スプツニ子!氏
スプツニ子!

アーティスト。テクノロジーによって変化していく人間の在り方や社会を反映させた映像、音楽、写真、パフォーマンス作品を制作。最近の主な展覧会にバイオ技術から生まれるファッションの未来を想像する展覧会「bionic by sputniko!」「第3回瀬戸内国際芸術祭」(ベネッセアートサイト常設作品2016)など。2017年より東京大学生産技術研究所RCA-IISデザインラボ特任准教授に就任。2016年4月〜NHK「スーパープレゼンテーション」のMCを務める。著書「はみだす力」(宝島社)

インタビュー・テキスト: 司寿嶺

「スプツニ子!的ワークライフバランス」

いま、自分の同世代や少し上の同僚を見ていて思うんですね。やみくもに成功を追い求めることが、必ずしもその人の幸せに直結するわけではないって。

私は成功するために生きるというよりは、楽しんで生きたいと思っています。そのプロセスとして仕事もあれば休暇もあり家族もある。政府にいわれてむりやりというよりは、ワークライフバランスは、自発的に出てきました。これくらい働いてこれくらい休む、これが私の人間らしいバランスだなって。

男性の中には、家族や休暇を犠牲にして、経済とか政治的権力とか、数字で評価されやすいところの成功を一気に駆け上がろうとする人も結構いると思うんです。徹夜徹夜とかいって、取り付かれたように仕事する人いるじゃないですか。仕事が忙しくて妻の出産に立ち合わない、娘の卒業式や入学式も無視・・・そんな風にはなりたくないな(笑)

そんな昭和でロボット的な働き方をしている男性がいる一方、私が尊敬している伊藤穣一さん(MITメディアラボ所長)が最近、子供が生まれて育休を取得したみたいに、ワークライフバランス派の男性もいますけどね。

女性っていろんな幸せの形を若い頃から提示されている分、経済的成功、政治的成功を自分の唯一の幸せの軸としてとらえる方向に走りにくい人が多いというか。多角的に自分の人生をみつめる練習が早くからできていると思うんです。
ちょっと前の第一世代のキャリアウーマンは、大変だったと思います。「家族を犠牲にして男のように働こう!」という選択肢しかなかった女性が多かった。

———「名誉男性」みたいなことですよね。

そうです。女性も「ロボット」になっちゃうんですよね。「女性の働き方もロボット化する」っていうのは、違うと思います。
スプツニ子!氏
それに私たちって「週5日、朝から夜まで働かないといけない」っていう固定観念がありますよね。そうじゃないと生きるための給料がもらえないと思っている。でも実はそんなにずっと働かなくても、うまく働けば、自分のほしいだけのお金を稼ぐ方法もある。それにそういった昭和のロボット型労働に向いている仕事って、最も人工知能に代替されやすい仕事なんです。これから人間が磨くべき能力って、ひらめきや独創性だったりコミュニケーションなど、ロボット的に働いても成果が発揮できないもの。そうするとこれからの働き方はロボット型から大きく変わるだろうし、ワークライフバランスの考え方も変わってくると思います。