“妻が働く”夫たちの本音 第4回

(前半)

【プロフィール】
T・Sさん 1962年生 55歳
勤務先:インターネットサイト運営会社
業種:営業職
結婚時の年齢:35歳(奥様:32歳)
お子さん:なし

 
 ツーパートの刈り上げヘアにおしゃれな黒フチメガネ。エンタメ業界を渡り歩いてきたTさんは50代半ばには見えない若々しさ。「好きなことをずっとやってきたんで」という言葉の通り、人生をエンジョイしているという雰囲気を醸し出しています。
 Tさんと奥様のお付き合いは大学2年生の時からだそうです。

「長いですよね。でもそんな劇的な恋愛でもないんです。お互い実家暮らしだったので焦って結婚する必要もなかった。当時はふたりとも仕事が忙しかったし、30も過ぎたのでそろそろという感じで結婚しました」

 結婚20年を過ぎても、ふたりの関係はあまり変わっていなようです。

「僕は下の名前でMさんと呼ぶんですけど、彼女は僕のことを苗字で、T君と呼んでます
からね。お前もTじゃん、みたいな話ですけど。他の家庭とはちょっと違うのかもしれません。友達みたいな感じです。」

 奥様は百貨店の広報業務。基本は土日が休みですが、繁忙期には休日出勤もあるようです。
「クリスマスシーズンやセール時期などは忙しいですね。夜11時12時の帰りになります。でもうちでは仕事の話はしないですよ。たまに上司の話など聞いたことはありますけど。僕は平日夜、飲みに行ってしまうことも多いので、夕飯は別々。彼女もひとりで食べるときは惣菜を買ってきたりして、適当にすませているようです。平日はあまり顔を合わす機会も少ないですね」

 お互いに仕事を持ち、忙しく過ごす平日。休日はどんな過ごし方なのでしょうか。

「共通の趣味というようなものはないんですよ。僕はお酒飲むのが好きなんですけど、彼女は飲まないし。でも、普段会わない分一緒にいれば喋ることもいろいろあるし、話をしていれば面白い。週末は一緒に食事をするようにしています。趣味というのではないけれど、たまに旅行に行きますよ。京都、奈良や温泉地とか。行きたいというので付き合う感じですけどね。」

 家庭ではちゃんと奥様に気を遣っているそうです。

「掃除や洗濯は基本的に妻がやって、私はゴミ捨てや、トイレ掃除、洗濯物の取り込みをしたり、時間があれば布団を干したり、まあ気は遣ってますよ。だから長くやっていけてるのかな。お互い負担になることはやらないようにしています」

 お互いあまり干渉しない夫婦なのだそう。買い物に出かけた時のエピソードがふたりの関係性を物語ります。

「彼女が買い物をしているあいだ、私はひとりで飲んでいたんです。買い物が終わったと彼女から電話があって、私はもう少し飲んでいると言うと、じゃあ先に帰るねと。でも後から怒られることはないんですよ。一緒にいないと怒る人もいるじゃないですか。それは一切ない。まあお互い信用しているというか。基本他人だと思っているんです。家族ですけど他人。他人行儀ではないけれど、人として尊重するというか。一定の距離感を持っている。それが私の性格、妻の性格なんですよ。妻に対する要望は特にないですよ。いい関係だと思います」

 子供がいないので、今はマイペースで過ごしていると言うTさん。でも結婚当初は子供ができる想定でマンションも購入したのだそうです。仕事を抱えながら子供を育てることの難しさ。そんなことにも話は及びます。
(後半に続く)

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