“妻が働く”夫たちの本音 第4回

(後半)

【プロフィール】
T・Sさん 1962年生 55歳
勤務先:インターネットサイト運営会社
業種:営業職
結婚時の年齢:35歳(奥様:32歳)
お子さん:なし

 
「結婚を機に郊外に3LDKのマンション買って。その時はいわゆるサラリーマン的な将来を描いていたんですよ」

 忙しく仕事をする毎日。気がつけば子供を待たない夫婦になっていたようです。

「娘や息子がいたらと思いますけど、特に欲しいとまでは思わなかった。当時は忙しくて、子供ができても結局彼女に任せっきりになってしまったでしょう。彼女の方も販促宣伝の仕事が忙しい時代だったので、大変な負担だっただろうなと。実家もちょっと遠いので預けることもできないし、マンションを買ってしまったので動けないしと、いろいろ考えているうちになんか過ぎちゃいましたね。彼女が仕事を辞めて家にいればまた状況は違ったかもしれませんが、彼女は仕事を続けたかったし、それを尊重する上で、犠牲というと言い方は違うかもしれませんが、結果としてそうなってしまったかなと」

 奥様も当時は仕事を犠牲にしてまで子供を作ろうとは思っていなかったようです。

「欲しいと言われれば作ったかもしれないですけど、ほんとになかったんですよね。彼女の両親から何か言われてもおかしくないですけれど、それもなかった。お互い仕事が忙しくて、気がついたら40歳過ぎていたという。彼女は多分不器用なんです。ひとつのことに集中してしまうというか。体もそんなに強くないので、いろいろなことを一度にできないんでしょうね」

 友達の関係から始まった夫婦、今改めて家族の大事さに気づいたと言います。

「他の夫婦とはちょっと違うかもしれないです。子供がいると『お父さんしっかりしてよ』とか、子供目線がありますけど、私たちは学生時代から友達のままで過ごしてきた。仕事上はいろいろありましたけど、大きい転機というものがそんなには人生上なかったなあと。この歳になって妻の母が亡くなり、その時初めて家族なんだなと思いました。改めて彼女の存在を家族として考えましたね。今更ながら」

 働く妻に対するTさんの気遣いはこんなところにも表れます。

「酒を飲むとイビキがうるさいということで最近寝室を分けたんです。今までは同じ部屋でベットを並べて寝ていたんですけど、和室が空いているので布団で寝始めたら、意外に布団がいいなと。夜遅く帰ってきても相手を起こしたりすることがないのでいいですよ」

 今後の人生、どのように過ごしていきたいと考えているのでしょう。

「この歳で会社に残れるのはいいことだと思うので、ふたりとも可能であれば60歳くらいまでは働きたいと思っています。60歳がひとつの区切りですからね。次のことを考えなきゃなあと、ぼんやり思っていますけれど。子供がいないので、もう少しシンプルに生活できるなと。力入れて生きても、今はなかなか生きづらい時代ですからね。楽しくやっていくというのが大事ですね。それは夫婦関係にも言えることですけれど」

 それぞれが楽しく人生を過ごすおふたり。奥様から何か言われることはあるのでしょうかと尋ねると。

「一切ないですね。飲みすぎるとちょっと言われますけど、言われるうちに入らないかな。お互い干渉しないから気楽じゃないですか。合ってるんでしょうね。生まれ変わってもまた同じような人と結婚するんだと思います」

 それぞれが仕事を大切にしながら、ゆっくりと家族になっていく。そんな夫婦の関係性もあるようです。

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