「社会と女性と法律と」その17
【1995年 介護休業法成立】

~自助・共助・公助~

介護休業法は、正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」。1992年(平成4年)に施行された「育児休業等に関する法律」を改正して、介護休業規定を追加したもの。

家庭の中で男女が共に責任をもって行うこととして「育児」に次いで「介護」も対象にすべきだとして加えられました。

 

☆☆☆育児と介護

「育児」と「介護」は似て非なるもので、法律の目的も違ってきます。

育児休業は自ら育児をするための期間、それに対して介護休業は自ら介護をするための期間ではなく、「仕事と介護を両立するための体制作りの期間」ととらえるとわかりやすいのではないでしょうか。

自分たちでいかに介護に取り組むか、家族や親族でどう取り組むのかを相談し、介護サービスを利用するのならば、ケアマネージャーの選定などの準備のための期間になります。会社を休んで自ら両親の介護に専念していたら介護休業の期間はあっという間に過ぎてしまいます。

育児には期間に対する一定の見通しがありますが、介護にはありません。

 

☆☆☆介護休業法が成立して

介護休業法は当初、介護しなければならない家族がいる労働者は一定期間(連続3か月を限度)休むことができるとする企業の努力義務でしたが、1999年(平成11年)の改正で、努力義務は義務へと変更されました。

また、休みを分割してとることができたり、対象を祖父母にまで広げるなどの改正も加えられました。

しかし、介護のために離職や転職する人は1997年(平成9年)からの5年間で45万人、2002年(平成14年)からの5年間で50万にと、その数は減るどころか増えています。

男女の割合でみれば、男1に対し女3と女性が多く、介護のしわ寄せが女性に偏っているといえます。

仕事と介護の両立という目的のために法制化された介護休業法も、実際の取得はごくわずかにとどまっています。

休業取得者の割合は男女合わせて0.06%、女性に限っても0.15%という低さです。 (2000年 労働省女性雇用管理基本調査)

 

☆☆☆なぜ介護休業の取得がすすまないの?

その背景には2000年(平成12年)に施行された介護保険制度の急速な拡大があるのではないでしょうか。

介護休業法は介護期間すべてを休業で対応することは想定していません。介護期間の中で緊急性が高く、家族でないと対応できない時期の介護を想定しています。

対象者一人につき1回、3か月が限度とされた理由です。

1997(平成9年)年に介護保険法が成立(2000年平成12年施行)し、介護認定を受ければ1割の費用負担でさまざまなサービスを受けられることになりました。

介護サービスを利用すれば育児休業を取得しなくても仕事が続けられる、そう考る人が増えたのでしょう。介護休職の取得は進みませんでした

 

☆☆☆介護休業より年休?

介護休業法が義務化されるとともに、休業まえの収入の25%が介護休業給付金として給付されることになり、その後改正のたびに給付率はアップしました。

しかし、休業制度を利用する人の数はのびません。

介護休業を取得しなかった理由は「年休などの休暇制度を利用した」という回答が大きな割合をしめます。(仕事と介護に関する調査 2006年労働政策研究・研修機構)

年休を利用することで収入を維持し、収入が減る介護休業は取得しないという考え方でしょう。

年休制度は本来労働者の健康や福祉のためのものであり、介護についてはその状態になったらまずは介護休業制度で対応し、その後は、介護サービスなどの利用も含めて対応することが最初の想定だったのですが・・・。

 

☆☆☆誰が介護するのか?

介護休業取得者の割合は、女性が90%を超え、男性は10%に足りません。(2000年労働省女性雇用管理基本調査)

女性の割合が圧倒的に高くなっています。

男女の収入の違いという点に加えて、男性は介護休業を取得せずとも配偶者に任せることができるというと、家庭における男女の役割に対する考え方が現れているのではないでしょうか。

では、男性は実際どう思っているのか。男性が介護休業を取得することについては、男性の7割以上がとったほうがよいと回答しています。(2000年総理府男女共同参画社会に関する世論調査)

 

介護の問題は、まずは介護状態にならないように日々の生活を心がける。仮になったとしても、誰が介護をするのか、制度ができても家族や近親者による介護がなくなるわけではありません。
そのうえで、公的な介護サービスなどを拡充して支えていくという、いわゆる自助・共助・公助の考え方が必要なのではないでしょうか。

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