「アラカン」~お楽しみはこれから volume31

【音楽編③】『中島みゆきの失恋ソング』

どんな歌も、聴く人の置かれている状況や心情、そして経験・体験によって心への響き方が変わってきますよね。
もしかしたら、失恋ソングは、特にそれがはっきり分かれるかもしれません。

先日あるテレビ番組を見ていたら、出演者の一人が、「僕は、中島みゆきさんが歌う、どうしようもない未練たらたらの失恋の歌が心の支えだった時代があるんです」と語っていました。
出演者たちは一様に同意していましたが、私はちょっとびっくり。
と言うのも、私はその真逆な理由で中島みゆきさんが歌う失恋歌が好きだったからです。

私が感じる彼女の失恋歌には、「未練はあるけど、強がり言いながら別れてあげる実は潔い女性の姿」が見えます。
その典型が、『悪女』。
https://music.oricon.co.jp/php/lyrics/LyricsDisp.php?music=6112

悪女になるなら月夜はおよしよ ♪♪♪
で始まるサビで、こぼれるほどの未練を歌い上げています。
でもこれは
涙も捨てて 情けも捨てて ♪♪♪
で始まるBメロを実現するための、人に隠れて行う助走でしかないのです。
つまりここに登場する、自称「悪女」は、見栄っ張りで悪女ぶっているけど、実は芯の部分ですごく優しい。気持ちを引きずっている姿を男性に一切見せずに手を引いてあげるので、周囲には「あいつ強いよな」と陰口たたかれているかもしれないけど、敢えて強がりを通す …
これって、いつまでも「俺はA子にフラれた~」とイジイジして同情を集めようとしている男性よりもはるかに潔いし、カッコいい女性なのでは!

これを友人に力説したら、「はいはい、そういう解釈もあるね。でも、中島みゆきさんの失恋ソングの数はかなりあるよ。色々なシチュエーションの失恋を歌えるところが彼女の偉大さなんじゃないの?」と宥められてしまいました。
そこで、改めて冒頭で紹介した番組で出演者が挙げた失恋ソングを聞きなおしてみたら、確かに立派な「ぼろぼろ、ぐしゃぐしゃ」な失恋ソングありました。
(『うらみ・ます』は、どうしようもない怨念の塊で、中島みゆきさんの声を震わせた歌い方に背筋が凍った!)

結局これまで私は、私の琴線に触れた中島みゆきさんの失恋ソングをずっと信奉して、勝手に、「中島みゆきさんは、強がる女性を歌い上げたら天下一品!」とレッテルを張っていただけなのかもしれません。
でも敢えて開き直って言わせてもらうと、歌ってそういうもので良いのですよね。
いろんな人がいろんな好みで歌を聴く。
その時の自分の感情に寄り添ってくれるメロディーや歌詞に身を任せてみる。
それが歌・音楽の偉大なところだ、ということなのでしょう。

因みに、先ほど登場した友人に「あなたの失恋ソングは?」と尋ねたところ、「ユーミンの『冷たい雨』」と即答されました。
そういえば彼女、大学時代に別れた彼氏の家に行ったとき、見覚えのない「赤い靴」が玄関にあったと言っていたような…
(興味ある人は、歌詞を見てみてください!)

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