「社会と女性と法律と season2」

「子育ては誰がする・・・」【その3】

4.「子育ては誰がする・・・」
【関連する法律】
育児休業等に関する法律(1992年スタート、2017年改正/社会と女性と法律とseason1Part16.17)
改正国家戦略特区法(2015年)
子ども・子育て支援法(2012年)
児童福祉法(1947年)

【その1】わざと落ちるって何?
【その2】夫と子育て
【その3】グローバルな環境で育つ

その3 グローバルな環境で育つ

国籍が違う友達や保育士と一緒の毎日、コレってグローバルなの???

A子さんA子さん

保育園の絶対数が足らないということがまず問題だと思う。“延長保育の融通がきく”とかいった理由などで第一希望、第二希望に人気が集中するという状況も考えないといけない。だからといって保母さんに負担をかけると保育のレベルが下がる心配もあるので、私は保母さんとして優秀な外国人労働者がきてくれたらいいと思う。決して単純作業だとか安い労働力という観点からでなくてね。

B男くんB男くん

外国人の保母さんに抵抗はないですか

A子さんA子さん

私はないわ

C子さんC子さん

私もないけれど、優秀な人というのは絶対条件かな。

A子さんA子さん

語学以外は、日本の保母さんに求めるものと同じものを求めたいけど、日本語で受験してほしいとかいうことじゃない。保育に関する知識とかも人によっていろいろだろうから、プラスマイナスはあると思う。

C子さんC子さん

日本の保母さんも人によって違うだろうしね。ただ、気になるのは行儀作法や礼儀作法が国によって違うことかな。子供がまだ小さい時は、行儀や礼儀って見たままが自然と身についてしまうから、そういう日常のことをきちんと理解してくれている人ならいい。日本語で受験してほしいとか、同じ学力とかいう条件は必要ないと思っている。

A子さんA子さん

これから日本においてグローバルってどういう意味なんだろうって考える時に、日本のカルチャーを壊せとは思わない。それよりもオリンピックを契機に外国人が増えて、顔つきが日本人と同じでも中国人だとか、西洋人だけが外国人じゃないという環境に少しずつ慣れていけばいいと思う。グローバルになるというのは、自分たちだけじゃない人がいるということを知ることで、そういう意味でコスモポリタンになればいいなと。

ポイント☝

保育士不足については、2014年に「日本再興戦略」が改訂されて、その解消が強化されることになりました。具体的には、国家戦略特区内の外国人児童が多い認可外保育施設において、外国語でのコミュニケーションの必要性、子供の安全を確保する必要性などから、外国人保育士の採用について速やかに検討し結論を得るというものです。

また、この方針に基づいて外国人保育士の必要性について関係自治体から聞き取り調査をしたところ、
1. 全員が同じ国籍の児童ならその国の資格を認めてもいい
2. 外国人保育士の多くは日本語を話せず日本の資格取得が困難。外国の資格を認める必要がある。
といった意見に集約されました。

しかし、2018年12月に可決された出入国管理改正法案では、拡大された在留資格に保育士は含まれていません。

ポイント☝

国家戦略特区とは…
“世界で一番ビジネスをしやすい環境”を作ることを目的に、地域や分野を限定して、大胆な規制・制度の緩和や税制面の優遇を行う規制改革制度。当初は東京圏や関西圏など6区域が指定され、現在は10区域に広がっている。

C子さんC子さん

外国人とのコミュニケーションといえば、このあいだニューヨークへ行ったときに、ホットドッグを買ったんだけど、注文を受けてくれた人が店の奥にいる人へ話した言葉がどこの言葉か全くわからなかったの。私の英語が通じてるかどうか確認したかったので、「私の注文を英語でそのまま伝えてくれたらいいな」と思ってたんだけれど違う言語だったから「もういいや、出てきたものをそのまま食べよう」って。(笑)

A子さんA子さん

私は東南アジアを一人で回った時に、カンボジアでタクシー配車アプリのグラブ(東南アジア版ウーバー)を使ったの。運転手さんは全く英語がしゃべれないんだけど、彼がカンボジア語で「あと5分で着く」ってアプリに打ち込むと英語になって私の手元に届くの。私が「ちょっと待ってて」と英語で打ち返したら、それが今度はカンボジア語になる。もうそういう世の中なんだって結構感動しました。

ポイント☝

スマートフォンの画面で見たアプリと地図上の位置情報
左画像:グラブとウーバー 右画像: 地図にタクシーの位置が表示される(国内の例)

B男くんB男くん

そのレベルのものはもうそれでいいんだよね

C子さんC子さん

英語が話せるというのがグローバル化の条件ではないし、何を話すかが基本なのは当然。ただね、英語が話せたらよりいい仕事もできるし気持ちも伝わる。でも買い物するとか書類出すとか、生きていくことだけなら英語を話せなくても全然困らない。

B男くんB男くん

外国で女性が一人でタクシーに乗るって、けっこうリスクじゃない?

C子さんC子さん

うん、よく乗ったね

B男くんB男くん

グラブに対する信用?
ホテルからタクシーに乗る方がよくない? ホテルの信用があるから。

A子さんA子さん

実際に使っている人の話を聞いてグラブを安全だと判断したの。友人はグラブに旦那さんの携帯を登録してあって、ボタンをおすと今何番のタクシーに乗ったという情報がいくんですって。それで目的地に着いたら、I am safely at the destination(無事ついた)というボタンを押すんですよ。そうすると旦那さんは彼女が着いたことがわかる。移動の途中もずっと動きを追えるから、仮に途中で変な方向に行ったとしてもどの地点で進路を変えたかがわかる。そういう制度になってるから、高いお金を出してホテルのタクシーで帰るよりこれで帰るほうが安全だって。
そういう世の中だから、テクノロジーは使えるものは使ったらいいと思うの。私はグラブのおかげで行動範囲が広がったし、出歩くことのハードルは低くなったと思う。

C子さんC子さん

ところで、保育園の話に戻るけど、保育園っていつまでたっても病児保育について進展しないと思わない?子どもにちょっと熱がある時でも預かってくれると、とっても助かると思うんだけど。
病院や医者の数は十分あるのにね

A子さんA子さん

病気の時なんだよね、一番助けてほしいのは

B男くんB男くん

ちょっと制度を変えればできないのかな

ポイント☝

病児保育について
子ども・子育て支援法(2012年)第59条
市町村は児童福祉法第6条3項13に規定された病児保育事業を行う
児童福祉法(1947年)第6条の3項13
病児保育事業とは、保育を必要とし、病気にかかっている乳児・幼児・小学校児童に対し、保育所等で保育すること

歴史
昭和40年代前半に始まり、小児科や乳児院を中心に整備され、その後子育てと就労の両立支援として、平成6年「エンゼルプラン」(緊急保育5ヵ年事業)で制度化された。平成11年の新エンゼルプランで実施施設が保育所に拡大

資料📖

病児保事業所には、非対応型(訪問型)・体調不良児対応型・病後児対応型・病児対応型の4種類があり、実施か所は4つ全てを網羅しているが、利用者数は病児・病後児対応型を合わせたもの(厚生労働省)

C子さんC子さん

保育園に子どもを預けていると、子供が熱を出したらママがお迎えに行くでしょ。子供は“熱が出たらママが迎えに来てくれる”ということがわかったら、そのために熱を出すことくらいはとても簡単なことなの。子どものメンタルというのはそういうものだから、それをわかってきちんと対応していかないと大変だと思う。子供のメンタルが落ち着くまで振り回されるのは母親だし、父親が会社を休んでくれてもだめなの。子供は母親に迎えにきてほしいから熱を出しているのであって、そういう子供のメンタルをわかる人が制度も作らないとね。

ポイント☝

子どもの看護や病院へつれていくために休みが申請できる看護休暇制度が、2002年に育児・介護休業法の一部として導入されました。2005年には法律が改正されて義務化されました。概要は…
・労働者一人当たり年間5日間の休暇を取得できる。
・両親共に申請すれば10日間となる。
・緊急な場合が多いので、当日の電話等での申告もOK
・半日単位での取得も可能。(2017年改正)

C子さんC子さん

例えば障害児に関しても同じで、今は議員の中に障害を持った子供を育てている人がいるから、状況をふまえた法律ができると思う。

A子さんA子さん

そういう意味では、いろいろな人が議員にならないとね。障害といえば、障害を持ったタイの子供、同じく障害を持った日本の子供、障害のない日本の子供の3者が、一緒になってサッカーをしたことがあるの。タイと日本では手話も違うけれど、全く何もかも無視して、サッカースクールに入れたのね。最初のうちは、「こっちこっち、パス出せよ」なんて声を張り上げてたんだけど、こちらを向いていない子に声を張り上げても絶対わからないわけ

C子さんC子さん

聞こえてないものね。

A子さんA子さん

手を振ったって見ていないからわからない。でもね、子どもたちが自分で気づくために、先生がまる一日かけて、ヒントを出しながら教えるわけ。そのうち、「あ、そうか、耳が聞こえない子たちは、パスを出したくないのでなくて、こちらに気づかないだけなんだ」とわかると、走っていってとんとんって触れて、こっちこっちって知らせるうちに、普通にサッカーの試合が成立していくわけ。それを親に見せたら、親の方が感動してしまってね。子どもは一日サッカーできて楽しかったなっていうくらいなのにね。そんな子供たちが最初に驚いたのは、“意思が通じない”ということでなく、耳が聞こえない子が“奇声を発する”こと。でもね、それって奇声でなく彼らなりのコミュニケーションなんだよね。それも、いつ聞こえなくなったかによっても違ってくるわけ。昔聞こえてた子と最初から聞こえない子では発する声が違ってくるの。そういうのって一度経験すればわかるわけで、2回目からは驚かないで接することができる。だからやっぱり保育園の話じゃないけれど、いろいろな人に接するってすごく大事だと思う。核家族の限界ってあると思うな。

B男くんB男くん

日本人でも外国の幼稚園に通っている子どもは、肌の色が違うとかが当たり前のように感じるかもしれないし、障害も一つのそういうとらえかたをすればいいんだろうね。

C子さんC子さん

それをとらえて、受け入れられる子は受け入れたらいいし、無理だという子はその子はその子で考えればいいし、画一性がなくても全くかまわない。そこにはルールも罰則もない。保育園はそういう生き物を預かる場所なんですよ。だからそれを法律で縛るという考え方では、いつまでたってもうまくいかないのかなって思う。さっきね、保育園の先生が東南アジアの人で抵抗ないですかって私たちに聞いたじゃない。抵抗はない、でもこれをされたらいや、これはしないでとか、こういう条件はやっぱり求めるよねというのもあるじゃない。これってイエスノーだけでは答えられない部分があるのよね。

B男くんB男くん

日本人でも外国人でも同じだよね。

C子さんC子さん

そうなのよね。親によっても違うし。

A子さんA子さん

そうよねえ

C子さんC子さん

子供によっても違うよね

5-1 “保育園ってサービス業なのだろうか”に続く

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