「社会と女性と法律と season2」

「差別だと決めるのは誰」【その1】

2.「差別だと決めるのは誰」

【関連する法律】
教育基本法・学校教育法
(1947年/社会と女性と法律とseason1Part6)

工場法改正(1929年/Part3)
男女雇用機会均等法(1985年/Part15)
年金法改正(1985年/Part14)

【その1】誰かが得をしている?!
【その2】なんてすてきなネーミング
【その3】正しい評価って…

 

その1 誰かが得をしている?!

差別は気持ちの問題かなと思い始めると、差別をすることで得をする誰かがいて、その人の意思や判断が働くと損をする人が生まれることがわかるのではないか。

東京医科大学の不正入試の問題は、その後の文科省の調査でほかの複数の大学でも同様のことが行われていたことがわかったよう。
今回は、ある新聞記事の内容から話は始まりました。

A子さんA子さん

「置屋の女将発言?!」って、そんなに話題になってたの?
新聞を読むまでこんな事が話題になっているとは全く知らなかったんだけど…

B男くんB男くん

僕も知りませんでした。

A子さんA子さん

有働さんが「私は置屋の女将だ」って言ったら、回りが「それは置屋に対しての差別用語だ」って騒いだということらしいけど、置屋の女将自身が「そうやって騒ぐあなたたちが置屋の女将を差別しているからそういう風に言うんでしょ」みたいなことを言ってるというのが、すごくおもしろいなって。

ポイント☝有働さんの「置屋の女将」発言に賛否

有働由美子さんがメインキャスターを務めるテレビ番組の記者会見で、共演する他のアナウンサーらと自分を比べて、「完全に、きらきらしてる人たちと、置き屋の女将みたいな感じになっている。」(朝日新聞)と述べたという。
この発言に対しネット上では、さまざまな意見が飛び交った。得てして批判的な意見が多かったようだが、実際に置屋の女将はどう感じたのか。「いやな感じはしなかった。否定的に反応した人たちが水商売を色眼鏡で見ているのを感じた」。(朝日新聞)

C子さんC子さん

ここに登場する置屋の女将を知っているんですけど、この問題が発生した時、「こんな事を言っている方が置屋の女将を差別している」って。「いかにも私は平等に見てるわよって感じの人にこの種の発言が多いわよね」とも。この話を女将から聞いた時、自信がある人はそういう発言ができるのかなって、私は思った。置屋の女将の中でも自信のある人は、胸をはって「そう言っているあなた方の発言こそが差別だからね」って言えるんだって思ったら、どんな職業でも、そこの部分で強くなれる女の人がでてくるといいなって。

A子さんA子さん

そうそう、ここから私は、差別って気持ちの問題なのかなって強く思い始めたんだけど、言われている本人が自信を持って、いやいや私全然そうじゃない、そういうことを変に勘ぐってるあんたのほうが・・・というところが何かのヒントにならないかなって。

C子さんC子さん

こんな話もあるの。ある県で、中学生の娘を連れて転勤をした人が、公立の学校で校長先生にも教頭先生にも制服や体操服が新しいモノが揃うまで前の学校のモノを使っていいですよって言われて、“ブルマ”をはいていたら、お年を召した女性の教師が「男を欲情させるような恰好をするとは何事だ」って、生徒たちの前で生徒本人に言ったという…。もちろん本人は深く傷ついてしまって、ご両親は気持ちが収まらない。「“何かしらの服装をしたら男を誘惑しているのだ”と思ったり、受け取ったりするあなたの考え方は差別的ではないですか?ブルマをはいたら、男が欲情するんだという風な発想を持つあなたの考え方と受け取り方が問題だ」と文書で教育委員会に訴えたいと学校に言った。私はその話を聞いた時に、差別的なモノの考え方とか発言って、受け取り側の問題なんだなって思ったの。発信側は重きを置かずに言っている事が多いんじゃないかと。

B男くんB男くん

この場合、教師はあまり重きを感じてない?

C子さんC子さん

言う方はそんなに重いと思って言ってないと思う。それに普通は言わないでしょう、「男を欲情させる」なんて事。言います?

B男くんB男くん

言わないね。

A子さんA子さん

言わない…

C子さんC子さん

言う方は大した事ない、くらいな気持ちで言ってる事がけっこうあるんだなって、この話を聞いた時すごく思ったの。もちろん、もしかしたら、この女性教諭は心からそう思って、憂慮して発言したかもしれないけど、もし、そうだったとしたら、それはそれで問題だと私は思いますけどね(笑)

ポイント☝差別と思わずに言うことが、セクハラにつながる。

加害者が「そんなつもりはなかった」と開き直ったとしても、本人の意図とは関係なく相手を不快にさせてしまう場合があり、しかも不快に感じるか否かには個人差があります。だから行為を受けた本人が不快と感じれば、それはセクハラと判断される可能性があるのです。
よくあるのが「相手の容姿」を話題にすること、髪形や服装などを褒めたつもり、ましてや「スタイルいいね」なんて言うのはもってのほか。相手が「いやだ、気持ち悪い」と思えばセクハラに。
男性の上司が女性の部下に1対1で飲みに行こうと誘うのも基本的にはアウトですよね。
でも、そうした発言をした男性がイケメンで好みのタイプなら・・・
セクハラにはならないってことも、あるかも。
ちなみに法的には、セクハラをした加害者に直接責任を問う法律はありません。男女雇用機会均等法では事業主の責任を問うだけです。
だからこそ最近は、雇用側が異様なくらいにアレもセクハラになります、コレもセクハラになりますと言い出しています。ソレを言った相手によって、受取側の気持ちが変わる様な内容を、一律で括って捉えようというのには無理がある気もします。だから、今、セクハラ講習を聞くと、???と思うことも出てくるのではないかと。
富山のケースは待ったなしでセクハラだと思うのですが…
セクハラって体に触るなどの身体的接触も当然含まれますが、会社などにおいて最も問題とされているのは、言葉によるものではないでしょうか。
それだけに相手がどう受け止めるかが大事になってきます。
セクハラかどうか、そのボーダーラインは「一定の客観性」ではないでしょうか。被害者の受け止め方を重視しつつ、平均的な女性(男性)労働者の感じ方を基準に判断する必要があると思います。
そして世代によっても許容範囲が違うのではと思います。
ミスをした時に、元気づける意味で肩をポンポンとたたくのも、セクハラと感じる人もいれば、そうでない人もいる。
何がセクハラで、何なら問題ないか。これは区別をしなければ、言葉が差別につながるということでしょうか。

A子さんA子さん

区別っていうのはある程度FACTベースに基づいた分け方って言うことができるのかなと思う。一方、差別というのは、確実に気持ちや意思、感情、それに制約や制裁などが入ってるものなのかなと。例えばアパルトヘイト、あれは黒人というある意味FACTベースの区別かもしれないけれど、その裏には、制圧や、この人たちは自分たちよりも劣っているという位置づけをしたりとか、そういう発想が伴っているから差別なんだと思ったんですけど。差別というのは、事実にある程度基づいていたとしても、その裏にある発想がやはり一般的にいって正しくないものであるときは、これを変えなきゃいけなくて、それをどれくらい法律でがんばってきたかというのが差別撤廃の歴史なのかな。

資料📖 アパルトヘイトとは

アパルトヘイトは、南アフリカが1948年から1990年代初めまで実施した、法によって定められた人種隔離と差別の制度。
当時、南アフリカ政府は「南アフリカにはたくさんの民族が住んでいて、それぞれ違う伝統や文化、言語を持っている。それぞれの民族が独自に発展すべきだ。アパルトヘイトは差別ではなく、分離発展である」という多文化主義による合理的な政策だと主張していました。
日本国内では、作家の曽野綾子さんが労働力不足と移民について論じる新聞のコラムで、「居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい」と書いて、これがアパルトヘイト是認だとして批判が巻き起こりました。
仮に黒人と白人を区別したとしても、平等に扱えば差別にはならないと思うけれど、アパルトヘイトの区別には合理的な理由もなく、さらに白人が支配者階級となって黒人から搾取しているのだから、あきらかに世界でも類のない差別だったのではないだろうか。

C子さんC子さん

区別にはなくて差別にあるものって、誰かが得をする答えが存在するっていう事だと思う。だから男女差別は男子が得をする答えがそこに存在しているんですよ、人種差別は黒人を差別している白人の側が得をする答えが存在しているんですよ。

B男くんB男くん

何らかの意思が働いているということですか、拒絶とかいうのもありますよね。

C子さんC子さん

拒絶もそうですよね、見下し、守りなんかもそう、これらの事で得する人、得しない人っていうのがあると差別なんだろうなって。
この差別を撤廃するために、なるべく法律で介入しようとしてきたのは、日本だけでなく、いろいろな国でも同じだと思うんですよね。
例えば選挙法なんてまさしくそうで。普通選挙法って、そのネーミングがまるで女性が普通じゃないみたいな、あきらかに女性を排除している。
誰が得したのかは知りませんけど、排斥というあきらかに普通じゃない行為をしたわけで、それを撤廃しないといけないですよね。

 その2「なんてすてきなネーミング」へ続く

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