「社会と女性と法律と season2」
「機会は均等、結果は・・・」【その1】
3.「機会は均等、結果は・・・」
【関連する法律】
男女雇用機会均等法(1985年/社会と女性と法律とseason1Part15)
女性活躍推進法(2016年/Part1)
確定拠出年金法(2001年/記載なし)
【その1】法律はどこまで関わることができるのか…
【その2】自分のことなんだから
【その3】見えてるモノが違うから
その1 法律はどこまで関わることができるのか・・・
法律で男女の平等を作り出すって少し無理がないかな、法律にもいろんな選択肢ができればいいんだけど
法律は男女平等とかにあまり踏み込むべきじゃないと思うの。憲法とか最低限のところは確保しなければいけないとは思うけど
じゃあ、男女平等とか機会均等と言う意味でいうと、どこまでだったら法律が何かをしても違和感がない? 例えば努力目標とはいえ、2020年までに女性役員の割合を30%にするという政府目標を提示されたら、企業も知らないふりをすることはできず、不買運動とかメディアに叩かれるのを恐れるあまり、結局気づいたら真綿で首を閉められていたということにならないかなって思うんだけど。
ポイント☝
女性役員30%とは、社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標 (2003年男女共同参画推進本部決定)
日本の場合
「役員」は、取締役、監査役・指名委員会等設置会社の代表執行役
データの基準日は毎年7月
・2013年4月 総理から経済団体への要請①
上場企業や役員に一人は女性を登用
・2014年6月 総理から経済団体への要請②
女性登用に向けた目標設定・女性登用状況等の情報開示を推進
・2015年3月 有価証券報告書に係わる内閣府令改正
役員の男女別人数及び女性比率の記載を義務づけ
全企業における女性役員の割合(未上場も含む)
- 平均
- 9.7%
- 30%以上
- 13.0%
- 0%(全員男性)
- 59.0%
5 年前と比較して「増加した」企業は 8.2%、今後「増加する」と考えている企業は 7.5%、企業における女性役員の登用は相対的に緩やかに拡大する傾向。
(帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査」2018年)
世界の場合
出所:CWDI/IFC 2010 Report/Accelerating Board Divercity
ノルウェーは2003年に政府系企業や上場企業に対しクウォーター制を導入し、2005年までに女性役員の割合を40%にすることを義務づけました。2005年には制度を改正、2007年までに達成しない企業には解散も含む厳しい罰則を科し、2008年に40%を達成しました。
米・南カリフォルニア大学のケネス・アハーン助教と米ミシガン大学のエイミー・ディットマー準教授の調査によれば、2003年に563社あった上場企業は、クウォーター制の対象となるのを避けるため、2008年には179社まで激減しました。7割もの上場企業が非上場に転じたことになります。
その結果、上場企業の役員ポストは1400となり、女性役員比率40%は達成したモノのそもそも570人しか存在しないという状況。また非上場企業は50万あるポストのうち女性は9万人あまりで、割合は20%にも満たないのが現実のようです。
就職協定を廃止したように、経団連が自ら30%ルールは必要ないと言えたらいいのかもしれないよね。それはそれとしても、男女雇用機会均等法は、雇用の機会均等を義務づけているだけで、決してその結果については義務づけていないし、そうすべきでもないと思う。30%という数字を法律でしばるのは必要ないのではないかな。
そうね、受験を例にすればある程度試験というものは平等にやるべきだと思うけど、そこから先は何らかの価値判断や大学の理念というものが、ある一定レベルは入っても仕方ないのかなと思うのね。それは企業も同じでね。
例えば女性を採用すると謳っておきながら、女性のお手洗いが屋上にしかないっていう会社は問題だと思う。でもね、そういう会社に女性は就職しようと思わないから、優秀な女性を採用する機会を失う、結果、自分たちが損するだけなんだけどね(笑)。
だから女性が男性と圧倒的に違う性の部分、つまり子供を産むっていうことにおいては差別がないようにしないといけないと思うけれど、じゃあ育児の部分まで女性に対してカバーをするのかとなると、それはちょっとどうかなと私は思うのよね。
それは世帯というか、家族でカバーすればいいことだと思う。
確かに、出産は女性にしかできないから、そこは区別してちゃんとフォローしなくてはならないと思うけど
私は、子育てをしたいという女性がいてもいいし、男性にも平等にしてほしいという人がいてもいい、なんなら男の人にたくさんやってほしいというのもありだと思うのね。
それが社会の多様化であって、色々な場面で多様化した生き方や働き方に社会システムが対応していけば問題はないのだと思うんだけど…
何に対してもということですよね、それこそ女性役員の比率30%が無理だと思ったら、その分税金を払うとかいうのは?
それはきっと税金払いたくないから、使えない人でも役員にするということになるじゃない(笑)
それは困りますね
私は30%ということについてそこまで踏み込むことの意味は、それくらい会社にがんばりなさい、努力目標ですよ、今より増やしなさいよと言って促すことだと思うの。
それが大事で、それによっていろいろなことの判断基準が変わってくるかもしれないじゃない。例えば今までつきあいのいい人が出世してきたのが、そうじゃないという基準にすることで、見直しが行われるかもしれない。それをやるかやらないかというのは、会社がつぶれるかつぶれないかくらいの影響がある事だと思うので、それこそ会社の自主判断で考えていくべき話だと思うの。
確かにそうですね
私は国からそこまで指導をうける必要は全くないと思っていて、それこそ国がまだそのレベルに達してないと思っているから
資料📖
各分野における「指導的地位」に女性が占める割合
国家公務員採用者 | 国家公務員(管理職以上) | 民間企業(課長相当職) | 民間企業(部長相当職) | 医師 | 薬剤師 |
28.6% | 2.6% | 7.9% | 4.9% | 18.9% | 66.8% |
(出所:内閣府男女共同参画局女性役員情報サイト)
民間企業は業績次第だから、女性役員がたくさんいて業績が上がれば何も言わなくても増やすのでは
そうそう、それで業績が上がるなら増やせばいいと思う。例えば、業績のいい新興企業では女性がどんどん出世しているところもある。あきらかな衰退産業とそうではない産業の差って、そういうところにでているんじゃないかな。
女性取締役の数を増やすと企業の業績は伸びるのだろうか。
因果関係があれば「女性の管理職を登用したら業績がよくなった」となるが、「もともと業績がよい企業ほど、女性の管理職を登用している」ケースも。
ILO(国際労働機関)は、マッキンゼー社や、クレディスイス、アメリカのNPOなど様々な調査報告を例にあげ、財務リターンや、株価の実績、売り上げ利益率などから、女性役員の割合と財務実績とは相関関係があるとしています。
一方で、女性取締役比率と企業価値の因果関係を南カリフォルニア大学が検証すると・・・
「女性取締役を10%増やしたら企業価値が12.4%下がった」
女性の役員の割合が高いことで知られるノルウェーは、2003年当時、その比率は10%未満でした。そこで女性取締役比率が2008年までに40%に満たなかった企業を解散させるとする法律を施行。政府によって数値目標が課されたことで、ノルウェーの企業の多くが、経験が浅く、経営者の資質に欠ける女性を無理やり取締役にして急場をしのいだ結果、企業価値を低下させたのではと分析しています。
女性活用を通じて企業価値を高めたいと考えるのであれば、女性管理職比率の数値目標を掲げ、ただやみくもに管理職の数を増加させるだけでは逆効果になってしまう可能性もあります。
単に数値目標を掲げるのではなく、働きかたの柔軟性を高め、性別によらない公平な評価・報酬制度を構築するなどして、女性の管理職が自然と増加するような環境を作ることが重要なのではないでしょうか。
(出典) 日興フィナンシャル・インテリジェンス
『平成26年度産業経済研究委託事業(企業における女性の活用及び活躍促進の状況に関する調査)報告書』
男女雇用機会均等法が85年にできて、今年で33年、その時に入った人が現在50代半ばくらいじゃないですか。だからこれからじゃないですか、女性役員が出てくるのも。年代的にもキャリア的にもこれまではふさわしい人がいなかったのでは。
均等法ができてから入社したとしても、その後育児とか負担のかかるものがあって、現実問題としては役員になるような人材はあまり育っていないんじゃないかな。それに留学の機会とかも男性が選ばれるほうが女性よりも多かったかもしれないしね。
でも今はそういうこともどんどん変わってきていると思う。その会社に長くいることが前提でなくなってくると、今までとは違う価値観で物事を見ていかなければならないと思う
*均等法の前後で女性の立場はどう変わったか
今も就業している均等法第一世代の男女にアンケート(平成16年1月実施)。
回答者は,既婚者50.5%,未婚者41.8%。子どもがいない70.3%。
*仕事を継続する上で最も大変だったこと
結婚している人: 「子どもの保育」(21.7%) 「ロールモデルの不在」(15.2%)
未婚の人 : 「ロールモデルの不在」(23.7%)
*仕事を継続できた理由
既婚者:「夫の理解・協力」(32.6%),「子どもがいなかった」(17.4%)
未婚者:「独身であったこと」(50.0%)
男女雇用機会均等法施行後,女性が結婚し子育てを行いながら総合職として働くことは厳しく、育児負担の影響が大きい。
また,先輩女性管理職がいないので、手探りで自分のキャリアを開拓しなければならなかったことがわかる。
女性の社会進出を巡っては、男女雇用機会均等法(1985年)以来、育児休業法(1991年)、育児介護休業法(1995年)、次世代育成支援対策推進法(2003年)が制定され、雇用面での男女の均等化への支援や、仕事と家庭の両立を図るための支援が実施され、女性の就業者数も増加しました。
しかし、管理職に占める女性の割合は11.2%(労働力調査 総務省2013年)で、職務は補助的な役割に留まり、キャリア形成は不十分なままです。
女性役員への道はまだまだこれからということでしょうか。