「社会と女性と法律と season2」

「機会は均等、結果は・・・」【その3】

3.「機会は均等、結果は・・・」
【関連する法律】
男女雇用機会均等法(1985年/社会と女性と法律とseason1Part15)
女性活躍推進法(2016年/Part1)
確定拠出年金法(2001年/記載なし)

【その1】法律はどこまで関わることができるのか…
【その2】自分のことなんだから
【その3】見えてるモノが違うから

その3 見えてるモノが違うから

企業の中でも様々な立場があるから、それを共有できればもう少し働きやすくなるのかな。男女のみならず立ち位置によって役割分担という考え方もあるよね。

女性差別に対する機会均等の話から寄り道して、今回は男性差別の話から始まりました。

B男くんB男くん

女性差別の話で気づいたんですけど、助産師って男性はなれないんですよね

A子さんA子さん

へえ、そうなんだ

B男くんB男くん

助産師の国家試験の資格は女性に限ると書いてありますよ

C子さんC子さん

きっと何かしら、明確な理由があるんでしょう?

A子さんA子さん

そう思うんですけど

B男くんB男くん

男性の助産師みたことありますか

C子さんC子さん

ないけど、なることもできないの?なりたいっていう人がいないかもしれないけど

ポイント☝

助産師の資格
保健師助産師看護師法 3条
「助産師とは厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じょく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子」

男性で助産師になりたいという人はいるが、男性の助産師に出産介護をしてほしいという女性はいない。逆に男性に介護されるとストレスを感じるという。

ニーズがないものに対して受験資格を広くしても、なったけれども仕事がない、断られるという状況が明らかなため、資格を男性に開放していないらしい。

看護師の場合でも、妊婦は男性看護師を断る権利があり、事前に確認する必要がある。これまでの実例でいくとほぼ100%、男性看護師を断る。

B男くんB男くん

仕事にしろ家庭生活にしろ、男性でなければならない女性でなければならないと考える必要はないけれど、出産の例にみられるように、ニーズがなければ特例はあってもいいということですよね。

C子さんC子さん

ある重工業系の会社での話なんですが、女性が男性と全く同じ扱いで工場勤務をしたいと言う話になったためこれまで考えたこともない部分で変えなくてはならない事があったと。工場内を人力で移動する資材の重さが数十㎏あったんだけど、女性がそれでは運べないとなって、半分の重さで二つに分けた。という事は男性が一往復で運べる分量の資材を女性が運ぶと二往復、倍の時間がかかることになる。これを重ねてお金に換算していくと会社としてはマイナスが発生するわけですよ。だから会社としては「なぜ、あえて運びたいの?運ぶ業務は男性がするからそれ以外の業務でそれはお互いに補い合って…」となるわけじゃない。でも、それでは男女平等ではないと言われて、結局二種類の重さのモノを作ったって…。なんとなく腑に落ちる様な落ちない様な話じゃない?

A子さんA子さん

それっていたちごっこの話で、「おまえは女で運べないから大変な仕事しないですんでるじゃないか」って言われるのが嫌だから、私にもそれをさせてくださいって自ら言った可能性もあるじゃない

C子さんC子さん

それこそ区別すればいいのに、できることとできないことで。

ポイント☝

男性と女性で仕事を区別する。それをきちんとすることで女性に対する会社の姿勢が伝わるし、女性はもちろん男性も納得して働くことができるのでは。

A子さんA子さん

昔は宿直当番がある会社もあったんですよ。まだセキュリティシステムが整ってなかったから、男性職員と男性事務員のペアで毎晩365日やってたのね。その会社に女性が一人配属されて代わりに男性が一人減ったので、その女性が私も宿直しますって言ったんだけど会社からやめてくれって言われたんです。いろいろな理由でね。

C子さんC子さん

男性と二人だと何か間違いがあったら大変だし(笑)

A子さんA子さん

そんな理由で事務員さんのほうも嫌だって言ったんだと思うし、もしやるとなったら施設も整えなければいけないから、会社としても頼むからめんどくさいこと言わないでほしいってなったわけ。それで、その女性はやってもいいと思ったけど、やらないでくれって言われたのでやらなかったら、当然、男性は昔より一日早く当番が回ってくるとその女性に文句を言うわけ。女性も言われたらおもしろくないから、会社がやらせてくれないって文句を言う。後から考えればそれ以外の仕事をやってくれればいいからということなんだけど、なんかね、文句言っちゃう女の人の気持ちもわからないでもない。それがゆえにいらない嫌味を言われたこともあるんだろうし、会社としても解決しなければいけないしということで困っていたわけ。結果はというと、セキュリティシステムがよくなって、宿直が不要になったんだけどね。

B男くんB男くん

宿直っていう仕事はしんどい仕事だから、みんながしたくないのは理解できる。女性に宿直させるにはそれなりの設備を整える費用がかかる。一方で女性を宿直当番からはずすと男性の負担が増える。会社としても対策の必要がわかりながら、そのタイミングを計りきれないということではない?

資料📖

男女雇用機会均等法が1986年に施行され、それに伴い以下の施行規則も定められた

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則
(深夜業に従事する女性労働者に対する措置)

第13条
事業主は、女性労働者の職業生活の充実を図るため、当分の間、女性労働者を深夜業に従事させる場合には、通勤及び業務の遂行の際における当該女性労働者の安全の確保に必要な措置を講ずるように努めるものとする

具体的には「深夜業に従事する女性労働者の就業環境等の整備に関する指針」や関係法令により定められている。

例:
女性が一人で作業することを避ける仮眠室や休憩室を男性用と女性用に区別して設ける
C子さんC子さん

これはある警備会社に入社した女性の話なんだけど、その会社は新入社員には必ず現場を経験させるの。でも女性に夜間の警備業務をさせるわけにいかないから、昼間だけですむ業務でいいですよと言われたの、そうしたら同期の男性から「いいよね、夜やらなくって」と言われたそうです。

A子さんA子さん

会社としては、宿直の話も警備の話も、その部分だけを見れば男女の平等という観点からの理解はできるけれど、全体を見たらその必要があるのか、そこまでお金をかけるべきなのかと考えたのかもしれない。

C子さんC子さん

警備会社勤務の女性は同期の男子社員から「厳しい現場を経験しなくても同じように昇給試験受けられてずるいよな」って言われたそうです。彼らからすれば自分たちが損してるって絶対に思ってるはず。

A子さんA子さん

こういう考え方ができあがっているから、それを見直すことにお金をかけたくないと思うのか、長い目で見てやった方がいいと思うのか、企業が考えなきゃいけないことだと思うけど。

ポイント☝

日本の企業経営はこれまで家族主義といわれ、主として男子正規社員を対象に国の貧困な社会保障制度を補完してきました。しかしいまや労働者の大半は女性やパートタイマー、中小企業の労働者で、その人たちをどうするかが問題となっています。女性のキャリア志向も高まり、女性の活用は本人にとっても企業にとっても価値が高くなっていますが、女性のための政策を何もかも企業に押し付けると、企業が女性を採用しなくなる心配はないのでしょうか・・・

資料📖
資料
A子さんA子さん

若い男性がどんどん減っている世の中でそんなこと言っている場合じゃなくなるかもしれない。

B男くんB男くん

働く女性が増えてきているという現状において、ある意味数は力ですよ

C子さんC子さん

確かに数は力です。

A子さんA子さん

ニーズと供給のバランスが経済学的にいうと崩れているわけですよね。保育園足りない問題も、保育園も足らないけど保育士も足らない。日本はやる気とか志の搾取がすごく多い国だと思っていて、看護婦さんとかも、志の高い人が低収入でもがんばってくれていて、そういう人にものすごく依存しているところがある。いろんなボランティアもそう。

B男くんB男くん

日本の男性はすべからく女性に依存していると思いませんか

C子さんC子さん

私はそういうところがあるなって思っているけど、若い女の人と仕事をすることが増えて、最近の20代の女の子たちって人に依存するのが上手だなってすごく思う。

B男くんB男くん

専業主婦も男性に依存していたのでは

C子さんC子さん

それは金銭的に依存していただけで、生活は男性が専業主婦に依存していて、結局共栄共存だと思う、

B男くんB男くん

助産師や看護師、介護もそうでしょ。みんな女性に依存していますよね。

C子さんC子さん

まあ、人は女性から産まれてくるんだから、男性は産んでいただくところから女性に依存していますから

B男くんB男くん

その女性をなんで差別するんでしょね

A子さんA子さん

まあ、差別というか、分業が心地よかったんでしょうね。

C子さんC子さん

分業ね

B男くんB男くん

女性は心地よかったのですか、「そんなもの女性にさせとけ」みたいな言葉が昔あったじゃないですか

C子さんC子さん

今もあるある

B男くんB男くん

女性のやることを低く見ているというか、そういう仕事やから女性にやらせておけとか、そういう意識ってまだまだあるのかな

A子さんA子さん

ないとはいわないけどね、ずいぶんなくなりましたよ、お茶だしみたいなこととか。

ポイント☝

女性だからという理由で押しつけられる仕事

お茶くみ、電話番、掃除、受付といった補助的な雑用的な業務

これに対し厚労省のHPではQ&Aとしてこのように紹介している。

<業務の配分>

男性社員は忙しいので、お茶くみや掃除等の雑用は女性社員に任せていますが、何か問題はあるでしょうか?
男性労働者は通常の業務のみに従事させ、女性労働者についてのみ通常の業務に加えてお茶くみ・掃除等を行わせることは均等法に違反します。
社内においてこのような取扱いが生じないよう徹底をお願いします。
C子さんC子さん

最近の若い男の子たちって上手にコーヒーをいれたりお茶をいれたりするもの。でも私たちのころの男の人にお茶を入れてもらってもおいしくないので、なら私がいれたほうがおいしいから時間頂戴って話だったんだけど。確かに昔は部長のお茶とかいれてたね。

B男くんB男くん

朝一番にきてそれぞれのコップを用意してお茶いれていたことあったよね

C子さんC子さん

いれていたね

A子さんA子さん

新人が机をふくというのがあって、私は当然一緒に入った同期の男性にもその順番があると思ってあんたもやるのよねっていったら、わかったって。私は全く純粋に新人の仕事って言われたから言っただけなんだけど。(笑)

C子さんC子さん

昼休みの電話番はものすごく普通に女子が回り持ちでする。男子社員はしないから。均等法で一緒に入ったのになんでって思ってた。

資料📖

「働く女性のホンネについての調査」2015年
現在の職場環境に関して感じていること
「雑用(コピー取りやお茶くみなど)を任されやすい」(25.6%)
「女性管理職が少ない」(25.6%)
「男性のほうが昇給・昇格が早い」(25.5%)

現在の職場環境で、「男女差別や女性らしさを強要されている」と感じたことがあるか、ある場合はどういったことでそのおうに感じたか(複数回答)

ジブラルタ生命 20歳~59歳の就業女性2000名対象

C子さんC子さん

給茶機の掃除を女の子が順番にやるのも何も疑問に思わずにやってたけど、今だったら大変だよっていうことがいっぱいあったね

B男くんB男くん

そうですね、女性が声をあげて少しずつ変わってきたんでしょうね。「私の仕事はお茶くみじゃない、業務ならみんなで平等にやればいい、私だけがなぜしなければならない」のって言える自信を持ったんじゃないですか。

A子さんA子さん

たぶんそう言われてぐうの音も出なくて、そうだねってなったんでしょうね

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