鵜住居復興スタジアム」も建設され、舞台は整ったのです。
このストリーだけでも胸がいっぱいになります。
でもここで終わらないのが、釜石の人たちのラグビーに対する熱い思いやホスピタリティ精神。

W杯当日。
鵜住居の駅に着くと、地元の大漁旗がお出迎え。天高い秋晴れの空に色鮮やかな大漁旗がはためく様はそれだけで美しい絵のようでした。
津波で全てが流されてしまった駅からスタジアムにかけての周辺は、今は整備され、「東日本大震災の記憶や教訓を将来に伝えるとともに、生きることの大切さや素晴らしさを感じられ、憩い親しめる場」となっています。
その一つ「いのちをつなぐ未来館」は震災の怖さを知り、防災について学習できる施設。
ここを見学すると、つい数年前にこのような大災害に見舞われた場所でW杯が行われる事実の重さを痛感できます。(例えば、鵜住居地区の3枚の航空写真、「津波前」・「津波直後」・「現在」。どんな言葉より雄弁に津波の怖さを物語っていました)
でも悲惨さばかりではないのです。
展示の外では、地元の若者たちが、自分たちの体験や将来への前向きな展望を、時には英語を交えながら、堂々と披露してくれていました。
メッセージの最後には必ず、「ここまでの復興は、色々な国の方からの応援・援助で成り立っています。ありがとうございます」のメッセージが込められているのには感心しましたし、すごく心強かったです。
多くの海外の方も感動していましたね。

またメインのスタジアムの雰囲気も最高。
スタグル(スタジアム・グルメの略)も地元の食材満載で美味しかった!
案内役のボランティアさんたちも老弱男女、色々な方がいて、みんな「釜石でラグビーのW杯ができて嬉しい!」と心から喜んでいるよう。
その方たちとハイタッチを繰り返しながらスタンド巡りをしていたら、私も試合前に自然と気分がハイになってしまいました。
…な状態だったので、試合直前、地元小中学生たちが「ありがとうの手紙#Thank you from KAMAISHI」をスタンドから合唱してくれたときには、私の感動は極限に達してしまい、その後の黙とうとブルーインパルスの飛行は涙でかすんでしまいました。

試合も、世界ランク下位のウルグアイ(19位)がフィジー(10位)を僅差で倒すどんでん返し。
ラグビー通の英国人も「exciting game!」と絶賛する、両チームで合計8トライ飛び出す攻防戦で、素人の私が見ていても十分に迫力を感じることができました。
スタンドは満員だし、試合としての盛り上がりも最高な仕上がりだったのでは。

地元の方が「神様も応援してくれた」と呟いていましたが、天気を含めて、釜石の人たちの心意気がこの成功を導いたでしょう。
(余談:私の晴れ女記録も更新中)
釜石の人たちの『魂』に触れた感動的な一日に感謝。

予定通りお土産爆買いも果たし、通常のスポーツ観戦ではありえない「散財」の旅は、本当に心に残る東北秋の旅となったのです。

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