三度の飯より寿司がすき volume9

『もやもやアトラクション』

大学生の頃、友達10人くらいでとある遊園地に行きました。
絶叫ジェットコースターが有名で、もちろんそれにも乗ったのですが、もうそんなものは比べものにならないほどの、衝撃的なアトラクションがあったのです。
私たちは、ジェットコースターからお化け屋敷まで、とりあえず乗りたいものは大体乗ったよね、という感じで、さあ、次はどうしよう?とワイワイしながらみんなで歩いていました。すると、「あ〜!楽しかった〜〜!」と、わざとらしいほど、今乗っていたアトラクションを絶賛しながら歩いてくる、私たちと同世代くらいの4人組とすれ違いました。彼らが出て来た方向をみると、一見地味な乗り物がありました。乗り物というよりは、家、いや、むしろ箱・・・?ぱっと見、よくわからない不思議な建物が目の前にありました。
そんなに言うなら、入ってみよう、なんか気になるね、ということで、ぞろぞろとその建物の中に入っていく私たち。すると、先客が数人いて、部屋には丸く囲まれた壁以外に何もありませんでした。「??」と思っていると、今入ってきた入り口が、がちゃんと音をたてて閉められました。
アトラクションの進行がよくわからず、
え?え?
と思っていると、何の音楽もアナウンスもないまま、急に床が傾斜しはじめました。予測のできないまさかの動きに、私たちは平衡感覚を失いました。閉じ込められたモルモットのようにあわてふためき、壁にどん、人にどん、とぶつかりながらよろよろとしていると、また床が別の方向に傾くのです。
え・・・?なにこれ・・・?なに?
ふと上を見上げると、人がいました。彼らはわたしたちを見てくすくす、げらげら、指をさしながら笑っているのです。
は・・・?!なんなの・・・?あの人たち!
なんだか心の中にもやもやしたものがこみ上げてきますが、床は容赦なく傾斜を繰り返すので私たちは相も変わらずよたよたオロオロ、壁にどん、人にどん、としています。
しばらくすると傾斜が終わり、床は平行、元通りになりました。
そして入り口の向かい側が開き、どうやら今度はそっちへ進め、ということのようです。
これで終わり・・・??一体なんだったのだろう?
と首を傾げながら出口の方へ進むと、スロープが上に続いていて、さっき我々をあざ笑っていた人たちがいた2階へと出ました。そこからは、下が覗けるようになっているのです。
すると、次の客がまたアトラクションの中に入ってきます。新しい獲物は、さきほどの私たちと同じように、オロオロ、よたよた、壁にぶつかり人にぶつかりを繰り返すのです。
なんなんだこれ!?
・・・すれ違った4人組にやられました。あのわざとらしい絶賛から、この後味の悪いアトラクションは始まっていたのです。
こんなに嫌な気持ちになる乗り物は、後にも先にもここでしか体験したことがありません。私はなんだか、さっき上にいた人たちのようには笑えませんでした。

人間の嫌なところをむき出しにするこのもやもやアトラクション、誰に聞いても「知らない」と言われるのですが、あれは私の夢だったのでしょうか・・・?
インターネットで調べればすぐにわかることかもしれないのですが、なんだか不思議なままにしておきたくて、とりあえずは「知ってる!」という人が出てくるまで、私の記憶にとどめておこうと思います。

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