三度の飯より寿司がすき volume65
『置忘霊(おきわすれい)』
気づいたら9月になっていました。その9月もそろそろ終わりそうです。 まだ少し暑い日が続きますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。猛暑とか酷暑とか地球沸騰化とか、もはやただ暑いだけではない、最高気温を他県と争って「暑いぞ熊谷!」なんて無邪気に言っていられない夏でしたね。疲れの出やすい時期、くれぐれも無理せずにお過ごしください。
さて先日、出張で羽田空港に行く途中、山手線の網棚に荷物を忘れるという失態を犯しま した。常に私のカバンは重いので、今日も重いなあ、と思いながら網棚にリュックを乗せ、そこまで混んではいない車内を見回しながらぼんやりしていたところ、品川に到着し、あわてて下車。エレベーターを横目に見ながらエスカレーターを昇り、本屋を突き抜けて京成線の連絡口改札を抜けるとちょうど羽田行き特急が到着。ANAとJALどちらに乗るかによって羽田空港のちょうどいい出口が正反対(進行方向か、最後方か)になるのにいつもどっちがどっちだかわからなくなる。電車もちょうどよく来たことだし真ん中あたりでいいや、とりあえず乗ろう、と思ったその時。妙に自分の体が軽いことに気づいたのです。
……いやああああぁぁ!!私リュック背負ってないいぃぃぃぃい!……
貴重品と仕事に必要なものだけが入った紙袋だけしか持っていない自分に気づいたので す。瞬間頭がパニックになり、「すすすいません、さっき、あの、山手線に…荷物を、全部、忘れましたぁぁあ」と鬼気迫る表情で伝えると改札を開けてくれた駅員さん。でももう私が乗ってきた電車は次の駅に行っちゃってるわけで。山手線の改札にいる駅員さんに同じことを告げると、「お忘れ物承り所」へ促されました。係員は一名。先客がいたので待たされ、気が気でない感じで後ろをうろうろ。やっと先客の聴取が終わり、日本語になっていない日本語で事情を伝える。
私「山手線に私の荷物が…網棚が…さっき降りたんだけど…羽田空港に…13時の飛行機に乗らなきゃいけないんですぅうぅぅ…。」
係員「あ、そうですか。乗っていた車両は何号車ですか?」
私「そんなのわかるわけないですよねぇ?電車に乗る時わざわざ、よし何号車だ、って確認して乗る人なんて、いませんよねぇ?!」
冷静な質問に急にブチギレるワタクシ。文字にするとさらに酷いな…。この時のワタクシは情緒が不安定すぎて、助けを求めておきながらクレームつけるというモンスターとなっておりました。しかし係員は全く動じない。
係員「降りたところのホームドアに番号が書いてあるのですぐにわかりますよ。今確認してきたらいかがですか?」
え、そうなの…?知らなかったわ。頭から湯気をプスプスさせながら「ホントかよ」と若干の疑念を抱きつつ、司の行動を巻き戻ししてみる。えーと、本屋を逆に突っ切って、エスカレーターで昇ってきたからそこを降りて、そうだ、電車降りた時にエレベーターがあるなあって思ったけどそっちにいかずにエスカレーターの方にまわったのよね。そうそう、となると、ここらへんか…?あらほんと。やだ。書いてあるわ。ここかここ、らへんなはず、ってことは5号車か6号車?あらやだ。簡単に分かっちゃったわ。
現場検証を終え「お忘れ物承り所」に戻り、係員に号車を告げるワタクシ。
それで?次はどうすればいいの?と詰めるワタクシ。私が降りたであろう時間の前後の山手線列車番号をいくつかメモしてもらう。列車番号とは電車の正面左上あたりに書いてあるらしい。ワタクシ、知らなかったわ。
「1周すればまた戻ってくるから、降りたところで待ってたら?わりと荷物そのままで戻ってきますよ。」となんとも呑気な係員。
貴重品が入ってないとはいえ家の鍵入ってるし盗まれたらどうすんのようううぅ!
既に予定の飛行機に乗るのを諦め、搭乗便の変更を済ませていたため若干冷静な司に戻っていましたが、何もせず待っているのももどかしい。途中で確認できないのか聞いてみると、近いところでは高田馬場駅でいったん捜索できるという。じゃあそうしてください!ということでしばし待機。係員がこの電車じゃないか?と推測した(仮に列車Aとする)Aが高田馬場駅につくまであと15分だという。それまでまたうろうろ。喉が渇ききっていたためお茶を買いに行き、「お忘れ物承り所」に戻ってくる。予定時間ぴったりに、「どうでしたか!?」と聞くと「なかったですねー」ないんかい!うぬぬ…!
つとめて冷静な係員。「あと10分もすればAの次に走っていた列車Bが到着しますんで、 降りたところで待っていればよいのでは?そしてもしなければ次の駅で降りて、同じことを繰り返せばその次の列車C、Dも確認できますよ。」とのこと。
…なるほど~。あったまいい~!
早速私は最初に降りたであろう山手線内回りのホームに戻り、次の電車を待つ。電車に乗り込み、前後2両の確認をし、収穫なし。品川の次の高輪ゲートウェイ駅で下車。このアホみたいな名前の駅、初めて降り立った!!としばし感動。すぐに次の電車が来たため、また同じ場所から乗車。すると!!まぎれもないワタクシの黒くて重いリュックサックが誰に動かされることもなくそのままの場所にありました!!ヤッタ~!!!
品川駅に戻り係員にお礼を言おうとするも休憩に入っており不在。別の係員に伝達を頼みめでたく羽田空港に向かった司なのでした。ツカレタ~!!!
私、これまで電車内に何かを置き忘れること3度。母からもらったお気に入りの傘、土産の入った鞄、そして今回の出張用の着替えや鍵が全部入ったリュックサック。いずれも、手元に戻ってきてるんですね。改札外で落とした財布も届けられたりして(現金はなくなってましたが)。それ以外にも様々な場所で様々なものをなくしているのですが、ほぼ手元に戻ってくるという人生を歩んでまいりました。
他人様も同じかと思っていたのですが、この話をした数名に「そんな経験は普通ほぼない」と一蹴されてびっくりしました。
人ってそんなに日常的に何かを落としたり忘れたりしないものなんだ、ってこの年でマジで初めて知りましたの。
もうこういう人間だと思って諦めてはいますが、改善の余地があるとしたら、網棚に物を置かないことだと言われましたので、それ以来重いリュックを背負い続けている司でございます。
みなさまも、くれぐれも網棚にはお気をつけください。