随に(まにま-に)volume25

『はじめましてと複数の肩書き』

今年は、出会いが出会いを導く、出会いの素敵な連鎖反応がおきた京都でのお盆でした。

こんなにも、フラットな状態での「はじめまして」が連日行われたのはとてもとても久しぶりでした。

先日、私と同じく一年ほど前にフランスから帰国した友人が結婚を機に京都に住んでいることを知り、お茶をした際に、「日本ってフラットな状態で新しく知り合いが増える機会ないよね」と言っていました。
フランスにいると、毎週のようにどこかで行われるヴェルニサージュ(主にギャラリーなどで行われる新しい展示のオープニングパーティ)や友人宅で行われる週末のパーティーなどで、頻繁に“新たな知り合い”が増える機会があります。あるいは、カフェなどで横に座った人やそこの店員と、ひょんなことから会話が弾んだりもあります。ナンパなこともありますが、そうでないことも半分くらい。
彼女の発言は、知り合いがあまりいない京都での新生活の中での発見でもあったようですが、確かに私自身も、日本でなかなかそういう機会もなく、なんとなく感じていた物たりなさは、これなのかも !と妙に納得しました。

そんな日本での生活の中でおとずれた、「はじめまして」の連続。その中で、改めて私って誰なんだろうと、何になるんだろうが自分の中で芽生えたので、改めて今回は書きたいと思います。

このエッセイを連載することになった当初は、一番はじめの自己紹介文で書いたように、アートを介して人と人をつなぐ職業につきたい、“学生”でした。
この頃から生計も自分で立てていましたし、キュレーターや通訳をしていて生活は大きく変わったわけではないのですが、なんだかんだ話し相手が「あぁ、学生さんなのね」とすとんと落ち着いてくれる肩書きがありました。

ただ、今はそこから学生の肩書きが外れ、「フリーランス」で働いています。
なんか、カタカナ言葉を使うと妙に気取っている(ように取られる)気がして嫌なのですが、「個人営業事業主」と答えると2回に1回は噛んでしまって上手く言えない。。。

みんなそういうと、「かっこいいー !」とか「すごいね !」と言ってくれますが、そう称賛されるようなことは全くなくて、ただ純粋に過去に手元にあった仕事や希望を続行あるいは追い求めようとしたら、結果フリーランスをするしかなかっただけなのです。

親はその選択をとめはしなかったけれど、心配しているだろうし、その点では保険や安定したお給料に、そして場所によってはボーナスがあるお会社の「会社員」の方々の方が、ずっとずっと「親孝行でかっこいい」と心から思います。

先日は、嘱託社員として雇ってくれている企業のオフィスで、(私はもらえない)夏のボーナスについて話をしていて、正直いいなぁなんて思いました。羨んでても仕方ないので、自分で自分にボーナス与えられるようになってやろう、くそぅ。と思いながら聞いていました。

それは、さておきながらも称賛に続けてみなさん、必ず「何しているの ?」と。
答えられる内容としてはざっとこんな感じ。
「キュレーション」・・・芸術展示を専門に、主に日本の作家さんをフランスで発表、またはその逆。
「ディレクション」・・・上記芸術展示ほか、日本の伝統工芸の技術を用いた新商品開発およびその海外販路開拓(主にフランス)。
「ライティング」・・・このエッセイほか、写真などの評論文など。(以前、ちらっと書いた作詞家願望はまだ願望のまま涙)
「通訳・翻訳」・・・見本市やアートフェア会場の日仏通訳。作家さんのステートメント等の翻訳などなど。

あと、つい最近パリと福岡を行き来する友人と話が盛り上がり、アパレルブランド立ち上げの可能性も….
そうなったら「プロデューサー」あるいは「デザイナー」なんて肩書きも出てくるのかな、なんて。

今のところライティングを除けば、「日本とフランスを繋ぐ仕事をしています」というのが芯のところになるかと思います。(ただ、ライティングを除けばと書いたけど、実はここで起こる苦労や、培われる能力とか、書いて初めて気づくことがあるという点では、ライティングは他の肩書きに繋がる一番大事な部分でもある。)

あるいは「ものづくりにまつわる仕事です。」と自分で言うことも。

お互いをあまり知らない状態で、上の全てを話してしまうと何でも屋さんのような印象を持たせてしまうのが怖くて(あと、きっと一人で喋りすぎ笑)、でも「日本とフランスを繋ぐ仕事」という言葉は、相手の表情にクエスチョンマークが浮かぶのを感じます。

仕事相手であれば、そのタイミングで一番相手に有効であろう紹介の仕方が何となくわかるのですが、食事の席などで友人の友人あるいは先輩への「はじめまして」はなかなか難しいなぁとその状況に置かれて初めて思いました。

何でも屋はする気はないけれど、1つの肩書きにとらわれるつもりもなくて、自分の能力を活かせたり伸ばせたりすることは、挑戦していきたいと思います。

ただ、自分している仕事全てを言い表せられる一言があればいいのになぁなんて。

今ちょうど、仕事を紹介するサイトを制作中の中でも、築きたい世界観を完結に言葉にすることの難しさに直面していたところでもあったので、改めて自分と自分の行為、思考、そしてこれからついて考える時間を作ろう、と。

いっそ、新しい単語を作ってしまおうか、なんて。

「はじめまして」で使える、なんかいい言葉ないかなぁ。

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