三度の飯より寿司がすき volume2

『すっぴん信仰』

少女漫画で見た双子の女の子が鏡台に向かって化粧水やらクリームやらを寝る前にぬりたくっているシーンに憧れて、初めてお小遣いで化粧品を買いました。14歳の私には、全く必要のなかった保湿化粧水。
だって、お肌つるつるだったもの。
買ってはみたものの、必要に迫られているわけでもなく、ただの真似事なので長続きするはずもありません。デパートの1階で背伸びして購入したその化粧瓶は中身が入ったまま、ただのインテリア(置物)になりました。
その後も、化粧のケの字もなく、肌のお手入れなど全くせずともお肌つるピカだった10代・・・!(いまでは考えられません・・・!)
化粧を始めるタイミングがよくわからなかったので、とりあえず成人してからでいいかなと思い、大学に入ってからも、20歳まではすっぴんで過ごしていました。

卒業してしばらく経った頃、大学時代の後輩(女)と飲みに行って衝撃の言葉を聞かされました。
サークルの後輩(男)たちが、「司さんて化粧濃いよな~」と噂していたというのです。わりときちんと化粧をしている女友達と一緒にいることが多かったのですが、私の方が厚化粧だと思われていたらしいのです。
「ハァ?私その頃、化粧全然してなかったけど!?」
「知ってますよ!私もそう言いましたよ!男ってなんもわかってないんすよ!」
と憤慨しながら後輩女子。
これには私もびっくりしました。
何をどう見たらそうなるのでしょうか。
すっぴんなのに厚化粧と間違えること自体もおかしいのですが、ここで私が違和感を感じた点がもうひとつあります。
その後輩(男)たちの物言いには、「厚化粧は良くない」という考え方のベースがあったことです。化粧してるかしてないかもわかってなかったくせに・・・。

海外で女優業をしている友人がいるのですが、SNSにアップされる写真を見ると、オンでもオフでも、とにかく化粧が濃い。それはなぜかと訊ねると、日本では素顔と見紛うナチュラルメイクが良しとされるけれど、彼女のいる国では未熟、子供っぽい、とみなされてしまうそう。
きっちり引いたアイラインにカラーアイシャドウ、赤い口紅は「大人の女性」の象徴なのです。
ああ、だからか。
合点がいきました。
日本では、全くの逆なのです。

もちろん人にもよりますが、日本では一般的に「子供っぽい女性」が好まれる傾向にあると思います。
20歳を過ぎているのにセーラー服を着て歌ったり、頭の悪い(ように見えている、見せている)若い女性がバラエティ番組で重宝されたり。
この「子供っぽさ」には、大人から見る子供と同じように、「自分よりも下のもの」「制しやすいもの」という意識が働いていることを、日本の男性はもはや無意識すぎて気づいていないのかもしれません。
そういう深層心理が透けてみえるからこそ、「素顔が一番だよ!」なんて言う男性は、なんだか警戒してしまうのです。

「ナチュラルメイク」でググると、「すっぴんみたいで好印象」「愛されメイク」「モテ度急上昇!」という私の苦手なワードがたくさん出てきます。
この受け身感・・・!
言っときますけど、ナチュラルに見える化粧って、かなり濃いですからね。
この偽装ナチュラル&受け身感!!
様々に入り組んだこの感じ、、そして日本で顕著に見られる「すっぴん信仰」、どうにも気持ちが悪いと思うのは私だけでしょうか。
そして日本で「大人の女性」が市民権を得るのはいつになるのでしょうか?

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