喚起のしらべ volume2

『化粧』

喚起の1曲〜NO.NEW YORK / BOØWY〜

 
 これはもう「化粧」を含め、外出の準備中に必ず脳内で流れるBGM。
メイクをするようになった20歳前後からずっと、BOØWYの「NO.NEW YORK」

 出発時間めがけてスピードを上げ、気合を入れるにはピッタリのビート感なのだ。
しかも歌に登場する女性は女神のような“BEAUTY FACE”の持ち主でありながら、
ちょっと危険な一面もあるという、かなりモテそうな人。
歌の主人公になりきってメイクをし、気分を高めている。

 BOØWYについては、解散後も熱心なファンがいるので恐れ多くて何も語れない上、
彼らが活躍していた’80年代にリアルタイムで体験したわけではない。
もちろん圧倒的な人気と影響力があったのでバンド名やビジュアル、
ヒット曲は認識していたが、何しろこちらは高校生。
男子が特に熱くなっていたので、ちょっと引いてしまい、
ちゃんと曲を聴こうとしなかったのだ。
思春期によくある、照れくさい現象ですね。

 結局BOØWYの魅力に気づいたのは、高校を卒業してからのこと。
’87年にリリースされた4本組のビデオ『“GIGS”CASE OF BOØWY』がきっかけだった。

 初めて映像で知ったライブパフォーマンスや楽曲の素晴らしさに、もう終始シビれっぱなし!
私がそのビデオを見た頃は既にBOØWYは解散していたので、
変に突っ張らないで、ちゃんと聴いていればよかったなぁ。
ナマでこんなギグを体験したかったなぁと、後悔しきり。
まるで青春の忘れ物のようなこの思いは、
自分の中でのBOØWYのプレミアム感をさらに高める一因になっているかもしれない。

 中でも特にクギ付けになったのは、ベースの松井恒松さん(現在は常松さん)。
微動だにしないで黙々とビートを刻む姿が、たまらなく渋く、カッコいいのだ。
私が今さら言うまでもなく、メンバーそれぞれが強烈な個性と才能の持ち主。
この4人だからこそのBOØWY。まさに唯一無二のバンド、本物のレジェンドだと思う。

 そんな背景があって、“後追い”でBOØWYの曲を聴きまくった時期と、
私が化粧をするようになった時期は重なる。
「NO.NEW YORK」の歌詞にあるように、メイクをきめてドレスをまとい、
街角で男性を誘う‥なんて自分には無理だとわかっていても、ちょっと憧れたものだ。
あやかりたい気持ちもあって、お出かけ準備のテーマソングになったのだろう。

 そういえばメイクを始めた頃は、男性から好感を持たれるように、
少しは意識していたような気がする。
それが今では社会に対して迷惑にならないように、
せっせと整えることがメインになってしまった。
年齢と共に意義は変わってきたのだけど、化粧自体は嫌いではないので苦にならない。
そして、お出かけ前の「NO.NEW YORK」は、今も変わらず気分を上げてくれる。

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