「アラカン」~お楽しみはこれから volume33

【音楽編④】『モーツァルトのオペラ『魔笛』』

私の両親はクラシック音楽好きだったので、コンサートには幼い頃からちょくちょく連れて行ってもらいました。
でもオペラは別扱い。理由は、「大人の社交の場だから」。
確かに海外では、男女着飾ってオペラを観に行くシーンってよく目にしますよね。例えば映画『月の輝く夜に(原題:Moonstruck)』で、主人公の二人が待ち合わせる月夜のメトロポリタン・オペラ座の噴水前のシーン。憧れてしまいます!

でも今では、躊躇の理由がそれだけでは無かったことに気が付きました。
一番大きいのが「オペラが扱っている内容そのもの」かな。
歌舞伎と同じで、有名なクラシックオペラは、複雑な男女関係を敢えてドロドロに取り上げている台本が多い。『蝶々夫人』なんて、主役の蝶々さんは15才という設定ですから、親の説明も慎重になってしまいますよね。
(でも実際の舞台では、15歳よりはるか年上の比較的どっぷり目のソプラノ歌手が演じることが多いので、背徳感は薄らぎます…)

そんな中、モーツァルトの『魔笛』は、私が初めて音楽だけでなくストーリーにも興味が持てたオペラでした。
まずは音楽性。
ど素人的に解説させてもらうと、「モーツァルト流の心地よい旋律とわかりやすいテーマが繰り返され、子供心をくすぐるパン・フルートの音色が物語のメルヘンな世界感を体現。また、一度は聞いたことのある有名なアリアが宝石のように散りばめられていて、歌い手の歌唱力を存分に堪能できるオペラ」となります。
まあ、世界的にも評価されているオペラですから、音楽性の部分は私なぞの評価無しでも信じてもらえるでしょう。

次に「舞台」としてのオペラ。
メルヘンが基調のこの物語は、善人・悪人(途中で入れ替わりますが)や鳥の恰好をした主人公や大蛇が登場したり、RPG並みの火・水の試練があったりと、現代風に表現もできる華やかかつカラフルな舞台作りとなることが一般的です。
オペラ通でなくても、舞台の雰囲気だけで十分に楽しめます。
私が初めて観た『魔笛』は、たまたまシャガールが舞台監督を務めたバージョンだったので、背景画が全てシャガールの画。
「偉大な芸術家は偉大な芸術を愛するのだ!」と小生意気な感動を覚えた記憶があります。
曲と場面さえ選べば、小学生だってのめり込めるオペラでしょう。(ただし、長尺な演目なので、ぶっ通しで観るのはきついかも)

そしてストーリー。
先ほどから「メルヘン」を強調していますが、通説では、物語はフリーメーソンの経典に基づくもので、実はそれぞれの登場人物や行動に深い意味がある、とされています。これは、モーツァルトがフリーメーソンの団員だったという史実からも、どうやら真実のようです。
詳細の解説は残念ながら割愛しますが、ご興味ある方はぜひ調べてみてください。
(蛇足:モーツァルトがフリーメーソン団員であったことを面白く知るには、1985年に江戸川乱歩賞を受賞した森雅裕氏の秀作『モーツァルトは子守歌を歌わない』がおすすめ。ただし、大人の事情で絶版になったので、図書館で探すしかないかも)

オペラは、クラシック音楽の演奏を堪能できると同時に華やかな演出も楽しめる豪華な舞台です。
超高額な外国オペラが来ない今だからこそ、日本人歌手やオペラ楽団を支援する意味を込めて、日本人の日本人によるオペラに足を運んでみませんか。

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