「社会と女性と法律と」その7
【1947年(昭和22年)労働基準法制定】

~労働基準法は女性の味方?~

☆☆☆労働基準法とは
労働基準法は1947年に制定された、日本で初めての労働者を守るための本格的な法律です。
何が本格的かというと、それまで日本には、工場法や商店法という労働基準を定めた法律がありましたが、それらは労働者を保護するには決して十分ではなかったのです。

労働条件に関する最低基準を定め、労働契約関係を規定したのが労働基準法です。
その中でも最低賃金に関しては最低賃金法が、また労働者の安全と衛生については、労働安全衛生法が、その後分離独立します。
労働基準法が「最低基準の確保」を目的としているのに対し、労働安全衛生法は最低基準を確保するだけでなく、より進んで適切なレベルの職場環境を実現することを目指すなど、三つの法律は一体としての関係にあります。

☆☆☆労働基準法は強い?
労働基準法は労使が合意のうえで締結した労働契約であっても、労働基準法に定められた最低基準を下回る場合はその合意は無効であり、労働基準法で定める基準が適応されるという、強制的な効力を持っています。

また、この法律には罰則がついているので、違反すると刑事罰が科せられるという刑法的な側面もあります。

罰則をきちんと遂行するため、労働基準法には労働基準監督官にいついての定めがあります。労働基準監督官は、犯罪の捜査と被疑者の逮捕、送検といった司法警察員としての職務を行います。

労働条件などの問題があるとされる事業所に対して、強制的に立ち入り検査をしたり、行政処分を下すなどの権限を持っているのです。

☆☆☆労働基準法は女性の味方?
労働基準法は賃金についての女性差別をしてはいけないと定めています。
第4条「男女同一賃金の原則」です。
ここでは「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。」としています。
差別的取り扱いとは、不利に扱う場合だけでなく、有利に扱う場合も含まれていて、女性を男性よりも有利に取り扱うことも法律違反として罰せられます。

ところがよく読むと、労働基準法は賃金については差別を禁止しましたが、それ以外の労働条件については女性を差別することについて触れていないのです。

第3条「均等待遇」は、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」と定めていますが、列挙された言葉の中に性別という言葉がありません。

当時は女性労働については、「保護」という考え方が主流で、男性と同じように働かせてはいけないと考えていたようです。

その後1972年(昭和47年)の男女雇用機会均等法で、労働条件における女性差別は禁止されることになります。

「母性保護」という観点からもう少し見てみましょう。

女性は男性と異なり、妊娠や出産・保育といった女性特有の母体としての機能を持っています。このような生理的・身体的な特質に照らし合わせて、労働基準法では、労働の場における女性を特別に保護する措置がとられました。

時間外や休日労働の制限、深夜業務の禁止、危険・有害業務の制限、生理休暇、また妊産婦に対しては、産前産後休暇を与えることや、妊娠中の軽易な業務への転換、育児時間等が定められました。

☆☆☆育児時間って女性だけ?
現在は、イクメンなんて言葉が使われるようになり、男性の育児休業も少しずつみかけるようになってきました。
育児休業制度は1992年に制定された育児休業法に規定されているもので、子どもが満1歳になる前日まで男女とも休業できるというものです。

一方育児時間というのは、労働基準法の67条に定められている制度で、生後満一歳にならない子供を育てている女性は、休憩時間以外に一日に二回30分の育児のための時間が与えられます。

ただ、この制度は、もともとは授乳のためのものだったのです。そのため対象は女性に限られています。条文には、「生児を育てるための時間」とありますので、保育園への送り迎えなど子供を世話するための時間と解釈もできるのですよね。
だから男性労働者も対象にすべきという議論もあるようです。

☆☆☆女性主管局長って
労働基準法第100条には女性主管局長という規定があります。
女性と名前がつくから女性官僚の仕事というわけではありません
厚生労働大臣の指揮監督を受けて、労働基準法の中の女性に関する規定(産前産後休業や生理休暇、育児時間など)についてその制定や改廃を担当します。
その施行については、労働基準所管局長に勧告や助言を行うのですが、こういうポストをつくってまで、女性の労働条件に目をこらしていたのです。

☆☆☆さらなる差別の解消は
労働基準法によって、少なくとも女性であることを理由とした賃金の差別は法律的に
認められないことになりました。
しかし、年齢や勤続年数、扶養家族による結果の賃金の違いや、採用や配置、昇進による差別の結果生じる賃金の差は対象となっていませんでした。

それら1985年に制定される男女雇用機会均等法で雇用の場におけるさまざまな差別をなくすことで、解消されることになります。

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