Yumi Nagashima氏
Yumi Nagashima

東京都生まれ。4歳より埼玉で育つ。
バンクーバー初の日本人女性スタンドアップコメディアンとしてその稀有な存在感とユニークな視点がいま注目されている。2016、2017年ともにスタンドアップコメディの登竜門であるYuk Off Competitionのファイナリストに選ばれる。
女優としての代表作はドラマ「高い城の男」ドラマ(原題:The Man in the High Castle) 映画「Dark Harvest」など。

インタビュー・テキスト: 司寿嶺
―――スタンドアップコメディアンとして活動していて、一番印象に残ったことや、嬉しかったことはありますか?

あります!わりと最近の話なんですけど、カナダのプリンス・ジョージという所に営業で行ったんですけど、お客さんは80人くらいだったかな。その時、生まれて初めてスタンドアップコメディアンとしてスタンディングオベーションをもらったんです。

―――えー!すごい!!

コメディークラブでも珍しいことなんだそうです。オーケストラや舞台ではよくあるけど、スタンドアップコメディアンでスタンディングオベーションってなかなかないらしくて、本当に嬉しかった! その日は、同性愛者の女性のお客さんがたくさん来ていたんです。彼女たちに私のネタがぴったりはまったんだと思うんですけど、すごく盛り上がってくれて。ショーが終わった後、コメディークラブがダンスクラブに変わるんですけど、私、すっごいもみくちゃにされてチューされまくって(笑)。 「Yumi、このお酒飲みなさい〜!」ってものすごく歓待されて。

―――その時披露したのは、どんなネタだったんですか?

フロリダは1980年代で時代が止まっている、いまだに室内で煙草を吸っているし、フィルコリンズの音楽をみんな聞いているし、私のことをオリエンタルウーマンって呼ぶんだよ?っていうネタで。
Yumi Nagashima氏
日本では「オリエンタル=失礼な言葉」という認識があまりないかもしれませんが、「Oriental」ってアメリカやカナダでは差別用語にあたるんです。
それをフロリダでは言うんだよ、信じられる?だから私、「あなたそれは間違った言い方だよ」って教えてあげたの。私のことは「Japanese Goddess(日本の女神)って言わなきゃだめでしょう!」っていうネタで。
そうしたら彼女たちが、「おー!言ったー!」って、爆笑して盛り上がってくれて。
日本女性はシャイでおとなしいイメージがあるのに、私がそういう強気なことを言うのが面白いらしいんです。

↓そのネタを披露している動画の抜粋部分はこちら

―――たしかに、いままでそういう日本人の女の人っていなかったですよね。そういう感じで、海外で活動している女性って。

そうなんです。だから私も、ロールモデルというか前例がなくて。

―――Yumiさんが、なってしまえばいいんですよ!

ね!パイオニアになるしかないね(笑)!
私、いつもネタを書くとき、女の人にパワーを与えるようにしているんです。
女の人を絶対に卑下しないようにしている。そして、強気でいくようにしているんです。自分の中で、これを「non-apologetic style」って呼んでるんですけど。
「私はこうです。私はこう思う。だから何?」みたいな感じで。

―――私、Yumiさんの言葉で好きなのが、上のURLにも貼ってありますが、母親に「日本女性とはこうあるべき・・・」と言われて育ったけど、自分は結果コメディアンになった、っていう。あれが好きなんです。

「成功している男性の陰には必ず、偉大な女性がいる。素敵な日本男性を見つけて、あなたも偉大な妻、そして偉大な母になってね。」って母に言われて、「Fuck that shit!」って言ってから「そして私はカナダに来てスタンドアップコメディアンになりました」っていうやつね(笑)。

―――そう。Yumiさんみたいな女性が口に出すような言葉じゃないっていう(笑)。聞いていて爽快感があります。

そうなんだよね。いつもネタを書く時にショッキング効果っていうか、サプライズ要素を入れるようにはしています。
「fuck」 ってカナダのテレビでは使えないから、「screw that」っていう少しマイルドに言い換えているバージョンもあるけど、いまいちパンチがなくて(笑)。
感覚的には、「そんなの知らないよ、forget about it!」 みたいな感じなんだけど。

―――これをみて、Yumiさんにお話を聞きたいなって思ったんです。

ほんと?!でもこれ、一番情熱を持って、話すジョークっていうか、なんだろう私の心にいちばん近いものかもしれない。
私、すごく幸せだなと思うんです。世界各国をこの仕事でまわることができて、ステージに立ったらお給料までもらえて。
それが私の仕事、って考えたら本当に自分は恵まれているなあって。
でも1ヵ月後自分がどこにいるのかわからない、っていうのは不安だ、っていう人もいると思うんですけど、私にとってはそれがすごくエキサイティングで。
レールが敷かれてないところで、「自分で自分の行く先を決める」っていうのが性格に合っているんだな、って思います。

———コメディアンとして活躍されるYumiさんに対して、ご両親の反応は?

母は、頑張って1人子供産んで!みたいなことを今も言ってきます(笑)。
悪気はないんだろうけど、女の人は結婚して子供を産まないと幸せになれないと思ってるんだよね、きっと。
父は、、妹がお婿さんをもらって子供も生まれて、一緒に住んでいるのでもう満足みたい。父にはプレッシャーをかけられなくなりました(笑)。

——日本とカナダで感じる違いってなんですか?

カナダ、特に私が住んでいるバンクーバーって、多民族文化が混在する場所なので、だからこそ新しいものや自分と違うものを受け入れる許容範囲がすごく広いんです。
でも日本には、大多数の人がやっていることをやっていれば安心、みたいなそういう雰囲気を感じるかな。

人と関係を築くときに、自分は自分、相手は相手、っていうboundary(境界線)があればすごく健全な関係が築けると思うんです。日本人の女の人って特にそうかもしれないけれど、「自分の意見は特に重要じゃない」と思ってしまう人が多くないですか?男性とか、自分以外の人に考えを合わせたり、お世話をしてあげたりとか。日本ではそれが美徳、という文化なのかもしれないけれど、「自分を心地よくしてあげる環境作りを自分のために真剣にやることはわがままだ」と思われてしまうようなところがあるんじゃないかな、と思うんです。
スタンドアップコメディアンなんて本当に「オピニオンの塊」みたいなものですから。「私はこう思う、なぜならばこうだから。それはおかしいと思う、なぜならばこうだから。」という自分の意見を面白おかしく言っていくのが仕事なので。
カナダには、「自分はこう思う」ということをきちんと主張できる環境もあるし、私が海外に出ていちばん学んだことは、そうですね、人との境界線の作り方かな。