“妻が働く”夫たちの本音 第5回

(前半)

【プロフィール】
S・Yさん 1985年生 32歳
勤務先:ECサービス会社
業種:システム開発
結婚時の年齢:30歳(奥様:28歳)
お子さん:なし

 
 都心の新しい高層オフィスビルのカフェに現れたSさん。フリーアドレスの職場なので、このカフェで仕事をすることも多いのだそう。
 色白でメガネをかけた丸顔は、いかにもエンジニアらしく、一つのことに集中するタイプのように見えます。

「結婚したのは2015年だったかな。大学時代からずと付き合ってたんです。学校は違ったんですが、飲み会かサークルか、友人の紹介で知り合って付き合い始めました。2歳年下です」

 奥さんのお仕事は眼科の検査技師。医療系の学校に通われていたそうです。

「病院勤務なので、土曜日も出勤だし、朝も早い。いろいろな患者さんの相手をしなければならないので、結構ストレスがあるようです。仕事が終わるのは早いようですけどね。僕の方は朝10時就業で、夜帰るのは10時、11時になります。だから平日会うことはないです」

 会うことはないって一体……。

「実は一緒に住んでないんですよ」

 結婚して2年ほど経つというのに、一緒に暮らしていないとはどんな事情があるのでしょう。

「私の職場は都心の赤坂。彼女の勤務する病院は千葉県の柏市にあります。その中間くらいでいいところがないかと探していたのですが、なかなか気に入った物件に巡り会えず、そのままになっています」

 そのままって、どういうこと? 彼女はどこにお住まいなのでしょうか。

「彼女は実家暮らし、千葉県我孫子市です。彼女の実家に住んで、いわゆるマスオさんになるということも考えましたが、それだと私の通勤時間が1時間半くらいになっちゃうので。あちこち探しているうちに時間が経ってしまって。今は家探しもしてないんです」

 結婚式も挙げて、新婚旅行も行って、籍も入れて、でも一緒には住んでいない。これも新しい結婚の形なのでしょうか。

「週末に会うだけなので、週末婚とでも言うのでしょうか。おたがいの家の中間あたりで会って、買い物したり食事したり。夜になると帰る。彼女は土曜日が仕事なので、だいたい日曜に会うのですが、月曜日は仕事なので、泊まることはないですね。こういう形があるのかどうかわからないですけど、結婚する前と何も変わってないです」

 結婚してもバラバラの生活で、会うのは週1回。なにかと心配にならないのでしょうか。

「付き合い始めてから11年くらい経つので、心配になるとかそういのはないですね。長く付き合っているから、早く一緒に住んで、という盛り上がりがないのかもしれない。でも週一回なので、新鮮ですよ」

 ものは考えよう。この二人には倦怠期という言葉はないようです。でもこの状態、奥様には不満はないのでしょうか。

「彼女も不満はないと思います。10年近く付き合って、30歳近くなったので結婚したいということで、それじゃあと結婚したんです。ただ付き合うのではなく、きちんとした形にしたいと言い出したのは彼女の方で、ちゃんと結婚という契約をしているので、安心してるんじゃないでしょうか」

 Sさんは一人暮らし、奥様は実家暮らしという変則夫婦。さて将来のことはどのように考えているのでしょうか。
(後半へ続く)

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