パリのマダムの・・・ volume109
『パリ・アート散策 6』
今回は、Albert Khanアルベール・カーン美術館のお話をします。
この美術館、パリ郊外にあるのは知ってたのですが、以前に書いたブランチ(https://nextwave100.net/essay/madame_r-volume103/)をするためにバスで移動中そのバス停があり、「ここだったのか」と、日を改めて行ってみる事にしたのです。
【ご参考 https://albert-kahn.hauts-de-seine.fr/en/discover-the-museum/who-are-we-the-establishment-project】
アルベール・カーン(1860年-1940年)は、南アフリカの金・ダイヤモンド鉱山の投機で莫大な財産を築いた実業家・銀行家、アルザス出身のユダヤ系フランス人です。
ロスチャイルドファミリーも居を構えていた閑静な住宅街ブーローニュの借家に住み出したカーンは、後に近所の畑を買い含めて、資料館、印刷所、生物学研究所、映写施設まである大抵宅を建てます。その敷地の広さは4ヘクタール以上にも。庭園には、故郷アルザス北東のヴォージュ山塊(ヴォージュ山脈のほうが馴染みがありますかね?)から運んだエゾマツ400本を植えた区画や、フランス式、イギリス式の他、日本の庭師が造った日本庭園やら、日本から運んで組み立てた家や茶室もあるのです。
カーンは、世界中の人々の暮らしを記録する「プラネットアーカイブ」というプロジェクトを立ち上げ、10名以上のフォトグラファーを各地に派遣します。ルイ・ヴィトンの二代目ジョルジュに、カメラ機材や私物を入れるための完全気密性のあるトランクを発注。ここにも日本趣味を取り入れ、赤いキャンバス地で覆ったトランクには、カーン自身が描いた3つの白いクロスがロゴのように入っています。世界を飛び回る渡鳥を描いたそうですが、もしかすると日本のツルをイメージしたのかもしれません。左は当時のカーンのトランク、右はそれを模倣して作られた現代のキイホルダー、“Kawaii!” (今やフランスでも通じる言葉です笑)