三度の飯より寿司がすき volume32

『コロナ禍に思うこと』

一寸先は闇、とはよく言ったものです。
正月にのんきに「今年の目標は寿司と温泉!」なんて言っていたわたくし。
まさか数か月後に外出することもできない、こんな状況になるとは思いもしませんでした。
温泉旅行なんてもってのほか!ゴールデンウイークだというのに・・・そしてこんなに天気が良いというのに・・・!

少し前まで、普通に出社しておりました。
家を出る前、町内放送が響く。
「外出は、しないでください」と言っている。
それなのに家を出る私。
いろんなことが、めちゃくちゃです。

電車に乗って会社に行って、マスクをしているとはいえ、換気の悪いオフィスで一日働くと感染の確率も高まります。在宅ワークを推奨しつつも、確固たる「成果物」がないことにはテレワーク申請をしてはいけない、という二枚舌のようなルール。
そう、テレワークって、実はかなりの成果を求められるのです。月~金で出社していても、当たり前だけど毎日朝から晩までフルスピードで仕事をこなしているわけじゃないですよね(そういう時もまれにありますが)。ヒマな日もあれば、忙しい日もある、同僚と話をして和やかに過ぎる日もあるわけで。
しかしテレワークというのは、
「本当にお前は家にいる間、一日中PCに向かって仕事を全力でやったんだろうな?」
という疑いのもとに成立しているわけです。(少なくとも私の所属しているところでは)。
「そんなワケあるか~い!」
と言いたくなります。
危険を冒して会社に行けば言われない文句も、在宅となるといちいち干渉されることになるのです。会社として自分が携わっている案件の収入が変わらずにあったとしても、です。
うーん。なんか、おかしい。
とはいえ、会社としては全体の売り上げが減るわけで、やたらとテレワークなんてさせて社員全員に給料満額払ってはいられない、という主張もわからなくはない。非常に悩ましいところです。

というわけで、4月後半からしばらく休業になりました。
それでも、フリーで働いている方や見通しの立たない自営業の方、ましてや解雇された方からしたら、多少でも休業手当が補償されるだけいいじゃないか、といわれるかもしれません。それはその通りだと思います。しかも人の生き死にに関わる仕事をしているわけでもないし、社会のインフラを支えているわけでもない。何を甘ったれたことを、と思われるかもしれません。でもこんなふうに全方位から考えなければと思ってしまうところも含めて、今の世の中の空気は、何か、おかしいって思うのです。それは、東日本大震災直後の空気にも似ているけれどちょっと違う。「人が人と接してはいけない」という初めてのルールに人々は戸惑うとともに、(これが案外、いや相当自分にはきついということがわかりました)命を危険に晒して職務を全うする人を褒めたたえ、感染した人が実は県外に出かけていたなどとわかろうものなら一斉につるし上げる。
テレビやラジオ、YouTubeでさえも、複数人でおしゃべりするコンテンツをあげる際にはわざとらしいくらいの弁明をする。リモートでやっていますよ、私と彼女の間には大きいアクリル板がありますよ、別のスタジオで話していますよ、ここは自宅ですよ・・・などなど。場合によっては、そこにいるのは出演者だけではないはずなのに「このあとスタッフが美味しくいただきました」ってテロップ1枚出しておけばオールOK、みたいな妙な雰囲気(たとえです)。
そう。一億総監視社会みたいになっていることに、ものすごく違和感があるわけです。大人も子供も、独り身も家族持ちも、一様に閉塞感を感じているはずなのに。「みんな我慢しているんだから、お前も我慢しろ!」と、空気が言っている。
人に会いたいし接したいのに、人が人を警戒するという矛盾。
自分が生まれた国で自分が生きている間に戦争が起きたことは幸いまだないけれど、戦前戦中の空気ってこういう感じなのかもしれない。大げさじゃなくて。

いま強く思うのは、人が危険を感じたときにいつでもそこから逃げていい、むしろ安心して逃げられる社会であってほしいということ。自分の生死に関わるときに、自分を犠牲にする必要なんてない。たとえ逃げても、その先できちんと生きていける社会が必要です。税金ってそのために払っているんじゃないの、とも思えてなりません。

ここまで、様々なニュースや、国や自治体の要請、会社の方針、それでもふってくる仕事、今後どうなるかわからない仕事、休業中なのにやらなければいけない雑事、などに振り回されながらふと、思うことがあります。

仕事って、なんだろう。
人生って、なんだろう。

忙しさを理由に蓋をしてきたこれらのことが、パッカーンと扉を開けて今わたくしの目の前に電光掲示板のごとく示されているように感じます。
思ったより人生って短いのかもしれない。
本当にいつ何が起こるかわからない。
日々を忙しく生きている私たちに、ちょっと立ち止まって考える時間をくれたのかもしれない、と思うと、少しだけ前向きになれる気がします。

自分にとって、この先も本当に必要なものはなにか。
この先、誰と、どこに居たいのか。
そして、何をして生きていきたいのか。

それらは大変幸いなことに、私の場合、自分で決めることができます。
陰陽五行の占い師さんも言っていました。すべてを得ようとするなって。
何かを捨てて、何かを選ぶ。
その選択を、そろそろ私もしないといけないな。

とはいえ、まずは健康第一。
いろいろと頭の中では考えながらも。
様々な立場におられるみなみなさま、体調にはくれぐれも気をつけて、決して無理はせず、引き続きご自愛くださいませ。
早くこの事態が終息しますように。

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