三度の飯より寿司がすき volume40

『東京オリンピック2020とポーランド』

「TOKYO2020」という旗やロゴや看板を随所で目にするたび、「今年って2021年だよね……?」と確認したくなる、そんな8月でございました。
競技の様子はテレビで見たり見なかったり。オリンピック期間中は競技を見るよりNetflixを見ている時間の方がはるかに長かったと記憶しています。

「復興五輪」という名目を掲げてスタートしたはずの東京オリンピック。
大々的に表沙汰になったという意味で、我々が知りうるレベルでもありとあらゆる問題が浮上しては消えていきました。
ザハ・ハディド案新国立競技場建設計画の白紙撤回、エンブレム盗作疑惑、招致買収疑惑によるJOC竹田恒和元会長辞任、女性演出家MIKIKOさんの排除、女性蔑視発言による森前会長辞任、その後グダグダになった開会式演出問題などなど……。
ことが起こるたび根本に向き合うことなく解決せず蓋をしてきた結果。
この国が抱える数々の問題点を海外に向けて発信することになったと思います。

開催地の暗部を表面化するのが最近のオリンピックの兆候である、というのはよく聞くことですが、オリンピックがきっかけで特定の参加国の株が上がることもあるのだな、とリアルタイムで感じたのは初めてでした。

それは、ポーランドです。

女子200m走に出場するはずだったベラルーシのクリスティナ・ティマノフスカヤ選手が代表チームの運営について不満を公言し、強制帰国させられそうになったところを保護。亡命受け入れを申し出たのがポーランドでした。その後無事に到着し、彼女の夫も合流したそうです。

一方、日本は。

ウガンダの重量挙げのジュリアス・セチトレコ選手が入国後、合宿先から失踪。その後無事発見、保護されましたが、大阪府泉佐野市の担当者は彼を大使館に引き渡してしまいました。
難民に対する知識が何もなかったか、面倒なことが嫌だったか、何も考えず言われるがまま対応したのか推測の域を出ませんが……。その後彼は帰国し、空港で当局に拘束され、拘留されたそうです。
この対応力の違い……!
いずれにしても日本人の人権意識の低さ、無自覚さが露呈した一件だったと思います。

また、ポーランドの女子やり投げで銀メダルを獲得したマリア・アンドレイチェク選手も話題になりました。手術費用が必要な母国の男の子のために自身のメダルをオークションで売却したのです。しかしそれだけでは済まないのがポーランド。地元企業がこれを落札し、後にメダルを選手の元に返却したのです……!素晴らしすぎて泣けてきます。

一方、日本は。

ソフトボール日本代表として金メダルを獲得した後藤希友投手が表敬訪問をした際、名古屋の河村たかし市長はマスクを外し、「愛情の意を込めて」彼女のメダルを噛んだのです……!情けなすぎて泣けてきます。
すごいな、このレベルの差。コロナ禍じゃなくても言語道断ですが、本当に呆れるほど子供じみた行い。これが日本の一市長の姿なのですよ……! 別の元五輪女性選手も、違う人から過去にメダルを噛まれた経験があることをSNSに書き込み、話題になっていました。日本ではあるあるなんだろうな……と思うと震えます。

日本のおじさんのハラスメントに対する意識の低さは言うまでもないですが、今回のオリンピックでは国のプロジェクトに関わる立場にいる方たちの人権意識があまりにも低いことを、全世界に向けて発信する結果となりました。
しかし、それはそれで良かったのかもしれません。
だっていままで、全く問題にもされなかったんだもん。
女性アスリートがメダルを権力おじさんに噛まれても「あははは……」って笑ってすませなければならなかった空気が変わったのだから、それだけでも良しとしよう。
ポーランドには100年かかっても追いつけないかもしれないけど、亀の一歩でも前進したと思おう。そうでも思わないとやってられん!!
SNSがこれだけ発達した現在に開催されたからこそ、いままで見て見ぬふりしていた問題が明るみに出たのだと思います。さすが風の時代!!

ポーランド、私は15年前に1度だけ、アウシュビッツ・ビルケナウ収容所を見学するために行ったことがあります。今回のオリンピックを受けてあらためてまた訪れたいと思いました。コロナが終息したら行きたいところの1つにポーランドが加わりました。今度はワルシャワにも足を延ばしたいです。

パラリンピックも始まりましたね。
引き続きコロナ感染拡大が続いております。
みなさまくれぐれもお気をつけて、お体ご自愛くださいませ。

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