“妻が働く”夫たちの本音 第1回

(後半)

【プロフィール】
S・Kさん 1974年生 43歳
勤務先:大手商社系のITシステムサービス会社
業種:営業職
結婚時の年齢:30歳(奥様:31歳)
子供:なし

 

 お互い仕事を持ち、平日は忙しく過ごしているSさん夫婦。奥さんはマネージャー職に就いていて、上司として部下を連れて飲みに行くことも多いそうです。夜10時、11時に帰っても、それから二人でバーボンを飲み始めることもしばしばだとか。

 そんな奥さんとの収入のバランスはどうなのでしょうか。
「嫁の方が収入は多いですよ。子どもはあきらめているので、もっと稼いでもらって、上を目指してもっと頑張れと言っているんです。お互い職種は違っても同じIT業界なので、話は分かるんです。家でも仕事の話はよくしますよ」
 顔は知らなくても、奥さんの同僚や上司の名前までよく知っているというくらい、家庭でも仕事の話をよくしているそう。もちろん仕事の悩みも聞いてあげます。
「最近壁に突き当たっていて、引退してネコを飼いたいなんて言ってるんですよ。でもね、土日の嫁を見るといつもソファで横になってスマートフォンを見たりしてるだけで。仕事をやめたら毎日そんなんだよって言ってるんです。ネコは60歳くらいでいいんじゃないかと。アドバイスというわけではないですが、モチベーションを上げられるような話をして、励ましています」

 Sさんが育った家庭は、モウレツ社員として働く証券マンのお父さんと専業主婦のお母さん。そして5歳年上のお兄さんという4人家族。
「父は団塊の世代で、典型的な昭和の家庭でしたね。母に向かって、俺が稼いでるんだから家事はお前がやりぬけ、と言うような父で。まったくの反面教師ですよ。だから早く独り暮らしがしたくて、大学に入ったらすぐに家を出ました。兄は銀行に就職したんですが、家を出るどころか、日本を離れてチリ、ブラジル、インドと転々としてますからね」

 一時期は熟年離婚の危機もあったというご両親。今でもお母さんは文句を言いながらも熱海でご一緒に暮らしているそうです。
 そんなご両親とはまるで違うご自身の夫婦関係。改めて奥さんとはどんな関係かと問うと。
「妻であり、友達であり、一番の親友ですね」

 妻の長所短所を良く理解し、あるときは率先して家事をこなし、またあるときは妻のモチベーションアップも図るSさん。家庭におけるスーパーマネージャーのよう。そんな彼が最近会社の若い人たちを見ていると気になることがあるという。
「今のご時世、女性も一人で十分生きていけるから、男性と付き合う理由、ましてや結婚する理由なんて見つからないんじゃないでしょうか。20~30代の女性はそう思っている人が多いように思います。僕らは楽しければいい、二人でいるのが楽しいからということで一緒にいますけど」

 仕事を持ち一人で生活する今どきの働く女性に対する思いを聞くと。
「根底に、働きたい女性は普通に働くべきと思ってます。夫が家庭に入ってもいいじゃないかと。男が働いて女性は家庭にというのには違和感を感じるんですよね」
 女性も仕事をする。Sさんにとってはごく普通の当たり前のことです。

「妻にはもっと偉くなって稼いでほしいですよ。何なら俺が仕事辞めて家庭に入ってもいい。家事嫌いじゃないし」
 その柔軟な姿勢。家長としての強烈な印象を残したお父さんの影響があるのだろうか。

 似た者同士の仲良し夫婦。そんな印象のご夫婦。もう一度結婚するとしたらまた奥さんを選びますか、と問うと。
「う~ん、イエスかな。そうね、結婚して何十年も一緒にいることを考えると、やっぱり今の嫁を選ぶかな」

数十年後リタイアしたらどんな暮らしを選ぶのでしょう。
「東京じゃないところで、のんびり二人で暮らしたいですね」
一人より二人が楽しい、という結びつき方。これも夫婦の結びつき方のひとつでしょう。

一覧へ戻る