三度の飯より寿司がすき volume26

『バブルと売り手市場の狭間で』

4月に新卒で入ってきた会社の後輩が、5月に2人退職しました。同業他社に行くには経験が浅すぎるので、おそらく全く別の道に進むのでしょう。無理して我慢してやる気もなくして居続けるよりは、そりゃすっぱりと辞めた方がいいとは思います。
すぐに辞めるかどうかなんて、筆記試験と数回の面接で判別するのは困難だと思いますが人材難といわれて久しい昨今、人事担当の役割は非常に重大だと言わざるを得ません。落ちている学生もたくさんいるわけですから。

昨年、勤続1年で辞めていった後輩女性は、きっちりと有給休暇を使い切り、違う業界へ華麗な転身を遂げました。(ちなみに私は勤続10年以上になりますが一度も有休を使い切ったことはありません。)
そんな彼女が去り際に残した言葉は、

「うちら、売り手市場なんで」。

上記の2人も、きっと新たな道を切り開いていくのでしょう。
と、さも理解ある風に平静を装ってみましたが、私はいつも同じことを考えています。

『うぬぬ・・・売り手市場世代・・・ずるい・・・!!!』

先日、来年度新卒募集の会社説明会に参加したのですが、会の終わりにある男子学生からこんな質問が飛び出しました。
「御社の業界はいま斜陽産業と言えると思うのですが、今後の会社の発展について具体的に何かお考えですか?」

この会社を今から受けようとしている学生が・・・なんという上から目線でしょう・・・!(ビフォーアフター風にお読みください)

私が就職活動をしていた頃は氷河期も氷河期、凍えて死ぬかと思うくらいの超・就職難でした。こんな質問をする学生は、きっと瞬時に蹴落とされていたことでしょう。というより、会社説明会でこんな口をきく学生なんて、いなかったのではないでしょうか。
40社も50社もエントリーシートを書き1社も採用されない、なんていうことがザラでした。
「どうせやっても、受からないんでしょう?」
と半ば投げやりに、真面目に就職活動を行っていなかった私ではありますが、でもどうしても入りたい会社が1社だけありました。愛読していた憧れの雑誌社、I社。あの出版社で、わたしは働きたい!
採用情報をどこにも見つけることができなかった私は、電話で直接問い合わせました。今みたいにインターネットなんて便利なものはなかった(あったけどここまで普及していなかった)のです。すると、今年度の新卒採用は無いという返事。
「受からないんでしょう?」じゃなくて、そもそも採用すらしていなかった。私はスタート地点にすら立てなかったのです。

そして時は流れ、出版ではない今の仕事を始めることになりましたが、少し上にいるおじさんたちはバブル期に大量雇用された世代で玉石混交。
「万札振りかざしてタクシーを止めた」「内定懇親会で豪華ディナー」「社員旅行はハワイ」など過去の自慢話をたくさんしていただきましたが、私は常に「あーはいはいそうですかへーすごいですねー」と、心を無にしていました。今思えば仕事の能力は低いのに偉そうな方々もチラホラいたようないないような・・・。
「あなたたちが好き勝手やってきたシワ寄せが我々の世代にきているんですからねっ。」
心の中では常々そう思っておりました。
と、ここにきて売り手市場世代の出現。人手不足による大量の求人、引く手あまた。
そうです。氷河期世代を生き抜き辛酸をなめてきた私(おおげさ?)としては、上の世代にも下の世代にも、多少の恨みを持っています。ええ。

「誰も悪くない。ただ、私が生まれた時代が悪かっただけ。」

と、仏のように悟ってみます。
そう、働くところがあるだけ有難いではないか・・・。
うぬぬ・・・やっぱりうまく悟れませんでした。なんだか納得いかない感じです。
しかしどれだけ卑屈になろうとも、「今時の若い子は・・・」という言葉をネガティブな意味で使わないようにしよう、ということだけ自分に戒めとして課して、これからもこの不公平な社会で生き続けていこうと思います。

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