パリのマダムの・・・

『カンヌ便り』 - 太陽の恵み

実は私、少し前から、パリジェンヌを返上して、cannoiseカノワーズになった。
夫はcannoisカノワ。現在、二人ともに南仏カンヌ在住である。

こういう住民の呼称を、フランス語ではgentiléジャンティレ(英語gentile)という。

そもそもこの言葉、
キリスト教以前は、ユダヤ人の選民思想もあって、非ユダヤ人、異教徒をさしたが、
キリスト教が普及すると、「非キリスト教徒」を指す言葉となり、同じ意味合いで、
モルモン教徒から見た非モルモン教徒に対しても、使われるようになった。

つまり、自分たちと異なる部族、グループを指すのが原義であるが、語源は、gen(er)で、
古代ローマの氏族(特に父系氏族)を表わすgensゲンスも同じ流れで階級区別に使われ、
ローマの市民階級が「上品、礼儀正しい、親切」をモットーとしていたことから、
gentil(gentille)「親切」という言葉も派生していったようだ。

ちなみに、
ニューヨーク人は、New Yorkaisニューヨーケ、New Yorkaiseニューヨーケーズ
ロンドン人は、Londonienロンドニアン、Londonienneロンドニエンヌ
東京人は、Tokyoïteトキョイット、稀にTokyoteトキオット(ん?東京都)
大阪人は、Osakienオーサキヤン(大阪やん?!) Osakienneオーサキエンヌ

さて、カンヌは、一般的には、La Provence
プロヴァンスと呼ばれる地域になるが、
Alpes-Maritimesアルプ=マリティム県に属し、
ニースが県都。
2016年に政治経済地域統合があり、
Provence-Alpes-Côte d’Azur圏に所属する。

有名なコートダジュールというわけだが、
西端はトゥーロンから
イタリア国境を東端とする地中海沿岸一帯を指し、
イタリアとの関連から、French Rivieraフレンチリヴィエラとも呼ばれる地域だ。

昨年12月、視察と下見を兼ねて1週間滞在。
ホテル側の好意で窓辺から地中海が望める
スィートルームに通された。

暗くて陰鬱なパリから、太陽が燦々と注ぐカンヌに来て、
生命の洗濯、清々しい気持ちになった。

太陽からの放射線には有害なものもある、なんていう科学の話はこの際言うまい。
真冬だったせいもあるかもしれないが、あらためて、太陽のありがたみを感じた。
真夏になると、印象が変わるのか? それは今後の楽しみというもの。

年が明けて1月下旬に、こちらに移住。3週間のホテル住まいを経て、ホテルの部屋より
ずっと小さい、しかも海は望めない、1LDKの家具付き賃貸アパルトマンにお引っ越し。

現時点で自家用車はないが、住まいは、夫の仕事場まで徒歩5分、私も日用品の買い物に
困らない中心街に近く、生活しやすい。周りは、集合住宅に囲まれているが、目線を遮る
ように、バルコニーの傍に大木が伸びていて、景観も悪くない。

春うらら、その大木が芽吹いてきて、毎日のように成長している。
まるでゴボウのようだった小枝から、ニョキニョキと芽が出てくると、自然の命の息吹を感じる。パリの自宅の窓からも同じ光景が見られたが、私は、この時期が大好きだ。

ふと見ると、小鳥がやってくるのだが、
パリでは見かけなかったブラック&ホワイト。
燕尾服を着ているようにも見える鳥なのだが、調べると、カササギ、だった。
フランス語では、Pie bavardeピー・バヴァルド「おしゃべりピー」という。
普通には、単に Pieピーとか、Pica picaピカピカと
呼ばれ、英語では綴りは同じpieで、「パイ」になる。

カササギは、巣になんでもぎっしり詰め込むのが特徴だそうで、「パイ」料理は材料も種々
雑多であることから派生したという。どろぼう鳥、とも言われ、ダイヤモンドの指輪を
盗んだミステリー小説もある。

ピーの被害は未だないのだが、Goélandゴエラン(カモメ)にしてやられた出来事がある。

海岸線に沿って高級ホテルやブティックが立ち並ぶ大通りを、La Croisette
ラ・クロワゼットと呼ぶが、平行して遊歩道があり、浜辺はすべて各ホテルの
プライベートビーチで、カフェやレストランになったテラスやテントで食事が
出来るようになっている。

まだ寒い季節の2月初旬の午後、お天気も良く、テラスでクレープを頂く事になった。
香ばしい香りが漂う、オレンジソースのかかっているクレープが運ばれてきたとき、
夫が紹介を受けた人と話を始め、私も挨拶に立ったのだが、

な、な、何と、隙を狙ったカモメが、私のお皿から3枚のクレープのうち一つを
急降下してかっさらったのである。
お見事!としか、言いようがなく、悔しいながらも、残りを食べた。

ところで、こうしたカモメの行動を研究した、イギリスの研究者の話では、
カモメに食べ物を盗まれないようにするには、「目をそらすな」という教訓がある。

カモメと人間の対立が長年に渡って繰り広げられてきた歴史がある。カモメの個体数を
減少させて人間の食べ物を守ろうとする人々もいるが、野生動物の個体数を管理するだけ
でなく、人間側の努力によって対立を避ける方法もあるのではないか、ということから、

イギリスのエクセター大学の研究チームが、イギリス南部のコーンウォール付近の港町で、カモメにあえて透明パックに入れたフライドポテトを見せびらかし、「カモメを見張り続けた場合」と「カモメから目を離した場合」で、計測実験をしたのである。

すると、見張っているときは、躊躇しつつ手を出さなかったカモメが、視線を外した時に、食べようと試みたカモメが結構いた、という結果が……

https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsbl.2019.0405

まさに、私の場合も、そのケースだった。
レストランのスタッフの話では、カモメにステーキを盗られたお客様もいたという。
なんと、大胆かつ器用なのか。

実は、カモメの話には続きがある。

別の日、ビーチテラスで、ロンドンから来ていた娘も一緒に家族で、週末限定のホテル・ブランチをした。

生演奏の音楽が流れる中、ロブスターや牡蠣、蟹に鯛に、お肉も各種、もちろんサラダやデザートまで、と、それはそれは豪勢な内容。

シャンペン1杯とミネラルウォーター付きビュッフェで、一律料金の食べ放題。6〜12歳の子供は半額。しかも、夫婦や恋人がゆったり食事できるように、と、用意された子供のコーナーでは遊んでくれるスタッフまでいる。

贅沢な気分満載に、食事を楽しみ、
おしゃべりに興じていたら

Oh là là là là là là ……
(là が続くほど驚嘆の度合いが大きい)

カモメが糞を降下 !!!

料理を退けて、テーブルクロスを替えてもらうハメになった。

その前に、夫が、なんか、上から水のようなものが……と
首筋が濡れ、一瞬「雨?」と思ったのが、実は、カモメのオシッコだった?

フンだり、蹴ったりのブランチだったが、笑って許せてしまえる余裕は、
「太陽がいっぱい」の地中海だから?!

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