三度の飯より寿司がすき volume34

『積極的にありがとう』

先日、久々に美容院へ行ってきました。
美容院もそれぞれにコロナ対策をしているようで、スタッフの方々は皆マスクを着用した上にフェイスシールドを装着。暑かろうし、見にくかろう。客は入店時に今となっては見慣れた、おでこにピッとかざす体温計で熱を計られ、もちろんマスク着用も必須。耳にかけるゴムの部分を八の字にしてください、と指示されるのですが、誤ってひっかけたときに外れにくくなるのかな?

また、雑誌類が撤去されておりビニールに包まれたタブレット端末が置かれていました。端末には雑誌アプリが入っていて、ファッション誌や週刊誌などが読めるというもの。お客さんが入れ替わるごとにそのビニールを取り替えているようです。手に取ってスワイプしながらページを捲ってみたのですが、なんか違う。雑誌を読んでいる気が全くしないのです。画面が雑誌より小さいサイズなので、気になる箇所でいちいち拡大と縮小を繰り返すのも面倒くさい。そのまま読み続ける気が起きず、早々に断念。やっぱり私は紙の雑誌が一番いいな、と思うのでした。

いつものカラーをお願いし、頭にひととおり薬剤を塗布されます。美容師のAさんには大学時代からずっと担当してもらっています。しかし学生の頃はお金もなく、1年に1度行けるかな、くらいでした。街で声をかけられてカットモデルをしたこともありますし、違う美容院へ行ってみたり、いろいろ試した時もありますが、結局Aさんが一番良いんですよね。技術力はもちろんですが、相性もあると思います。何も言わずとも私の髪質や好みなどをわかってくれているので楽だし、切りっぱなしで終わり、じゃなくて最後にちゃんと軽めのアレンジもしてくれる。センスも含め、信頼してお任せできるんです。
所属のお店はいくつか変わっていますが、幸いすべて原宿近辺。なので、異動になるたびにAさんにくっついて、美容室を変えてきました。一定の年齢を過ぎたら地元に帰ってしまう人や、結婚や出産を機に仕事を辞めてしまう人など、人生いろいろです。でもAさんは幸いずっと東京で仕事を続けている。これってラッキーなことだと思うんですよね。よく「海外に移住したいな~」とぼんやり考えがちな私ですが、同時に「引っ越し先で美容院どうしよう・・・」といらぬ心配をしています。

アシスタントの女の子がよく喋る子で、初めましてだったのですが「ここに通われてから長いんですか?」と聞かれました。よその人感がないくらいのテンションで話していたからなのか、単に私がおばさんに見えたからなのか・・・。なぜそんなことを聞く?と邪推しながらも「そうですね~だいぶ長いですね」と具体的な年数は言わずに返答してみました。こういう時、「そうですね、もう40年以上通っていますね」などと逆サバ読み発言をしたくなるのですが「あ、そうなんですね~」って普通に返されそうでなかなか言えません。言わなくていいか。美容師という職業は、客とコミュニケーションをとることも仕事の大半を占めていますよね。一日中立ちっぱなしで、週一日しか休みがなくて(さすがに今は違うかな?)休みの日も練習しているイメージがあります。直接的なことは言っていませんが、そんな過酷な職業によくつこうと思ったねえ、などと完全に余計なお世話のおばさん目線で雑談。そこからもいろいろと話をし、シャンプー台へ移動しました。

アシスタントはその都度変わります。シャンプーをするのはアシスタントさんの役目なのでこれまでいろんな人に髪を洗われてきた私ですが、彼女は他の人と少し違いました。なんというか、そう、ものすごく丁寧なのです。
カラー剤を洗い流すところからだいぶ時間をかけていて、めっちゃ丁寧!思ったことをすぐ口に出してしまう癖はアラフォーになってから加速しているのですが、それっていいことだと思うんですよ。良いことって、積極的に口に出した方がいいと思うんです。20代の私だったらきっと、何も言わなかったでしょう。でもアラフォーの私は言います。
「シャンプーめちゃめちゃ丁寧ですね。ありがとう!」
と。すると、彼女は
「ありがとうございます。嬉しいです。その一言で今日一日頑張れます!」
とこれまたまっすぐな受け答えをしてくれたのでした。

いいね!ってSNS上ではあれだけ連打しておきながら、現実世界でひとがひとを褒めている現場にあまり出くわさないのはどういうわけなのでしょう。スーパーや薬局で店員にクレームつけてるおじさんや、駅員に罵声浴びせているおじさんはよく見かけるけど、それじゃあんまり心が貧しすぎやしませんか。

だいぶ前のことですが、出張の日の朝、寝坊して「飛行機に間に合わないかも・・・!」とかなりテンパリながらタクシーを止めたことがあります。運転手の方は私の状況を察してくれ、安全運転を心掛けながら、かつ相当なスピードを出してくれて無事飛行機に間に合った、ということがありました。人によっては、間に合わなかったと思います。
あの時私はその場でお礼は言いましたが、タクシー会社にお礼のメールをしたんだっけ?しなかったんだっけ?と、記憶が曖昧になっております。アラフォーの今なら、確実にタクシー会社にも名指しで一報を入れることでしょう。

褒めた方も褒められた方も嬉しいし、ハッピーしかないですよね。みなさんもぜひ、いいな!ありがとう!と思ったら口に出しましょう。積極的に感謝を述べていきましょう。という運動を一人で密かに勝手に遂行している、司の近況でした。

一覧へ戻る