「社会と女性と法律と season2」

「子育ては誰がする・・・」【その2】

4.「子育ては誰がする・・・」
【関連する法律】
育児休業等に関する法律(1992年スタート、2017年改正/社会と女性と法律とseason1Part16.17)
改正国家戦略特区法(2015年)
子ども・子育て支援法(2012年)
児童福祉法(1947年)

【その1】わざと落ちるって何?
【その2】夫と子育て
【その3】グローバルな環境で育つ

その2 夫と子育て

夫が妻を支えようと思っても、なかなか事情が許さない。男性社員が“子育てしながら”働ける、そんな会社があっても…

B男くんB男くん

企業という組織の中で働いていると、子育てについて「なぜ自分で育てないんだよ」とか、「保育園に預けるの?」みたいなことを言われたり、そんな雰囲気を感じたりすることがありませんか

C子さんC子さん

会社のトップの人たちがそう考えているのではと思う時がある。

A子さんA子さん

意外に自分たちのおじいちゃんやおばあちゃんがそう思っているし、そんな話はよく聞く

C子さんC子さん

そういう会社のトップの人たちが「うちの会社の働き方改革は・・・」なんて言ったりすると「あなたの奥さんはずっと専業主婦だったのでは」、「よくそんなこと言えるわね」と思ってしまう。

A子さんA子さん

そんなことを言うトップは、それこそ子育てなんてしていないわよ

C子さんC子さん

おむつ一回でも替えたことがあるの?とか思うけど、「そうですね」「そんな考え方もありますよね」って顔して聞いている。そういう会社は絶対変わらないって思っているけどね

B男くんB男くん

企業もトップ次第っていうところかな

資料📖

育児休業取得率の推移

育児休業取得率

出所:厚生労働省「雇用均等基本調査」

ポイント☝

男性の育児休業の実情は・・・
3才未満の子供を持つ20~40歳代の男性社員のうち、「育児休業を取得したかったが利用できなかった」と答えた人は3割にのぼる。育児休業の取得率が5.14%であることと比べると大きな差があるが、その理由としては、「業務が繁忙で職場の人手が不足」が38.5%で最も多く、次いで「職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった」が33.7%となっている。

C子さんC子さん

あるメーカーの社長の話なんだけど、そこは夫婦で事業を立ち上げたの。奥さんはcreativeな仕事を、ご主人は営業その他の業務をしていたんだけど、奥さんは家で仕事はしているモノの、インスピレーションの世界だから子供を見ながら仕事はできないと。
で社長に子供を連れて仕事に行って欲しいと頼んだところ、社長は子供を連れて営業に出ていたんだって。その頃を知っている人たちは、「あのご夫婦頑張っていたよね」って言ってた。
社長は“奥さんが家にいるから子供を置いていってもいい”という考え方ではない。
家で仕事をしている奥さんにどうして欲しいってことが聞けた人なの。そこなのよね。
その会社は今は大きくなって、女性社員の方が多い会社なんだけど、男性社員、女性社員ほとんどの人がhappyに子育てしながら仕事しているって。

ポイント☝

ある企業の男性社員の子育てへの関わり方の例

妻が役人で夫が会社員というご夫婦。
もともと結婚するとき、夫は「妻が働き続けることはこの国のためになると思う、でも結婚はしたい、だから結婚する事で妻の仕事の邪魔をしない」という条件で結婚した。
子供は夫婦ともに欲しかったので、「子育ては夫が全面的に負う」という約束をし、夫はその希望がかなう会社を探して今の会社に転職。会社は彼の能力を認めてくれていて、“子育てをしていて会社にいつもはいられないというだけで、彼の能力に変わりはない”と。
最近、夫婦には双子が生まれ、妻も仕事に影響の出ない範囲で手伝ってはいるが、概ね子育てを夫がしている。彼は仕事も続けながら、会社のあらゆる制度を使い、自宅で子育てに奮闘しながら仕事もこなしているとのこと。
仕事は仕事として認めてくれ、かつ子育てもでき、それが自分にとって不利にならない会社だと夫婦共で満足しているとの事。

B男くんB男くん

男からみると全部旦那さんに押しつけているようにも見えるけど

C子さんC子さん

彼は奥さんのことが好きで、その能力を認めて納得して結婚したんだから。

A子さんA子さん

男に押し付けているっていうけど、普段はその逆のことが起きていると思うんだけど。
私が知っている社長も奥さんと二人三脚なんだけど、奥さんは決して表舞台には出てこないの。でも彼はいろんなところで、「奥さんがこうこうしてくれるから、ぼくは仕事ができる」と話しているの。外周りは彼、奥さんは子育てをしながら彼を助ける。そういうことを経験しているから彼の会社も女性社員が多いの。

B男くんB男くん

やはり男性は子育ての苦労を知らないといけないのかな

C子さんC子さん

そう言ってしまうと、これまで必死に働いてきた企業のトップやホワイトカラーの多くがだめに聞こえるけど、駄目じゃないの。人の話を聞こうっていうことなの。文句を言う人の話じゃなくて、その現実の中で努力して、結果を出し、それに満足している人。その背景にはこういう思考があると論理だてて話せる人。そして成功した人。
そんな人の話に耳を傾けたらどうかなと思う。

A子さんA子さん

これからの日本は確実に人が足りなくなり、かつ老人社会になる。
それとあいまって、右肩上がりの経済はほとんど望めなくなるから、今までの社会とはちょっと違う考え方をしなくてはいけないと思う。
世の中は確実にグローバル化し、テクノロジーもすごく発達するだろうから、家で働くという意味も10年前とは全く変わるはず。もちろん産業そのものも変わるから、そのあたりを柔らかい頭で考えないと、時代にはついて行けないと思う。

B男くんB男くん

その社会の動きについて、政府は少しずつだけれども施策を打ち出しているとは思いませんか。

A子さんA子さん

一生懸命やっているとは思うけど、例えば外国人労働者の受け入れについても、人が足りないという短絡的な理由だけでやろうとしているという批判に一理あると思う。
本当にその人達は日本に来たいと思っているのかな。

C子さんC子さん

外国人労働者に関する勉強会で、「東南アジアの労働者たちが本当に日本に来たいと思っていると思いますか」と国会議員に聞いた人がいるの。
その質問に対し議員は「フィリピン人のメイドさんはすごく来たがると思いますよ」と答えたの。そこで別の人が「フィリピン人のメイドさんを雇う日本の家庭ってそんなにあると思いますか」って聞いたら、「え?!メイドさんたちが来たいって言っているから」というので、「今の日本にメイドさんを雇うという文化がありますか?」って返したら、シーンとなってしばらく誰もしゃべらなかったの。
このケースなんかも、もう少し深く考えたほうがいいと思わない?

B男くんB男くん

日本にそんな文化がないことは、少し考えたら想像つきますよね。

C子さんC子さん

そうなんだけど、誰も返事しないんだもの、泣けるわ

B男くんB男くん

誰も思わなかったのかな。

A子さんA子さん

議員さんたちは雇えるだけの財力があるから欲しいのかも。

B男くんB男くん

そんな財力のある家の奥様がわざわざフィリピン人を雇うと思います?

A子さんA子さん

日本にもフィリピン人のメイドさんはいるけれど、だいたいは外資系企業とか大使館の人、それも海外から日本に派遣されている人が雇っている。

B男くんB男くん

根本的な需要は日本人じゃないんですね

A子さんA子さん

統計的には、日本にいるフィリピン人のメイドさんはゼロじゃない。
東京なんかはけっこう多いわよ

C子さんC子さん

いるいる、それに最近は企業がフィリピン人のメイドさんを派遣するサービスを始めたよね。

資料📖

日本は原則として専門的・技術的分野以外の外国人労働者を受け入れていなかったが、2015年に国家戦略特区法が改正されて「家事支援外国人受入事業」が可能となった。
最初は国家戦略特区の中の東京都・神奈川県・大阪市の3地域が認定を受け、外国人による家事代行サービスの提供が解禁された。現在は兵庫・愛知も加わって5地域で事業が行われている。

費用:一般的なケースだと、1回2時間 5000円
日本人スタッフによる家事代行サービスが先行しているが、
こちらも相場は1時間2000円~3000円程度と、フィリピン人とあまり変わらない。

A子さんA子さん

フィリピン人は英語が話せるというメリットをアピールしているんでしょ。

C子さんC子さん

そうなの、子供の送り迎えを英語でやってもらえば英語教育にもなるというんだけど、本当に英語教育を習わせたいと考えているお母さんが、子供にフィリピン人から英語を学ばせるかな? 実際のところはやっぱり需要はあまりないみたいで、そういう法律と現実の矛盾を誰かが指摘しないといけないんだよね。でも、政治家は明日の一票がなければただの人だから、なかなか厳しいことも言えないのね。だからそういうことは役人がやった方が早いと思う。それともう一つ話題になっているのが、大企業で検討されている「女性に限り転勤がない総合職」という働き方改革案。

A子さんA子さん

女性に限るの?

C子さんC子さん

育児をするのが女性だから女性に限るというんだろうけど、そこがまず問題だと思うの。
それに夫が転勤したら妻が一人で育てられる?

A子さんA子さん

試行錯誤の段階とはいえ、やっぱり実質的な議論を重ねてもう少し納得がいく方向に持っていってもらえないかな。

C子さんC子さん

“子供を産め”“労働力になれ”“いろいろ考えろ”“議論しろ”“冷静に判断しろ”って本当に何でも女にやらせすぎ。少しは男もやりなさい(笑)

ポイント☝

夫の休日の家事・育児時間と第二子以降の出生の割合は、正の関係

夫の休日の家事・育児時間別第二子以降の出生割合

(厚生労働省第14回21世紀成年者縦断調査)

少子化対策には、男性の育児参加は欠かせないですね。

4-3へ続く

一覧へ戻る