三度の飯より寿司がすき volume4

『女の子の夢』

「将来の夢は?」
社会的な生活を営むようになる、ごく小さいうちから、たびたびされる質問。
「夢=職業」とするならば、小さな子供にとって知っている職業は限られています。
幼稚園児だったら、商店街のお店の人や、幼稚園の先生、両親の職業、電車やバスの運転手、パイロット、それからテレビに出ている人(歌手や芸人、スポーツ選手)くらいでしょうか。
職業以外の夢だったら、同じくテレビに出てはいるけれど実在しないもの(戦隊ヒーロー、アニメの主人公)とか。

幼稚園児に、「将来何になりたい?」
と聞いたところで、その答えを実現している人って、世の中にどのくらいいるのだろうか、という素朴な疑問はひとまず置いておいて。

私が通っていた幼稚園では、毎月園児のお誕生会と称した簡単な行事(今月誕生日をむかえるお友達、前に出てきて。と言われて先生からハンカチをもらい、みんなに拍手されるだけの会)が開かれていました。
自分の誕生月の月初めに、みんなの前に引っ張り出されるのですが、必ず最後にお決まりで、「○○ちゃんが将来なりたいものは何?」と先生に質問されるのです。
その頃の私に明確な将来のビジョンなどあるはずもなく。
順番がまわってきて、何も考えていなくて、咄嗟に「お花屋さん」と答えたのを覚えています。なんとなく大人が喜びそう(がっかりしたり、不安になったりはしなそう)だし。
私の発表の後に「ケーキ屋さん」と答えている女の子がいて、しまった、私もケーキの方がいいな、、、ケーキ屋さんって言えばよかった、、、って思ったくらい、それは適当な回答でした。ただ、適当だけれども、ケーキ屋さんなら毎日ケーキが食べられるし(安直)、お花屋さんだったらきれいなお花に囲まれて暮らせる(実はかなりの重労働)、とかいろいろメリットはあるので、積極的に今後そのための勉強や努力をしていくぞ!というものでもありませんでしたが、全く興味のない職業というわけでもなかったのです。
子供たちが自分の夢を語るなか、私にはまったく、これっぽっちも、その魅力を感じることのできないものがありました。
一定数の女の子の答えがそれです。

「お嫁さん」

・・・。

素敵なウェディングドレスが着られるのはいいなあ、と思うけど、それって結婚式当日だけだし・・・。将来の夢がお嫁さん、ってどういうこと・・・?

私にとってこの答えは意味不明でした。
もちろん、将来大好きな彼と結婚して子供を産んで、夫と子供のために日々世話をする・・・それはひとつの素敵な人生だと思います。
しかし、5歳の女の子がそこまで考えているとは思えません。
まわりの大人たちの刷り込みや、それこそテレビや絵本などで見たイメージなのでしょう。
最近こういうことを言う子供は、多くはないと思います。私が幼稚園児だったのは30年以上前のことなので、当時はまだこういうことを言う環境が普通にあって、そしてそれを好ましいこととして捉える大人が多かったのです。
大人がそう考えていれば、当然子供にも影響します。

そこでですが。

将来の夢を
「お婿さん」
って公言する男の子って、います?いました?

・・・いないですよね。
少なくとも私は、いまだかつて会ったことがないです。

「将来の夢はお嫁さん」
と女の子が言うと、まわりの大人は安堵する。少なくとも、この子はちょっと変わっている、将来が不安だ、とは思わないでしょう。

では逆に、男の子が
「将来の夢はお婿さん」
と言ったら、どうでしょう?おそらく大半の親は、この子は将来大丈夫だろうか、ちゃんと自立して生きていけるのだろうか?と不安に思うのではないでしょうか。
この性差による許容の違い、これは後の女の子と男の子の将来の選択肢を狭めることにならないだろうか?と疑問に思うのです。

お嫁さん。
読んで字のごとく、女が他人の家に入る、内にこもる。
奥さん。
という言葉の通り、家の奥にいる人、男が前で女が奥という、自分という主体性を消した存在。
日本語のこの言葉群にも、性別の役割や社会の押しつけが読み取れ、幼少期からなんとなく違和感を覚えていました。その違和感は、子供たちが「将来の夢はお嫁さん」なんて言わなくなった今でも、変わっていません。もうちょっと今の時代に合った新しい日本語、誰か考えてくれませんかね。

いくつかある夢の中のひとつならまだしも、たったひとつの夢が「お嫁さん」だなんて、と昔から不思議に思っていました。
(特に今の時代なら、それってリスクしかないのでは・・・)
女だからと言って生きて行く為にお金を稼ぎ自立する術を男に全部まかせて内にこもってしまったら、いざという時(夫が亡くなったり、働けなくなった時)に困るのは自分なのになあ、と思ってしまうのです。
他人とともに生きて行くときに、自分自身がそれぞれ(女も男も)精神的にも金銭的にも自立していた方が、将来何があっても安心できると思うのですが・・・。
他人に自分の人生を盲目的に預けてしまうのって、怖くないですか。

いろいろと書きましたが、もし今、将来の夢を聞かれたらなんて答えるかな・・・。

2つ挙げたいと思います。
1つは物書きとしてどこででも生きていけるようになること。
もう1つは、「お嫁さん」ではなく、一生添い遂げられるパートナーを見つけてともに生きていくこと。

実現できる日はいつになるかしら。

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