「社会と女性と法律と」その16
【1991年 育児休業法成立】

~イクメンは増えるのか?~

3.16%と81.8%、これは何の数字だと思いますか。これは2016年度(平成28年度)の男女別育児休業取得率です。もちろん3.16%が男性、81.8%が女性です。
これでもずいぶん男性の取得率は増えました。男女を問わず、全ての労働者を対象とした育児休業法が成立したのは1991年(平成3年)のこと。
厚生労働省の調べでは育児休業法がスタートしてから5年後の1996年度(平成8年度)の男性の育児休業取得率は0.12%、女性は49.1%ですから、それに比べるとどちらもずいぶん増えたともいえます。

☆☆☆最初の育児休業法
働く女性のための育児休業制度が初めて設けられたのは、1972年に施行された勤労婦人福祉法です。
その内容は、女性が申し出た場合、雇用関係を継続したまま一定期間育児のために休業することを認めるというものでしたが、努力義務規定にとどまっていたため、実際の運用は事業主の努力に任されていました。
1975年には公務員を対象とした「女子教育職員等育児休業法」が制定されましたが、公立校の教員と看護婦などの医療職が対象で、すべての女性を対象にしたものではありませんでした。

☆☆☆画期的な法律が成立
1991年、すべての労働者を対象とした育児休業法が成立しました。(施行は1992年)
この法律には女性だけでなく、男性も等しく、子供が1歳になるまで育児休業を取得できると定められています。家事や育児がもっぱら女性の役割であるとする「性別役割分業」の意識や実態が根強く残っていた日本においては、画期的は法律でした。
この背景には、出生率の問題があります。1989年に特殊合計出生率(一人の女性が生涯に産む子供の数)が1.57まで低下した「1.57ショック」です。
少子化への対応という点において、政府内でも育児支援が必要という認識が高まり、自民党をはじめ野党各党がこぞって育児休業法を提出し、ようやくまとまったのでした。

☆☆☆育児休業法の問題
当時の育児休業法には、休業中の賃金保障の規定はなく、基本的には無休のまま社会保険料や住民税などの負担がかかりました。
共働き夫婦の場合、賃金が安い妻(女性)が育児休業を取得し、家計への影響を引くするという流れになるのは当然でした。
また、パートタイマーなどは、契約期間が原則1年を超えないことから、子供が1歳になるまでという長期的な休業になじまないとして、対象から除外されていました。
労使協定を結べば、雇用期間が1年に満たない労働者、専業主婦がいる男性労働者なども除外することができました。
こうした問題を解決するために、育児休業法は何回もの改正を重ねています。
1994年には雇用保険法の一部を改正し、育児休業給付制度も創立され、育児休業取得前の賃金の25%が支給されることになりました。額は改正のたびに増額されました。
また、1995年には本人からの申し出により社会保険が免除されることになりました。
現在では、育児休業給付金は、休業すると収入が減るという経済的な理由から取得をためらう男性がいることも考慮して、育児休業開始から半年は支給率が50%から67%に引き上げられています。
2005年には、一定の条件を満たせば、派遣社員やパートタイマーも育児休業の取得が可能となり、それにあわせて給付金も受給対象となっています。

☆☆☆男性の取得は
男性の取得率は現在も低い水準です。
男性の育児参加を促進させることは、男性のワーク・ライフ・バランスの面だけでなく、配偶者である女性の就業継続への影響という点でも重要といえます。
実際、育児休業を取得する女性の割合は増えているものの、働いている女性のおよそ6割が第一子出産前後に離職している状況は、あまり変わっていません。
男性の育児休業取得を促進させるためにはさまざまな環境整備が図られてきています。例えば、父母がともに育児休業を取得すれば原則子供が1歳になるまでとされている育児休業取得可能期間を1歳2か月まで延長を認めています。
厚労省は、育児に積極的に参加する男性(イクメン)を応援する「イクメンプロジェクト」を立ち上げています。
2007年から80%を超える取得率が続く女性に対し非常に低い取得率にとどまる男性、イクメンの拡大に期待したいものです。

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