「社会と女性と法律と」その1
【2016年(平成28年) 女性活躍推進法】

~みんなが活躍したら、それは活躍ではないのでは?~

正式名称は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」。通称、女性活躍推進法。ひらったく言うと「働く女性の活躍を応援、後押ししますよ」という法律。社会保障法に分類され、10年間の時限立法である。2016年4月施行なので効力は2026年3月までとなる。
ここで気になる事が2つ。一つは言葉の話。活躍とはめざましく活動すること。全員がと言わないまでも、多くの人がめざましく活動したら、その状態が普通になり、またその状態での活躍という定義が生まれるのでは? これは屁理屈と言われそうなのでこのくらいにしましょう。
2つ目、こちらが重要。果たして10年でどれほどの効力が見られるのかということ。遡ること10年、2007年の頃、女性の働く環境はどうだったのだろうか。1972年に成立、施行された「勤労婦人福祉法」はその後「男女雇用機会均等法」となり、1992年に主にセクハラ問題に焦点を当てた改正が行なわれ、さらに、少子高齢化の進行に伴い、女性を労働力として確保するために改正されたのが2007年。
その時の社会に即して変化、対応しながら法律は進化してきている。あれから10年、2017年の現状を見るに、もちろん一歩ずつの歩みはあるものの苦戦している状況は明らかに見て取れます。

☆☆☆実際のところ、どれくらいの女性が働いているんだろう

女性の就職率は日本は46.1%。この数字を世界各国(2012年ILO調査)と比べてみると…

まずは、EU(28か国)プラス北米(アメリカ・カナダ)を並べてみると
1位 カナダ57.4%
2位 オランダ55.7%
3位 スウェーデン55.5%
4位 デンマーク54.7%
5位 アメリカ52.3%



18位 日本

一方アセアン10か国の中で見てみると
1位 カンボジア77.6%
2位 ラオス75.5%
3位 ミャンマー71.8%



9位 日本46.1%
10位 マレーシア42.9%

EU加盟国+アメリカ、カナダで比べてみたら真ん中くらいの位置だが、アセアンの国々の中では最下位に近く、日本は世界の中ではまだまだ女性が働いていない国といえるのでは?
女性が働くことに関しては、現場も法律も、まだまだ改善の余地はありそうですよね。

☆☆☆ずっと働き続けたいの?

就職した女性の内6割が、第一子出産を機に離職。結婚・出産期に当たる年代に一旦低下し,育児が落ち着いた時期に再び上昇するといういわゆるM字カーブを描くことが知られている。
退職の理由は家事・育児に専念が40%近いが、仕事と育児の両立が難しいとするのも26%となっている。辞めたくて辞めるんじゃないということなのでしょうか…
多くの女性がずっと働き続けたいと思っているのではないかと感じました。

☆☆☆そろそろ働きたいんだけれど…

いったん退職しても、条件さえ整えばまた働きたいという女性がいる。総務省の「労働力調査」(2016年)によれば,女性の非労働力人口2883万人内、274万人が就業を希望している。
就業希望者の総数274万人は働いていない女性のおよそ10%に当たる。
これを多いと見るか少ないと見るか…。
女性の非労働力人口の年齢分布などにも興味がわくところですね。

因みに男性の非労働力人口1578万人の内、106万人が就業を希望、およそ7%という数です。

☆☆☆再就職したのはいいけれど…

育児が一段落しての再就職は非正規雇用が圧倒的、もちろんその人その人の家庭の事情もあるけれど、就労を希望しているという274万人のうち、実は71.0%が非正規雇用での就業を希望しているという。(総務省調査2016年)
え!? と思う人もいるのでは。時間の自由が利くからというのが圧倒的な理由だというが、実際のところ、もっと深い理由もあるかも…。斜めに見すぎですかね…

☆☆☆管理職になれないの? っていうか
そもそもみんな、管理職になりたいの?

仕事と家庭を両立させ、がんばって離職せずにキャリアを積み重ねてきた女性の将来はバラ色?
日本は管理職の割合が世界基準で低い。

EUプラス北米のメンバーで見てみると
1位 ラトビア 45.7%
2位 アメリカ 42.7%
2位 フランス 39.4%

就業率1位のカナダが9位(36.2%)、
日本はEU・北米合わせて最下位の11.1%。

さらにアセアン各国とも比べてみると(ラオス・ミャンマー・ブルネイ除く)
1位 フィリピン 47.6%
2位 シンガポール 31.4%
3位 タイ 28.2%
やはりここでも日本は最下位。

なかなか管理職への道は険しそう。

しかし、本当に日本の女性の多くが管理職を目指しているのでしょうか。

ある調査によれば、一般社員のうち課長以上に昇進したいと思っている女性は
9.6%に過ぎず、男性の51.1%に比べて格段に低くなっています。
そもそも、働く女性の多くが管理職になりたい、昇進したいと思っているのか、疑問に思ってしまう数字ですよね。

昇進したくない理由として、男女で最も差があるのが、家庭と仕事を両立できないというもの。この理由から何を読み取ればいいのでしょうか…ステレオタイプの批判を繰り広げるのは簡単ですが、何かもっと違う側面が存在するような気もします。

この法律は、女性が活躍しているとは言えない状況を打開し、もっと活躍してもらうために、企業などに女性活躍推進の取り組みを実施してもらうために成立させた法律だと思うのですが
本当に女性のためになっているのかなぁ~
と首をかしげたくなる部分も。

少子化による人口減少で労働力が不足していることで、今までメインで労働力と認めてこなかった女性に法律でもっと働いてくださいと明確に指示を出した格好となっていますが
そのために最も必要なことは「社会の変化」ではないのかと思ったりもします。

産めよ! 働けよ! と
本当に女性って忙しい… って思いませんか?

話は法律からそれますが
連載 「100年の歴史と女性たち DECADE① 時事」にも書かれている通り
社会の状況、国の状況に変化があると
女性は銃後の守りについたり、男性に代わって社会や戦争の前線で働いたりと、立ち位置を大きく変えることを求められ
いちいちそれに対応し、今日まできているのです。

もしかしたら…
社会活動の定義を変えたら
女性って常に働いているともいえる?

どんな立ち位置にも順応できる…
女性ってすごくないですか?

この法律が施行されたことで、雇用側が具体的に求められることは
・女性従業員の割合
・男女の平均勤続年数の差
・平均残業時間数
・管理職に占める女性の割合など
女性活躍に関わるさまざまな項目を改善すること。

果たして文化や歴史を背景にここまで来た企業文化を一朝一夕で変えられるのか…

☆☆☆100年という単位で見てみてみると…

主婦の友が創刊された1917年(大正6年)頃からの女性に関わる法律を紐解き、進化の過程を見ることで、この先へつながる何かが見えるのではないだろうか…
そんな思いでこの連載を続けていきたいと思います。

次回は

【1925年(大正14年)施行 普通選挙法】
~普通でない選挙って?!~

です。

一覧へ戻る