三度の飯より寿司がすき volume33

『久々の韓国ドラマ』

あっという間に7月も下旬になってしまいました。
ピークと言われていた4月のコロナ感染者数は日々更新され、東京ではさらに増え続けています。先日ついに300人を超えてしまいました。今こそテレワークを推奨すべきでは?と思うのですが、意に反して休業もなんとなく終わった感じになり、現在週4~5日ほど出社しています。みなさまお元気でいらっしゃいますでしょうか。

1か月半ほどの休業中、何をしていたかな・・・と振り返ってみても、なんだかあまり何もしていなかった気がします。毎日筋トレして8キロ痩せたとか、毎日英語を2時間勉強して字幕なしでもわかるようになったとか、YouTubeはじめました、とか、日々コツコツ型の人々はとても有意義に時間を使っているようでしたが、私は・・・はて?
読書はしていたけど1日1冊とかいうレベルでもないし、ヨガも途中でやらなくなってしまった・・・あ、そうだ。韓国ドラマを見ていたんだった!日々の努力も何も関係ない、全くストイックでもない日々を過ごしていました。

推しができるほど何かにハマることが少ない人生を歩んできた私ですが、このたび「愛の不時着」にハマってしまいました。今現在私は、ヒョンビンというよりもヒョンビン演じるリ・ジョンヒョク推しです。非常に流行っているドラマですので、ご存じの方も多いと思います。
ソウル在住の財閥令嬢で、自身も大企業のトップをつとめる女性、ユン・セリがある日パラグライダーで軍事境界線に不時着。北朝鮮の軍人であるリ・ジョンヒョク(かっこよすぎる!!!)に助けられ、韓国に戻る方法を模索する中お互いに惹かれ合う、というあらすじ。
脱北者の方が制作に参加しているそうで、言葉のイントネーションやセットの再現にも非常にリアリティがあるとか。特に市場のシーンはかなりリアルに作りこんでいて、韓国製のコスメなどが店の奥に隠してあって、言うと出してくれるというのは本当のことのようです。
日本ではネガティブなニュースの題材として取り上げられることが多い北朝鮮ですが、そこで実際に暮らす市井の人々の生活を描いたことが、このドラマがヒットした所以でもあると思います。
人々の連帯や、裏切り、悲喜こもごもが何の偏見もなく描かれているところに好感が持てましたし、何より知らないことがたくさんあって非常に興味深いのです。
質素だけど温かい。リ・ジョンヒョクがユン・セリと部下たち(これがまた全員キャラがたっていて、いい感じなのです)と家でご飯を食べるシーンがたびたび出てくるのですが、これがどれも美味しそう。麺は生地から手作り、ハマグリを庭で直火で焼いたりして、焼酎を飲みながら楽しそうに食事する。もちろんこれが全土の人々の生活ではないと思いますが、現代の北朝鮮の日常生活をこんなふうに描いたドラマって、あまりなかったのではないでしょうか。

15年以上前、初めて韓国に行った時のこと。現地でツアーを申し込み、板門店(38度線/韓国と北朝鮮の軍事境界線)に行ったことがあります。その頃あまり知識のなかった私は、バスの中で韓国人のガイドの女性に質問をしました。

「韓国の人たちは、北朝鮮のことをどう思っているの?」

金正日政権だったその頃の北朝鮮は核実験や弾道ミサイル発射を繰り返しており(今もですが・・・)、また日本では拉致問題に関するニュースが盛んに報道されていたのでネガティブな言葉が出てくると思っていたのですが、彼女は私にこう言いました。

「その質問は、東京の人に、大阪の人をどう思ってる?って聞くのと一緒だよ」

それを聞いた時、自分がいかに狭い世界に生きているのかと恥ずかしくなりました。垂れ流される情報だけを得ていると物事の見方が一面的になってしまうのだな、と。
愛の不時着では、「統一したら」というワードが時々出てきます。北朝鮮を美化しすぎているという批判も目にしますが、国と国の問題だけでなく、その上に成り立つ(あるいは成り立たない)人と人との交流を見事に描いている作品だと思います。そしてなぜこうなったか、という歴史もきちんと知らなければいけない、とも思いました。

時々レビューでも書かれていますが、もう一つ、私が「愛の不時着」にここまで惹かれる理由は、女性として「見ていて嫌な気持ちが全くしない」からだと思います。
使い古された嫁姑問題を安易に持ち出すでもなく、ただ助けを待つだけのヒロインに仕立て上げるでもなく、消費されるだけの女性も、被害者としての女性もいない。とにかく女性差別的な描写が一切ない。これはドラマ制作者のジェンダー観点におけるメディア・リテラシーが相当高いことを意味していると思います。
これは今、世界に通用する作品を作る上でかなり重要で必要な観点だと思うのですが、日本で同じようなTVドラマ(またはTV番組)があるかというと・・・残念ながら思いつきません。

まだ観ていない!という方は騙されたと思ってぜひご覧ください。私にとって「愛の不時着」は、全方位から様々なことを考えさせられるドラマです。
見たらきっとチキンを食べたくなるはず!!(私はなりました、そして食べました。ビールとともに。)
まだもう少し続きそうな家ごもり、素敵な時間をお過ごしください!

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