“妻が働く”夫たちの本音 第1回

(前半)

【プロフィール】
S・Kさん 1974年生 43歳
勤務先:大手商社系のITシステムサービス会社
業種:営業職
結婚時の年齢:30歳(奥様:31歳)
子供:なし

 

長身で細目のメガネがよく似合うSさんは今年43歳。スリムな体つきはそのクールな印象をより引き立たせています。

IT業界の営業畑でキャリアを積んできた彼は今の会社で4社目だそう。
「出身は神奈川県秦野市。大学は都内だったので通えないことはなかったんですけど、一人暮らしをしてました」
Sさんには今も続ける大事な趣味があるのです。
「どうしても家を出たくて一人暮らしを始めたんですけど、おかげで学生時代はバンド漬けでした」

彼らの学生時代はバブルの後の就職氷河期真っ最中。Windows 95が発売され、インターネットが普及し始めたころのこと。
「これからの社会インフラはITによってがらっと変わるよね、ということでIT業界を希望していて。大学を卒業して入社したIT系の会社に、嫁も同期で入社したんです。始めは何の接点もなかったんですけどね」
大学時代から続けていた趣味のバンド活動。奥さんとの接点はそのバンド活動でした。
「嫁は学生時代からのバンドをずっと続けていたんですけど、そこのドラムが抜けてしまって。代わりに叩いてくれと声をかけられたのが知り合うきっかけでした」
共通の趣味は二人の間を近づけるのに大変役だったようです。
「お互いに付き合っていた人もいたので、すぐに付き合うことはなかったんですけど、あるタイミングで付き合っている人と別れたということを聞いて、お互い音楽が好きだし、同じように酒も飲むし、一緒にいたら楽だねということで付き合い始めたんですね」

近くに住んでいた二人は、お互いの家を行き来して仲を深めていきました。でも仕事に対して前向きな奥さんは、自分の将来を考え大きな決断をしたのです。
「嫁の実家は埼玉の上尾なんですけど、そこに帰って公認会計士の勉強すると。結局公認会計士の試験には落ちてしまうんですが、また東京で仕事を始めるというタイミングで結婚することにしました。私が30歳の時です」

結婚前には二人の生活はどんなものになると思っていたのでしょう。
「まあ、付き合っている間には一緒に住んでいることもあったので、大体どういう暮らしになるかは分かっていましたね。二人とも酒が好きだし……」

結婚してからずっと共働きで過ごしてきたSさんたち。「働く妻」に対しての思いを聞くと。
「ずっと働いてもらいたいと思ってますよ。平日は忙しくて外食も多いし、二人とも酒が好きなんでエンゲル係数高いんですよ。バンド関係の趣味にもお金が結構かかりますしね。都内のマンションで暮らしてますが、今の生活を維持するにはお互い働かないとね、と話しています。結婚してからは、当面お金を貯めようと子どもも作らずにいましたが、ちょっと機会を逸してしまった感じです」

はたから見ると優雅そうなダブルインカムの家庭。家計の分担などはどうなっているのでしょう。
「自分の給料から一定額を嫁の口座に払い込んで終わり。平日は二人とも忙しくしているし、嫁の方が帰りが遅いことがほとんど。家計といっても家のローンが中心ですけどね」

忙しい二人。平日に時間が取れないと、掃除洗濯はやはり週末にまとめてとなります。
「一人暮らしが長かったので、実は几帳面できれい好きだというか。率直に言うと妻は正反対。家事の分担というよりは、自分が掃除機をかけ始めると妻もやらなきゃと床ワイパーがけを始めるという感じです」
夫が家事を始めると、やおら手伝い始める妻。
「ここ数年は分担をじゃんけんで決めてます。昼食を食べた後の片付けとゴミのまとめか、風呂の掃除。嫁はなぜか風呂掃除が嫌いでいつも片づけを選んでますけど」

自分から家事を始めない妻。夫として腹が立つことはないのでしょうか。
「一回ぶち切れたことがあるんですよ。週末に飲んでる時なんですけど。俺ばかりでなくお前もやれと。飲んでるうちに沸々としてね」
そのまま険悪な展開かと思われたが……。
「そしたら妻から、『居酒屋で言うことじゃない』とたしなめられました」
お互いを理解し合っている、いい関係の夫婦のようです。
「よく言われるんですよ。趣味も一緒で、酒が好きで、似たもん夫婦でいいね。幸せもんだよって」
友達夫婦、仲間夫婦の典型なのでしょう。

(後半へ続く)

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