喚起のしらべ volume1

『失恋』

喚起の1曲 〜Guts for Love/Garland Jeffreys〜

 失恋直後。私の場合は、とてもじゃないけど自分で音楽を選んで聴く心境になれない。時間が過ぎて、ようやく失恋の悲しさや悔しさ、寂しさ漬けの状態に慣れるのか、
はたまた飽きるのか? ふと耳にした歌に心が震えたり、今の自分に合う音楽を探したりする隙間が生まれる。

 そんな時に聴きたくなるのが、ガーランド・ジェフリーズの「Guts for Love」。

 この曲と初めて出会ったのは17歳の頃。
大好きなラジオ番組に送った葉書が読まれた夜のラストナンバーだった。

 「“君には愛に立ち向かうガッツがあるかい?”そんなふうに歌っています」。

 たぶんDJの曲紹介はこんなニュアンス。
ラジオで名前を読まれたドキドキが残る私の心身に、歌がゆっくり染み渡ってきた。
問いかけるように、確かめるように、優しく歌いかける声。
サビで繰り返される“Do you have guts for love?”という歌詞は、
高校生だった私にも分かるシンプルなメッセージ。
「そうだな。ガッツを持たなきゃね…
大して恋愛の経験もなかったけど、自然と歌の世界に引き込まれたのだった。

 それから約1年半後、同じ番組で再び葉書を読んでもらった。
何と! その日のラスト曲も「Guts for Love」。
もちろん偶然以外の何物でもない。だけど自分だけが知っている素敵な偶然。
一方的に仲間意識が芽生え、以来、私の人生に欠かせない1曲となった。

 「Guts for Love」は1983年に発表されたアルバムのタイトル曲。
大切な人へ向けたラブバラードなのだが、私は失恋後、音楽が聴ける状態になると
必ずこの曲と向き合う。
曲に向かって苦しさを吐き出すように、まるで相談するかのような思いで聴くのだ。
そして、「あぁ、今回もまたガッツが‥勇気が持てなかったわ」。と、反省。

 反対に、何でもない時にこの曲を聴くと、数々の失恋が呼び起こされて
胸がチクリとする。
だけど、彼の静かで力強い歌声と美しいメロディに包まれていると、前向きになるのだ。
ここでも曲と会話。「う〜ん、ガッツあるかなぁ。今度は持つよ」。
私にとっては、いつも近くで見守ってくれる人のような、大切な存在なのだ。

 ガーランド・ジェフリーズの父親は黒人と白人のハーフ、母親はプエルトリカン。
多くの文化や人種が混在するニューヨーク、ブルックリンで生まれ育ったという環境も影響しているのか、彼の音楽からは、ロックンロール、フォーク、ブルース、ジャズ、
レゲエなど、多彩なエッセンスと敬意が感じられる。ここも好きなポイント。
楽曲はGarland Jeffreysのオフィシャルサイトで聴くことができます♪

http://garlandjeffreys.com/

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