パリのマダムの・・・ volume96
塩の話 その4 『塩の道』
旧約聖書(モーセ五書)の一つレビ記(律法・掟))の一節、
『全ての捧げ物には塩を入れなければなりません。
塩が足りない捧げ物をしてはいけません。
塩は、神との契約の印です。』
1618年、アルザスに住むAnna Langという女性が、
魔術の罪で生きたまま焼かれてしまった……
なんと罪状は、『塩を使わない』祝宴をしたから!
恐っ!!
多くの信仰や迷信において、
塩は、悪魔や悪霊祓いに使われました。
火と水に塩を使ってする、占いや予言も。
そういえば、カンヌのアパルトマンを買った時、
前の持ち主のユダヤ人のおばあちゃんから、
「玄関の前に塩をおいて、悪霊?!を祓ってから、新生活に入りなさい」
と言われました。
これって、日本の習慣にも似ていて面白い。
とにかく、古今東西、塩は、
「身を清め穢れを祓う力」を持つと言われてきました。
実際、植物も動物も、もちろん人間も、腐敗?! しないために塩を使います。
というわけで、ミイラ作りにも使いました。
もちろん、チーズやバターなど乳製品作りにもなくてはならないものだし、
ガラスを作ったり、陶器などの焼き物、色付などにも使われて、
様々な職人技も生まれました。
大昔から、塩は貴重な必需品だったので、
領主や国が、財源確保のために塩に税金をかける、ということが行われ、
塩の開発も商売も、次第に独占するようになりました。
フランスでは、中世から塩税が導入され、
革命で一時停止されたものの、ナポレオンが復活させた経緯があります。
ところで、サラリー、仏語なら、salaireサレールと言いますが、
ラテン語のsalariumというのが言語で、このsal、salariaが塩の事。
ローマを基点とする、via Salariaサラリア街道というのがあります。
アドリア海に面した現在のPorte d’Ascoliポルトダスコーリ辺りまで、
全長242kmの道です。
この道の建設のために、兵士他、奴隷やキリスト教徒なども動員され
その手当として支給されたのが塩だったのです。
軍を維持する、というのは昔も今も、大変なお金がかかります。
そういう意味では、ローマ帝国が街道を作ってヨーロッパ各地に広がったのも
ある意味、兵士たちの仕事を作る、ということもあったかもしれません。
いずれにせよ、その後、定義は
「塩を買うために兵士に支払われたお給金」となるのですが、
それが、現在定着している言葉、サラリー、というわけです。
蛇足ながら、皆様よくご存知の、soldeソルド(英語のsale)と言う言葉もこの派生語。
女性形で「支払われるべきサラリー」を意味するが、18世紀頃から、男性形で使うと、
口座の収支残高を示す言葉となったのです。
フランス語は面倒臭い……超正確とも言う?!
とにかく、太古の昔から現在まで、
塩の使い道が、どんどん広がり、人間の暮らしも豊かになりました。
私たちは詳細を知らないだけで、塩を工夫した新製品が今尚、次々に生まれています。
塩の道は終わりなき旅路のようなものなのかも。